第2話 1ラリー後の通知

 運命のメールを送ったその日の内に返事が送られて来た。


 返事が返ってくるのは大型連休明けだろうと予想し、あえて連休の終わりがけに送信したのに……



 お盆休みの真っただ中だというのに、返信が早い。


 本当、編集者に休みはあるのか?


 メールアドレスは出版社のドメインだったから、会社のタブレットを持ち帰って定期的にメールを確認してた可能性が高い。


 休日にまで家で仕事とはご苦労様。頭の下がる思いです。


 大型連休前に底辺投稿者の私のところに書籍化の打診をしたくらいだ、他のプレビューや評価を稼ぎまくる人気投稿者様のところにも、同じようなメールが送られている事だろう。



 ただ、そこに添付されていた資料がヤバい!



 その資料は、明らかに担当者個人の采配で出せるような資料では無く、社内の稟議だとか上司の承認が無いと出せないレベル(と思えるほど踏み込んだ内容があった)の内容だった。


 詳しくは書けないが、出版社の本気度が伝わって来る内容だった。


 要するに、私のところにメールが送られてくるまでに、事前に社内で十分な協議がなされていたと思われる内容だ。想像に過ぎないけど。

 作品に対し商業出版の打診のみならず、【】という一手を打つだけの手応えを感じていると思われた。



 出版社はかなり本気だ!



 ただ、全くの無名新人に賭けるチップは慎重なようで、想定している発行部数は「ですよね」、といった雰囲気だ。

 ビジネスでやるからには危険は冒せない。

 返本という業界のシステムを考え、ランキングに応じた売れ行きを想定するなら、出版社の選択は当然の帰結だ。


 私が底辺作者だという事を再認識させられる。



 この先の改稿作業で、私の作品に出版社の知恵が加わり、より良い商材へと変化するのを期待しよう。


 似たようなやり取りを何度も繰り返してるであろう出版社は、無名の新人向けのテンプレートを提示しただけかもしれない。


 雛形があれば作業も早いしね。



 二回目のメールには、顔合わせに具体的な日取りを決めたいと通達があり、休み中にもかかわらず返信を送るくらいだから、急ぎ連絡が欲しいのかと思い、できる限り早い段階での日程を伝えた。


 だがしかし、直近での出来事。それも災害レベルでの事情(日向灘での巨大地震により併発する南海トラフ巨大地震への警戒)により、web会議での打ち合わせが計画された。

 編集側が出した理由はコロナだったけど、今のコロナにそこまでの影響力は無いような気がするから、勝手に想像しているだけだが。


 いかんせん当方、そのような会議に参加した経験も無く、設備も無い。



 翌日、大慌てで家電量販店に駆け込み、ヘッドセットを買い求めた。

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