第3話 体験入部

2階にて現生徒会長でバレー部助っ人の音湖さんと1階コートを見学していた。都度都度ルールを説明されたが頭がパンクしそうだった。

すると、音湖さんが指を刺した。

「あっ、前衛に回ってきた。ほら、彼女のスパイクは見ておきな。」

指を刺した方向へ目を向けるとこの前私に誘ってきた内の1人だ。背が高い方の。彼女はトスが上がったのを見て左側から走って飛んだ。

ツ!高い!

高い空中のまま形付いたフォームから右腕を目一杯に振り下ろす。

瞬間。球と手が接触したのかバチン!と聞き慣れない音が響いた。直後、相手コートに球が速く叩きつけられた。

圧巻。これは凄い競技に出会ったのでは?

「さすが、流菜!やっぱ敵わないわぁ。」

流菜って言うのか。

「あのぅ、彼女、えっと流菜さんはそんなに凄いんですか?」

「凄いも何も!流菜は15歳以下日本代表だよ!」

「日本代表!?」

「うんうん。うちのチームはいつも県大会止まりで虚弱だけど流菜だけは別格。だから、今年こそは全国に行きたい。」

「はぇーー。」

「ちなみにあたしと流菜が3年生。あとの5人が2年生で、舞美ちゃんだけが1年生。」

「は、はぁ。」

この時。一瞬黒い霧が頭によぎった。

音湖さんと流菜さんが引退したら、私は…。

いや、まさか。そんなチームには見えまい。


しかし、私はその臆病故の"勘"を大事にしていれば、今頃、きっと……。


「それじゃあ球触ってみるか!」

「はい。」

簡単にトスとレシーブを教えて貰い1階コート端で何回も反復した。汗が滲む。足を動かす。ここまでキツく痛むのか。

レシーブした腕は赤くなり、トスをした手首は既に筋肉痛。足全体はお釈迦。


ひとまずパイプ椅子で休憩して練習を見ていると、集合の合図が。

みな颯爽と遠藤先生へ。しばらくすると音湖さんだけ集合円から外れて私の元へ。

「今日はこれでお終い。先に着替えて帰っていいよ。入部するならこれを遠藤先生に。入部しないなら期間すぎるまで出さなくていいから。お疲れ様。」

「お疲れ様でした。」

入部希望用紙を渡され、私は先に着替えて体育館を後にした。

自転車での帰り道。疲労困憊の身体を奮起させて帰路を走らせた。決意は固まっていた。ここまで来たら私もバレーボール、やってみたい。


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