夜明けにはまだ遠い
友人によせて。
わたしたちが、私たちという共同体であった瞬間が確かに存在していた。いま、あなたと私は遠く隔てられ、二度と戻れない…ほどでもないくらい離れた場所にいる。
あなたはあなたの人生を生きている。
私は私の人生に疑問を抱いてしまう。
あなたのようには多分なれない。そこに羨ましさを感じてしまうのは、きっと私がまだ普通というものに憧れているからだ。
その普通というものが息苦しく脱ぎ捨てたのは自分のはずなのに、今ならまだ間に合うと囁く周囲の声にうんざりしていながら、そうなれるかもしれないという期待を捨てきれずにいる。私はどうしようもない半端で、愚かな生き物だ。
あなたが歩む道のりに光が射すことを願っている。私の歩む道のりはいまだ暗闇にある。指針のない旅路は、道筋も容易く教えてはくれない。選択の連続の中、私は正しい方に向かっていることを信じたい。
その行く末は何十年後かの自分がいる場所からしか見えない。こんなに怖いことを、どうして世の中の人々は平然とこなせるのだろう。私にはそれが理解できない。
幼い頃思い描いた理想の自分とは程遠い場所にいる。
生きることをやめないだけ、死ぬことを選ばないだけ、自分の人生を素晴らしいものにしたいという意識はもうとっくになくなっていた。緩慢に死んで行くこの世界で、希望に縋ることをとうに諦めて生きている。
あなたたちが世界がより良いものになるよう尽力する間、私は私の人生を終わらせないことしかできない。
こんな世界に誰がした。私の世界はまだ暗い。だけどあなたの行く先には朝が降る。
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