第5話 衣替え
衣替えの季節がやってきた。
男子は上着を脱ぐだけだが、女子は真っ白なセーラー服に身を包む。
自然と女子たちの下着が気に成り出すのは、僕だけではなかった。
男女とも育ち盛りだ。
男子は声変わりして行き、女子は胸の膨らみが増して行く。
クラスに、男子から百貫デブと陰口を言われる女子がいた。
言葉通り肥って居て、それに比例する様に胸の膨らみが大きく見えていた。
その女子が夏服を着て登校してきた。
微かに透けて見えるはブラジャーだった。
「おい、あいつのあれ、見たか?」
男子生徒が囁き出す。
彼女にすれば都合上仕方のない事である。
思春期の男子にとっては目のやり所に躊躇いが生まれて来る。
そこここにこぞっては、
「ブラウジュワウ」
と、隠語めいた言葉で彼女を揶揄する者たちも出始めた。
勿論、その女子も気に成って居たのか、こう言ってはなんだが、身が細る思いをして居たに違ない。
MJもその事に気付いて居た。
その日から数日後の事で在る。
我が憧れのMJがなんとそのブラジャーなるモノを身に付けて来たのである。
案の定、邪な視線がMJにも注がれた。
当の僕も、いつもの様に振り向く事に躊躇いを覚えて居た。
MJはそんな男子の反応をものともせず、いつもの様に毅然とした態度を見せていた。
あたかも、
『それがどうしたと言うのか』
という感じで在った。
その凛とした姿に気を飲まれたのか、例の百貫デブを冷やかす輩はいなくなった。
次第に、ブラジャーを身に付けてくる女子も増えていった。
歴史好きの僕はMJとジャンヌダルクが重なって見えていた。
そして、益々、彼女が好きになって行った。
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