第10話
日が高く昇る時間、アルトは中庭で本を読んでいた。手には簡単な魔法の解説書。
読みながら、手のひらを前にかざし小さな声で
「灯れ」とつぶやき小さな光を灯してみる。
「……いいね。」
背後から声がしたので振り返るとジェラルド様がいらっしゃった。
「光を灯すのも慣れてきたね。初級魔法も終盤だね。」と褒めてくださるので
「はい。魔法書を貸していただきありがとうございます。」とお礼をいうと、ジェラルド様はひらひらと手をふり自分の仕事部屋に帰って行かれた。
その日も、いつもと変わらない穏やかな時間が流れていた。
この数日、アルトは規則正しく食事をとり、読み書きと魔法の訓練を受けながら、屋敷での生活に馴染みつつあった。使用人たちも徐々に心を開き、彼女のことを「坊ちゃん」や「アルト君」と呼ぶ者もいた。
けれども――。
カーテンを閉めた奥まった場所にあるカインの仕事部屋で、カインとジェラルドは向かい合って防音結界を施しながら真剣な趣で話をしていた。
「確かなんだね?」
「ああ。」
ジェラルドが差し出したのは、淡い魔力が込められ施錠された箱。
「解除せよ。」とカインがとなえると
中には一枚の薄紙。
魔法文字で記された内容を、カインは黙読する。
「“ホセイン侯爵家嫡男により、平民サーシャを口外の条件で解雇・追放”……」
そこまで目を通すとジェラルドを見る。
「父親はエリオット・ホセイン。政略結婚済み、子なし。」とジェラルドは仕入れた情報を話し始めた。
「そして――」
「アルトの母サーシャとの関係は、当時彼が魔法学園在籍中。文書の中には子についての明記はないが、日付はアルトの誕生時期と一致する。」
カインは深く息を吐いた。
「ジェラルド、君はやはり優秀だね。」
と真顔で言うカインに対して
「当然でございます。」
とジェラルドは完璧な執事のように答えた。
2人は一瞬だけ、静かに笑うとまた真剣な顔に戻る。
「あぁ。やはりアルトは女の子かも知れないね。サーシャが女性ならば追い出されることはないだろう。」
「そうだな。」
「本人が隠しているんだ。本人の信用たる人物になれるようこれからも頑張ろう。」
「あぁ」と頷くジェラルド
「さて、今日の夜にでも僕たちのお姫様にお話をしなきゃね。それまでにお仕事終わらせちゃおう。」と言い結界を解除しカインの父からの仕事を進めていった。
a子ちゃんだったんですけど。 イキムズ。 @mobuozi
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