第39話 押し込めろ

「物音を立ててはダメ」


ぼくは、イロハ先生のその小さな声にコクンと頷いた。


大きな音や声を出さない限り、この怪異は、反応はないらしい。


でも・・・


こうしている間にも、エノキさんの身体は、黒い反転で覆われていく。


あ、さっきよりも、黒い反転は、大きくなり、今にも身体全体を蝕もうとしているではないか。


「何か、手を打たないと。イロハ先生、その光の魔法で、エノキさんを助けることはできないの?」


「・・・。私の魔法は、光を操ることで、時の流れを早めることはできる。でも時間の流れは、不可逆的なものなの。怪異に襲われたことをなかったことにすることはできない。それに、もし時間を早めてしまったとしたら、エノキさんの命を縮めてしまうことになるかもしれない」


「そ、そんな。でも、このままでは・・・」


「とにかく、私たちまで、蝕まれては元も子もないわ。あの扉。あの扉までいきましょう。そうすれば、ひとまず難は逃れるわ」


「でも、エノキさんを置いていくのは・・・」


「大丈夫。あの扉へ逃げるわけじゃない。あの扉へ怪異をおびき寄せて、閉じ込めるのよ」


「そうか!」


ぼくたちは、音を立てずに、そろりそろりと扉へと近寄っていく。


(絶対に足音を立ててはいけない)


一歩。


また、一歩。


扉のノブに手をかけた。


ノブを回す。


扉をそっとあける。


よし、


「怪異ーー!こっちだーーーーー!」


ドンドンドン!!

足を踏み鳴らす。


ぷしゅぅぅぅぅぅう!


怪異が一目散に飛んでくる。


「今よ!!!」


ぼくたちは、素早く扉の陰へ。


怪異が、扉の奥へと入っていく。


「せーの!!!!」


バタンっ!


イロハ先生とぼくは、掛け声を合わせ一緒に扉を閉じた。


はぁ、はぁ。


これで、なんとか・・・

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