第117話 D.O.P《ダンジョン・アウト・プリズン》

剛志は闇の大精霊にボコボコにやられながらもなんとか耐え、最終的には西園寺率いる日本最強パーティーに助けられる形で決着がついた。だがこの事件の黒幕である鮫島がその間どこにいたかというと、それは日本ダンジョン組合の数少ないダンジョン外施設D.O.Pダンジョン・アウト・プリズンだ。


D.O.Pとはどういった施設なのかというと、ダンジョン関連で犯罪を犯した探索者などをとらえておくために、ダンジョン組合と警察などの組織が共同で運営する施設だ。簡潔に言うと探索者用の監獄のような場所になる。


ダンジョン内では強力なステータスを誇る人物もここでは、一般人とさほど変わらない。ただ中にはステータスが100分の1になっても十分超人になるものもおり、そういったものはより厳重な地下に投獄されているのだが、そこに最近一人の人物が追加されていた。A.B.Y.S.S.の諜報員で通称謎の男と言われていたものだ。本名、三雲蒼一みくもそういちだ。


この男、剛志の命を狙うために送られた刺客で、二度の襲撃の結果、宮本万葉の手により捕らえられていた。その後A.B.Y.S.Sの情報を引き出そうと、何度も尋問にかけられて尚黙秘を続けている状態だ。


なぜ、そんな場所に鮫島がいるのかというと彼を脱獄させるためだった。


「やあ、君は確か三雲君だよね。君と取引がしたい。」


鮫島は三雲に合うや否やそう切り出す。鮫島の横には倒されている職員と、すでに鮫島によって操られている職員がいる。契約のスキルで操ることで何人も潜在的なスパイを送り込んでいたのだろう。今回も鮫島が現れたとたん片方の職員が鮫島に対し敵対行動をする同僚を鎮圧しており、その後何もしゃべらずにその場に突っ立っている。


鮫島にいきなり取引を持ち掛けられた三雲は、その場の状況を確認したうえでまだ何もしゃべらない。そこで鮫島は続けて話し続ける。


「つれないね。口は何も封じられていないんだから、返事ぐらいくれたっていいだろうに。まあ、こっちから一方的に話すね。君に持ち掛ける取引は、君を脱獄させるからA.B.Y.S.Sに僕を入れてくれないか?ってことだ。今回少しドジを踏んじゃってね、今までの職場にはいられなくなったから、心機一転ってわけさ。これでも元々ダンジョン組合の支部長だし、かなり使えると思うけど?」


そういって笑う鮫島。その態度に半信半疑な三雲は口を開いた。


「お前の存在は知っている。確か八王子支部の支部長だろう。そのクラスの人材はある程度頭に入っている。だが、なぜおまえが俺たちの仲間になる?普通に考えてスパイとして入り込むための芝居にしか感じられないな。お前がスパイではないという証拠でもあるのか?」


そういう三雲に、鮫島は楽しそうに頷く。


「そうだよね。俺でもそう思う。じゃあ、信頼を得るためにここにいる理由を簡潔に話そう。僕は契約の☆5スキルを持っていて、それを利用して犯罪行為も行いながら組織のトップを目指していたわけなんだけど、その犯罪行為がばれちゃったというわけ。うまく隠していたつもりだったんだけどね。次からはもっとうまくやるよ。で、具体的には契約のスキルで縛った人物をたくさん用意して、自分にとって有利に動く人物を増やしていたんだけどさ。その中の一人の仲間が、違和感に気づいて、そこから芋づる式にって感じだね。」


そう話す鮫島は、全く悪気がなさそうだ。完全に自分以外の他人を駒としか見ないような、サイコパスな気質の持ち主なのであろう。


そこまで話した鮫島はまだ続ける。


「で、その件で俺も晴れてお尋ね者ってわけだ。だから、逃亡するついでに新進気鋭のテロ組織A.B.Y.S.S.に入れてもらえないかなって話。これでもかなり使える方だとは自負しているよ。それに君たちは現在仲間を絶賛募集中だろ?だからさ、君を脱獄させたら組織に入るときのいい手土産になるかなって思って。どうだろう?」


そう話す鮫島をじっと見つめる、三雲。まだ彼の中で完全に今の話を信用するに足る情報がない。それを察した鮫島が動いた。


「まだ信頼できないか。じゃあ、これでどう?」


そういうと、先ほど侵入時に気を失わされていた職員の首を持ち出したナイフで切り裂いた。それにより、辺りには血が飛び散り今の職員がもう助からないことが見て取れる。


そこまでされて、初めてこの男は少なくともダンジョン組合のスパイではないと考えた三雲。なので、やっと口を開いた。


「全く躊躇がないな。それではかえって人としての信用がなくなるぞ。まあいい、俺たちは今そういう人材も関係なく集めてはいるからな。まずはボスの判断次第だが、紹介してもいい。俺を出してくれたらな。」


そういうと、鮫島は嬉しそうに話し出す。


「お、分かってくれたかい?契約成立だね。本当ならあとでダンジョン内空間で契約を交わしたいけど、今回は特別になしでいいよ。とにかく移動を始めようか。ここも長くはごまかせないからね。」


そういうと、鮫島は棒立ちしていたもう一人の職員に指示を出し、三雲を解放する。


体中の拘束具が外れ、動けるようになった三雲が体をほぐすようにしながら牢から出てくる。


「ま、解放してくれたのは助かった。礼を言う。でだ、取り敢えずボスの元には連れていくがそこから先はボスしだいだ。それに俺たちにも理念がある。唯の犯罪集団ってわけではないからな。」


「了解」


そうして、三雲を脱獄させた鮫島は、そのほかにも要所要所に存在した鮫島のスキル影響下の人材を利用し、誰にも気づかれることなく三雲を連れ出した。


そしてシャバに出た三雲は、大きな伸びをしたのち、「こっちだ」と鮫島を案内する。


世界を賑わすテロ組織A.B.Y.S.S.。そのボスは現在第一級のお尋ね者だ。そんな人物がどこにいるのか、そしてどんな人物なのか。少しわくわくしながらも三雲の後についていく鮫島。


その後、何度かダンジョン転移をはさみ、最後のダンジョン間転移のスキルホルダーにたどり着いた三雲と鮫島。三雲がスキルホルダーに状況を話している。


「おい、その男は誰だ。ここによそ者を連れてくるんじゃない!」


そういって、三雲たちを止めようとする大男。この男に対し、冷静に返事をする三雲。


「ボスに伝えてくれ、入団希望者だ。信用はできない相手だが、使えるのも確か。俺の脱獄を条件に面会を求められたため連れてきた。判断を仰ぐ」


一触即発の雰囲気だったが、三雲の説明を受けてその場にいた別の男がダンジョン間転移を使って飛ぶ。そして数分後戻ってきた。


「ボスが通っていいって。あと三雲、お前にお疲れだとよ」


そういって、元々座っていた場所に座る男。これで中に入る許可を得た。


「では、お二人。こちらにどうぞ。」


この場にいる唯一のダンジョン間転移のスキルホルダーで、先ほども男を運んだ女性が三雲と鮫島に来るように伝える。


そして次の瞬間二人を連れてA.B.Y.S.S.のボス、ギデオンの居る場所に飛ぶのだった。


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よかったらこちらも見ていただけると幸いです。


殺しの天才、才能に気づく〜選べる職業が【死神】だけ⁉〜

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