第4話

4話




リリーちゃんと合流して5日


ソレイユは沈黙を続け、装甲車の機能も制限され始めていた。


燃料とトランクの容量の関係で何度かリリーちゃんのテントと寝袋を借り野宿を行い

仲良くなりながらも

進み続け

遂にもうすぐそこと言う所まで来ていた



「あと少しだぞぉ!お前達!」


「おぉ……」


リリーちゃんの案内通りに進むと

あれだけ雪ばかりで何も無かったのに

急に整備された道路が姿を表す


私達はその久々に見た道路に感動を覚え

自然と目から涙が溢れていた


「カムラッド……そんなに泣く事なのか?」


「当たり前よ、1ヶ月位あの白い土地を彷徨ってたんだから……」


「ご苦労な事だな」



「おっ見えて来たぞ」


リリーちゃんの指差す先には「ようこそ‼」と書かれた看板が書かれおり

その奥には少し寂れた一軒家達が並んでいた


「ここがリリーちゃんの集落……」


「出身地という訳ではないがな、まぁ強いて言えばわっちを拾ってくれた場所だ」


「車も結構あるのね」


「無ければ生活出来んからな、都市部からも遠いし」



道路は閑散としているものの

数分に1度程度車とすれ違う


「わっちの家に案内してやろう、マトモな飯も食ってないだろご馳走してやろうぞ」


「良いの!?」


「あぁ……」


私達はリリーちゃんの提案を受け入れる事にした

情報集めついでに

温かい

食事が出来る


「ありがたい……」


「助け合うのは当然だからな」



「そう言えば……」


「ん?どうしたんだ」


「いや、何でも」


「田舎に見えるか?」


「……まぁ、」


「高層ビルも無ければ車も少なく、あるのは畑はがり、確かにこんな装甲車を保有する君達視点では田舎に見えるだろうな、わっちもそう思う」


「リリーちゃんの出身ってどこなの?」


「わっちか……わっちは……」



「ここかい?」


運転をしていたユキが会話を遮る


「ここだ」


リリーちゃんの家に着いたらしい


長い間家を空ける事が多いのか

他の家々に比べてより一層

古い感じがするが

最低限の整備はされているらしく

木造なのにそう簡単に崩れる様には見えない


「お邪魔します……」


私達は中へ入り

リリーちゃんの後ろを歩く


「ここがリビングだ」


リリーちゃんがリビングの扉を開けると

中は綺麗で高そうな絨毯や木目の美しいテーブル……

銃器や弾薬などの置いてある部屋が目に入った


「座っておいてくれ」


「はーい」


「了解」


私達は部屋の真ん中に位置する

テーブルの椅子を引き

座る



「いやぁ……親切な子で良かったね……」


「とてもね、街まで案内してくれるだなんて……」


私はタブレット端末を取り出す


「ソレイユはまだ起動しないの?」


「うん……」


「ソレイユが居ないとあの装甲車を完璧に動かす事は出来ないのになぁ……」


「何とか電源を入れようとしてるんだけどね……」


「充電も足りてて壊れてるわけでもない……不思議ねー


「ね」



「待たせたな」


ユキとソレイユに関して話しているとキッチンで何かをしていたリリーちゃんが姿を表す


手にはグツグツと音を立てる土鍋を持って


「ほら、食べると良い」


リリーちゃんが鍋の蓋を開けるとホワァと言う音が聞こえるレベルの白い湯気があがり

中には赤いボルシチスープがあった


「美味しそう……」



長い間クマや鹿の干し肉や栄養重視で硬いレーションを食べていたから暖かく、柔らかいボルシチは私の食欲を唆るには十分過ぎる物だった


「いただきます」


「いただきまーす」


「おう!食え食え」


私は分けられたボルシチスープを口の中へ放り込む


温かいスープが舌に触れた瞬間

心地よいトマトの酸味とビーツの深い味わいが全身をかけ巡る


私は血を求めて何かを食らう怪物のように

目の前にあるボルシチを貪る



「なぁ、」


リリーちゃんの声で私は止まる


「ん?」


「これからどうするんだ?」


「分からない……かな」


「わたしは情報集めようと思うよ」


「それなら要塞都市にでも行かないか?」


「要塞……都市?」


「ここからずっと先に存在する

渓谷に出来た鉱山都市とも言われる場所だ

そこは正に天然の要塞のような防御力を誇り

尚且つ、豊富な地下資源を売り捌き

高い技術水準と経済力を有する巨大都市だ」


「ふむふむ……」


「カムラッドのタブレットも修理できるやも知れん」


「ならそこに……」


「そこでだ……」


「「??」」


「わっちもカムラッドらの旅に連れて行ってはくれないか?」


突然の要求に私達は驚く


「えぇ!?」


「駄目か?」


「う〜ん……」


「絶対に役に立つ!カムラッドも見ただろう?わっちの力を、絶対に損は指せないから‼」


確かに未知の土地で活動するなら

味方は多い方が良い……

ただ本当に良いのだろうか

リリーちゃんに悪意は感じられないが……


「セレナ、わたしは良いと思うよ」


「ユキ……」


リリーちゃんの方を見ると

目を輝かせてこちらを見ている


「そ、そこまで言うなら……」


「決まりだな!早速用意をしよう」


「この家は良いの?」


「家か?借りてるだけだからな」


「それに最近は外に居る時間の方が多かったし、そろそろ出ようとも思っていたから丁度よい」


「そっかぁ……」


「それに……」


リリーちゃんは私の事を全身舐め回すように見つめる


「どうしたの?」


「なんでもない、早速行こうか」


「分かった」


「それじゃあわたしはエンジン起動させてくるならセレナはリリーを手伝っといて」


「ほいほーい」



私達は手早く荷物を纏め装甲車に乗り込み

寂れた集落を後にしたのだった






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