第41話 ダンジョン研究家
「怪我は癒えたようだね」
「はい、お陰様で…えっと、隣の…レイさんの容態は…」
チラッとレイさんを見る。
レイさんは頭に包帯を巻いており、目を閉じたままだ。
「彼女は昨日目を覚まして今はただ寝てるだけだよ」
「あ、そうだったんですか。ってあの作戦から結構経っちゃってます?」
「あぁ、作戦は2日前に終わったよ」
2日前───となると俺は2日間も眠っていたのか。
「少し話してもいいかい?」
「ええ、構いませんよ」
それでは…とテイラーギルド長は椅子を2つ持って来て、もう1つの方に老人を座らせ、自身も座る。
「改めて、作戦の方は滞りなく進み、怪我人は何人か出たものの、死者は1人も出なかったよ。これは恐らく建国から初の功績かもしれないな」
死者は出なかった─────その言葉を聞いて安堵した。
俺の作戦は怪我人は多少出たものの最悪の事態は免れたようだ。
「まぁ、貴族からは跡地に関して色々と言葉が出てたが"穏便に"済ませたよ」
…その"穏便"という言葉に少し恐怖があるかこれは聞かない方がいいんだろうから絶対聞かないでおこう…
「ま、細かい内容についてはまた後日ギルド長室で話し合うとして、紹介しておくよ。彼はギールという方でダンジョンを専門とした研究所の所長を務めていらっしゃる」
紹介されたギールさんは深深とお辞儀をした。
「ご紹介にあずかりました、ギールと申します。ダンジョン研究所で所長をしております。以後お見知り置きを」
「ジェイルです。宜しくお願いします。…やはりダンジョン研究所の方がいらっしゃったという事はやはり今回のスタンピードはダンジョンも深く関係していると考えていいのですか?」
「ええ勿論ですとも!その上今回発見されたダンジョンは今迄とは比較にならない程巧妙に成長を成されてですね、今回のダンジョンは─────」
所長の老人が目を輝かせながら今回見付かったダンジョンの凄さを説明していた。
だが専門的な用語ばかりで話の内容が頭に入ってこない…
なんというか…オタク特有の早口専門説明を間近で体験しているような感じだ…
間違いなくこの老人はダンジョンオタだ…
…自分が説明する時は気を付けとこう…
「────という構造をしていたのですよ!今迄ダンジョンを研究して、道が枝分かれしているダンジョンは幾つも────」
「所長…ジェイル君が困惑してます…少し抑えて下さい…」
ギルド長に止められ、ハッとするギール所長。
「あ、申し訳ありません、私自身ダンジョンになると話が止まらなくなりまして…」
まぁ分からなくもありませんよ…
オタクも自分の好きなジャンルに相手を引き込みたくてその良さの全てを説明したいが為によく分からない用語も織り込んで説明し出すから…
…俺も説明する時にそうなってないよな…?
「ですがその位今回見付かったダンジョンは成長を遂げていたのですよ。この成長具合は───」
うん、100%止まらないと思ったよ。
その真横ではギルド長がハァ…と頭抱えてるし…
「───という感じなのです!」
彼にとっては短いが俺とギルド長にとっては長いダンジョン講義が終わった。
「所長、肝心の報酬の話がまだですよ」
「あ、ダンジョンの話に夢中になり過ぎて忘れてました」
いやはやお恥ずかしい…と自身の頬を軽く掻いている。
だが姿勢を改めて正し、俺をまっすぐ見た。
「それでは今回の跡地の地下にあったダンジョン発見に基づく報酬なのですが───」
…ん?え?
ダンジョン発見の報酬と言ったか?
え?何?
偶然でもダンジョンが見付かったら誰であっても報酬は貰えてしまえるのだろうか?
「ジェイル殿には金貨50枚を贈呈致します」
「50っ…!?」
金貨の枚数に驚かされた。
金貨1枚に付き1万円、つまり今回のダンジョン発見に貢献したとして俺は金貨50枚、日本円で言うなら50万円を貰えるという訳だ。
その金額を言うとギール所長はすぐに立ち上がり、それでは…と一礼して病室を出てしまった。
「それじゃ、病み上がりの人をいつまでも起こしていては完治にも時間が掛かるだろうから私も失礼するよ」
テイラーギルド長も立ち上がり、病室を出ようとするがその時に、あ!と何かを思い出したようだ。
「アンリ君が君の事を呼んでいたから完治したらアンリ君の店に寄るといいよ」
そう言ってテイラーギルド長は今度こそ病室を出て行った。
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