第13話ハスキーの場合

ハスキーは母子家庭だった。父はハスキーが物心つく前にいなくなっていて、顔や名前すら知らない。母は夜の仕事だった為、夜はいつも家で1人だった。

小さな頃からガラガラの低い声。誕生日に母からプレゼントをもらった時に「ありがとう」と答えると、声が低いせいで喜んでいないと思われて

母「そんな嬉しくないならもう渡さん」とプレゼントを取り上げられた。

小学生になると、声が原因でいじめにあった。

「おい、酒ヤケ!」「小学生がお酒飲んだらダメなんだぞ」「先生に言いつけよう」

中学、高校と上がるに連れて、身長も伸びてさらにいじめられた。

あだ名は「進撃の巨人」「声だけ奇行種」

いじめがひどくて、毎日学校に行くのが嫌だったが、母は無理にでも学校へ行かせた。

学校生活は地獄だ。出来るだけ喋らないように声は小さく、出来るだけ大きく見えないように身体は丸めて。

家にもいたくなかった。だから高校を卒業してすぐに寮がある会社に就職した。人と出来るだけ話さなくていい缶詰工場。

それでもだめだった。社会に出てもいじめは変わらない。

先輩たちから「でくのぼう」「図体デカくて邪魔なんだよ」「酒くさいぞ」

お酒なんて飲んだことはない。これからも飲むことはない。

我慢できず、1年で退職した。

アルバイトをした。家はない。漫画喫茶でその日暮らし。そんな生活が半年続いたある日だった。

バイトを終え、家(漫喫)に帰ろうとした時、どこからか楽しそうな歌声が聞こえてきた。

それが、東北産のフリーライブだった。

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