盲目少女と難聴少年

たちばな かん

 

「ねぇルサティ、今空はどうなっているの?」

「前と変わらないさルラン。美しいままだよ。」


世界は幸福でつつまれていました


「いい香りがするわね。ね、ね、私の口みえている?ごめんなさい、今どこを向いているか分からないの。」

「見えているよ、いい香りだね。僕こそごめんね少しぼうっとしていて気づかなかったんだ。」


生まれた時から病気があったルランは目が見えず唯一の友人は事故にあい耳が聞こえなくなったルサティだけでした

そんな二人は久しぶりに青く広い大きい空の下でお話していました


「ねぇこれは何の匂い?お花?太陽さん?」

「これは太陽の匂いだね。今日はきっと太陽がおめかししてきたんだね。」


ルランは優しく微笑み言いました


「きっとそうね。私達に会うためにたくさんお洒落してきてくださったのね。」

「そうだね。愛おしいね。」


ルランはふと何かを思いだした顔をしました


「ねぇルサティ、愛ってきらきらしていると聞いたのだけど美しいのかしら。」


ルサティは笑いながら答えました


「愛はね見えないんだよ。目があっても見えないの。きっと教えてくれた人の空想だよ。」


ルランは下を向き眉をひそめました


「じゃあなぜあの人はきらきらしていると言ったの?そんなの嘘じゃない。」


ルサティは声を上げてまた笑いました


「それはね嘘じゃないんだよ。その人にはそう見えているのかもしれない。僕が愛を見つけられてないだけかもね。でもね、きっと本当は見えないんだよ。みんな欲しいのにみんなの心になくて、でも愛がないなんてそんな事は認めたくない。だから形にしたがるんだ。どうしたってもないのにね。」

「そうしたら本当の愛ってどうやってわかるのかしら。見えないならどう確かめるのかしら。なぜ見えないのに愛というものがあるとわかるの?」


答えのない愛に困り果ててしまいました


暖かい風が吹いた時、ルランが聞きました


「ねぇルサティ?」

「どうしたんだい?」

「私ってどんな見た目をしているの?」

「いきなりどうしたんだい?君は美しいよ。」

「美しい、がどんなものかわからないけれど嬉しいわ。ありがとう。きっと貴方も美しいのね。」

「僕はそんな事ないさ。だって。」


ルサティは突然静かになりました


「どうしたの?つつぎを教えてちょうだい。」

「いや、なんでもないさ。ほら手を繋いで帰ろう。そしてルランの好きな曲を吹こうか。たくさん練習したんだ。」

「まぁ本当?とても嬉しいわ。ゆっくり帰りましょう。」


二人は途方もない墓地を後にしました


世界は愛でつつまれていました














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