第3話

3話




「また吹雪だよ、あんなに良い天気だったのにこんな急に降るとは……本当にこれ大丈夫か?」


「そうだねぇ……正直私も心配だよ、このまま一生を過ごす事になる気がして」



転移されてから3週間

積まれていたレーションやクマの肉、生成される水によって飢えることはなかったものの

雪景色は変わらず人とも出会っていない

進歩したと言えば装甲車のAIソレイユが仲間に加わったのと生命が生存しているという情報だけである



「はぁ……」


「セレナ?」


「このまま一生を過ごすのかぁ……って」


「ちょっとぉ……辞めてよ怖くなるじゃん」


「でもまぁ確かにな、これだけ進んでも景色は変わらずだとそんな予想が頭を過るのも仕方ない」


「うんうん」


「だがネガティブになっても変わらない、それなら少しでも楽しくやったほうが良いんじゃないか?」


「まぁ確かにそうね……」


「ありがとうソレイユ、」


「お前達が死んたらうちも死ぬからな、それは避けなければならない」


「そうねぇ」



車は進む

雪を掻き分けて進んでゆく


私は窓の外を見てため息を付く


「はぁ……」



「ん?」


外は相変わらずの猛吹雪でいつもは何も見えないが

うっすらと黒い影が……



「おい、な、何だこれはぁ!」


「ソレイユ?」


「装甲車のシステムにアクセス出来ねぇ、こりゃ不味い」


「如何したらいい?」


「まともにつ……」



タブレット端末はソレイユの言葉を最後まで言わせる事はなく

途中で切れた


その瞬間

破裂音の後

装甲車に何かが衝突する音が鳴り響く


「こ、今度は何よ……」


「敵襲かも」


「私見てくる」


「了解」


私は座席を押し倒しトランクへと滑り込む

天井の蓋を開け身を乗り出す


「あの影は敵だったか……」


多い……

先程まで1つだった影はいつの間にか周囲に6

包囲されている


私は結界を貼り

魔力を放ち応戦する


「手応えが……ない」


私の魔力は敵に衝突し大きな爆発を起こすが

イマイチ感覚を得られず

それどころか


「増え続けてる……」


私が敵の影を潰せば潰す程影は増えて行き

攻撃も増す


拳銃か何かで攻撃をしているのか

一つ一つの攻撃は弱いが

量が増え過ぎると負担が大きくなる


「なっ」


連続する衝突音

機関銃である


私は咄嗟に車内へと入る



「敵は?」


「分からない、銃器を持ってる」


「今の音は軽機関銃か?」


「恐らく……」


埒が明かない……


「車を止めよう」


「え?」


「装甲車なら銃弾にも耐えてくれる筈、止まって弾を使い切らせてやろう?」


「イイね、乗った」



私達は車に立て籠る事にした

幸いこの車は装甲車、

拳銃や軽機関銃程度では傷も付かない


吹雪が強くなると共に攻撃も増したが

徐々に窓から見える影も減り

攻撃も少なくなる



「出てくるよ」


「危ないんじゃない?」


「大丈夫よ、いざとなれば……」


「気を付けてね」


「勿論」



私は天井の穴から外に出る

周囲に結界を貼りながら進む


吹雪は止み太陽の光が辺りを照らしてくれる


そして


「見つけた」


私は奥の方に1人佇む人影を見つけた


私は杖を構えながらその方向へ足を進める

残り数mと行った所で影は動き始め


周りを雪に隠れながら走り私の方へ駆け寄る


「速い……」


想像以上に速く

私は接近するその者を撃つことが出来ず

ナイフの間合いまで入られてしまった



「あれ?」


私は目の前の存在を見る


「こ……子供?」


目の前の少女は

綺麗な金髪を持ち青いサファイアの様な目をした

汚れた翼で軍服の少女が私の胸に軽機関銃を押し当てている


少女が口を開く


「お前……」


「何者だ?」


「そっちこそ急に攻撃して来て何なのよ」


「はぁ、良かろう、先に質問に答えてやる」


「わっちはリリーはここの先にある集落の雇われ護衛をしてる、お前は?」


私は自己紹介と弁明のような、今置かれている状況を話すことにした



「つまりお前は遭難していると……」


「そうなの、1人会えたのも貴方が初めてで……」


「リリーで良い」


「そう?ならリリーちゃん……」


私のちゃん付けに対し少しムッとした表情を見せる


「ちゃん……まぁ良いか、こっちも悪かったな急に攻撃して、勧告くらいは出すべきだったか」


「ま、まぁお互い様よね?」


「そういう事にしておこうか」


リリーちゃんは私の方を見る


「ど、どうしたの?」


「いやぁ何でもない、それよりもお前のお仲間さんごとわっちらの集落へ案内してやろうか」


「良いの!?」


「あぁ、良いぞ、これも何かの縁だからな」


「ありがとぉー」


願ってもない話だ

私達は人か街を探して進んでいた

ようやく……ようやく大きな進歩を得られた



「じゃあ装甲車に案内するよ」


「頼む」


リリーちゃんが案内人として仲間に加わった


「少し待っててくれない?」


「ん?」


「荷物を持ってくる」


「荷物?」


「ここから集落まで結構な距離があってな、テントとか寝袋とか色々持ってきてたんだよ」


「分かった」



————数分後



「待たせたな」


リリーちゃんが荷物を持って来たのを

確認したのを私は来た道を戻り

ユキの待つ装甲車へと向かう



「遅かった……ん?その娘誰?」


「リリーちゃん、一応さっきの襲撃者だけど……」


「さっきは済まなかった、こっちも仕事だったんだ」


「ま、まぁ良いけど」


「まぁここで会ったのも何かの縁だろうと言う事でわっちを雇ってくれている街へ案内してやろう」


「それは助かる!」


リリーちゃんは地図を広げてユキに道を教える


私はそれを眺めながら目を閉じ

今後の事を考えてみる事にした






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