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CDD Dr.Ares1050.T.

第1話 新人入社初日

作業報告書

class0第3班

5月26日 くもり

担当 ゼフ•ゲルヴィ


業務内容:カイルハンツ氏宅の庭木の手入れ(ランク4の応援業務)

担当作業員:ゼフ•ゲルヴィ ルポ•ルポン ガンク•トレッド ルーヴ•クワイレンス 以上4名

記録:本日より配属のルーヴ•クワイレンスの研修も兼ねてカイルハンツ邸の庭の手入れに向かった。

9時30分に本社を出て10時に目的地へ到着。

契約者に契約内容の確認とサインをもらう。

契約者に該当の庭まで案内してもらい手入れの内容について指示を受ける。

10時20分より作業開始。15時00分に作業完了。

木を4本を処理した。薪にするとのことで乾かす前の状態まで加工した。

庭の草むしり、花壇の花の手入れ、新しい花の苗の植え付けを実行した。

作業中に小型の害獣が出た為、ゼフ、ガンクの2名で駆除をした。追加料金(内容確認時に承諾済み)の請求書を追加発行。サインをもらった。

獣の素材は不要との事なので、本社に持ち帰り素材回収窓口に提出済み(回収素材は別紙に記入)。

16時20分よりミーティング。議事録はルポンが担当。

17時00分よりルーヴに対して新人用オリエンテーションと面談を実行

18時00分業務完了


以上


 ____________________________


「てな具合にテキトーに書きゃいいんだよ」

「こんなにざっくりでいいなら私でもできそうだ」

 神経質で角ばった文字が書面に書かれていて、それを背の高い男が2人で顔を突き合わせて覗き込んでそれぞれに言葉をこぼした。

 赤い髪の筋肉質な男は、白い髪の細身の男に、今し方覗き込んでいた紙を手に取り手渡して、「班長に提出してこいよ」と渡した。

 へーい、と、あーい、の中間のような間の抜けた声で返事をした白い髪の男は、オフィスの奥の、いかにもリーダーの席だというような場所に置かれたデスクで、肘をついて2人を見ていた男に書類を渡しながら「作業報告でーす」と冗談めかして言った。

「おーおー、ざっくりだって言ってたの聞いて心配してたけど程々にしっかり書いてんじゃん、OK受理しますよ」

 デスクの男は偉ぶるでもなく、かと言って同じようにふざけた調子ではなく、まあ上司らしい口調で笑って受け取り、デスクの引き出しに書類を仕舞い込んだ。

「ルーヴ、今日1日どうだった?やっていけそうか?」

 ルーヴと呼ばれた白い髪の男は小首を傾げて困ったように笑う。

「どうかな。やる気はあるし仕事に不満はないが、力仕事が中心だったから他の面子の逞しさで私は出る幕がなかった。これじゃあ給料泥棒だ」

「……どうしたんだお前、なんだお熱でもあるのか?」

「酷い言い草だな、私だって賃金は労働の対価だと理解しているぞ」

「そうなん?」

「そうなの」

「面白え会話の腰折ってワリィんだけど、そろそろ退勤時間だぞ。今週残業し過ぎだから、社長から嫌味言われる前に帰ろーぜ」

 赤い髪の男、ゼフがソファから手をひらひらと振りながら言うのを聞いて、上司のカイが席を立つ。

「んじゃ、新歓も兼ねたアフターファイブに行きますかな」

 椅子にかけられていた上着を引っ掴んで、サッと羽織り、デスクの下の方から革の丈夫そうな鞄を抱え上げ、颯爽と退室をキめる上司の様子に慌てて紅白コンビが続く。

 7階からエレベーターで移動しエントランスを抜ける頃には、外は夕暮れと夜の狭間の曖昧な色で。

 ほう、とあかりが灯り始めた街灯の下を3人はしばらく歩いた。

 オフィスビルの間を抜けて5分ほど歩くと商店街があり、更にそこから3分ほどで飲屋街になる。

「もう2人は来てるかな」

 手元の小さな機械と建ち並ぶ店を見比べ、小さく店名を繰り返し唱えながらカイが言う。

「アイツら一旦家帰って来るって言ってたじゃん、家からの方が店近ぇからもうついてんだろ」

 同じく店名を唱えながらゼフもキョロキョロと周囲を見渡す。

 ああ、あったあった、と。一番背の高いルーヴが街ゆく人々の奥を指さしてカイの肩をたたいた。

「先輩のガンクとルポン?この辺に住んでるの?」

「そうそう、あいつらこの先の若者が多く住んでるアパートだよ」

「若者っつったってお前だってまだハタチそこそこだろ班長さんよぉ」

「わぁ、出たよおじさんマウント〜。お前だってまだ30にもならないだろ副班長殿ぉ〜」

 2人の掛け合いを聞きいて苦笑いしながら引き戸を開けて最初に入店したルーヴは、元気のいい居酒屋特有の挨拶に戸惑いつつ、予約の名前をつげて店員の案内通りに進んだ。

 2人も続いて奥に進み、本日のテーブルに着くと先に来ていた2人組に、わぁ!と迎えられた。

「お疲れ様ですみなさん」

「わーい!みんなそろったねー!」

「あぁ、待たせたな2人とも」

 ゼフが両手をあげて2人とハイタッチをする。

「ルーヴさんおつかれさまー!」

「ガンクぱいせんどーもーぉ」

 続いてルーヴもハイタッチをする。

「ルポンぱいせんもお疲れ様でぇ〜す」

「はい、お疲れ様です!」

「おーおー、部下同士いい雰囲気だと助かるわ〜お疲れ様ァ」

 カイは片手でパチンパチンと軽めにタッチを交わした後に席に着くと、メニュー表を開き皆の注文をまとめてテキパキと店員へ頼み、届けられた飲み物や食べ物を全員に手際よく配膳してから満足そうにひとつため息を吐いてから改まった声色で

「はーいじゃあ今日は新人歓迎会も兼ねた今月もお疲れ様でした会を執り行いますよー、はいカンパーイ」

 と言いグラスを掲げた。

 かんぱーい、と野太い声とグラスが重なる音が揃った。

「ルーヴさんて、なんの魔法つかいなの?」

「ん?私は回復と支援が主だな。あとはほんのちょっと剣が使える、とか、医療の知識とか生物学とか……そんな程度だよ。ガンクは?」

「おれ?おれはね!剣が好きなの。だからね、魔法はよくわかんないの」

「そ〜なのぉ〜。でも昼間凄かったじゃん、ほら、庭先にボア出た時とか、いの一番に気づいたし、手際も腕もピカイチだったじゃん。あんなに強いなら魔法なんてなくても充分だよ。ほら唐揚げ食べな?」

「わーい!ありがとう!おいしい〜!」

 にっこにこで部下の会話を聞いているカイにゼフが「な、言ったろ?アイツらウマが合うと思ったんだよ」と耳打ちをした。

「どっちも不思議ちゃんだから波長が合うのかな……なんにせよ仲良くなれそうでよかったよ……」

 唐揚げを頬張ってキュッとコーラをキメたガンクの空いたグラスに、瓶のジュースを注ぎながらカイが独り言のように答えた。

「ルーヴさん回復いけるんですね、すごい。僕らのチームは後方がほぼ居ないんで助かります、というか、回復魔法……凄いですね。かなりの実力派じゃないですか」

「何をおっしゃるエルフさん。私なんかが読み解く呪文じゃ精々その場凌ぎの回復程度だよ。だから面倒でなければ今度呪文について教えてくれないかな」

「僕で良ければ喜んでお受けします。熱心な方は好きです」

「ルポは植物なんかにも詳しいから、その辺も聞いてみたら?」

 ちびちびと強めの酒をなめるように飲むカイは、何が嬉しいのかニコニコと頬を緩めたままでそう言った。

「そうなの?さすがエルフだな。と、いうか、触れていいのかわからないんだが、ルポンは、その、なんでそんなに逞しいの?」

「ああ、気がついたら“こう”なってました。シーフの頃にかなり体を使った作業をしていましたから」

「シーフだったの!?え、シーフだったの!?エルフでマッチョでシーフだったの?!」

 ルーヴがひっくり返った声で繰り返す様子に全員が笑う。

 ルポのビジュアルにも生い立ちにも初対面の人間が大騒ぎをするので、そのリアクションを見てきゃっきゃと騒ぐのがこの班の恒例のイベントになっていた。

「もう足を洗って久しいですけどね」

「んおお、いろんな人生があるよな、そうよな……」

「はっははは。まあ先輩2人の実力は今日よく分かったんじゃないか?ゼフは言わずもがなだし、オレもある程度は知ってるだろ?」

「んまぁね。……正直、先輩2人にもお前たち2人にもついていけるか心配で仕方がないよ」

 肩を落としてつまみを齧るルーヴの顔を覗き込んで、ガンクがにぱっと笑顔を見せつけ「仲良くできたら良いっていつも班長言ってるから大丈夫!」と笑った。

「そうそう、なんたってまだ入社初日よ?これから研修も飲み会も回を重ねて親睦を深め実力を発揮しましょう。はい、飲んで飲んで。今日はオレの奢りだから」

 奢り、と聞いて急に高い酒を頼み始めたゼフをカイが小突いて、いつもの事だと気にもとめずにルポが自分の皿にサラダを山盛りに盛り付け、ガンクに肉を取り分けてすすめ、その肉を元気よくガンクが食べている賑やかな空間で、ルーヴは少しの不安と、この先への期待がマーブル模様になった不思議な気持ちを抱きながら、乾杯の後に一口飲んだきりだったビールにようやく手をつけた。




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