第3話

ポコんと出た電マに途端真剣見を帯びたしたゴブリン擬き。先程はブサ顔と見たが、警戒心を帯びた真面目顔だと意外とワイルドな顔をしている。



葉巻とか似合うと思う。そんなワイルドな彼は雑魚そうな人間がいきなり得体の知れない魔法?を出した事によって警戒しているのか野生動物の様にグルルと歯茎剥き出しで威嚇行為をしている様に思われる。


とりあえずこちらには今の所使えるのが電マしかないので電マを召喚すべく電マ召喚を心で思い描く。今回は振動電マを召喚する。


何度もの召喚で勘所が掴めたのか大体の出す具合がわかったので電マを手に生み出して振動する電マを投げつけるとすぐ直ぐに次の電マを召喚すべく集中して電マ召喚を称える。電マ召喚電マ召喚はぁああ!


投げつけられた電マを、ゴブリンは手に持った棍棒で防ぎつつこちらに少しずつ近づいてくるゴブリン擬き。


しかしだ。舐めるなよ、こちとら小学生の頃は草野球のピッチャーを勤めた経験があるのだ。我が肩はまだまだ行けるのだよ。


さらにペース上げて無我夢中で幾つもの電マを投げていくうちにこちらに勢い良く向かってきたゴブリン擬きののやや大きいお口にしゅるりと気持ち良く入り込んだ。



おごっt!?!?!?


口腔内に入った電マの多大な振動によってゴブリン擬きの顔がめっちゃブレまくっている。じっくり見ると目が疲れて気持ち悪くなりそうだ。


振動のせいでゴブリンの口腔内部奥へと振動電マいざ行かんと言わんばかりに奥へとズブズブ入り込む。もはや入り込み過ぎて電マの後端部しか見れない。


ゴブリンぽい何かは途端驚愕な顔をし電マをどうにかしようとしたが得体の知れない振動する未知な物体であるのと、どうにかしないとと焦りに焦っているのか、パニックを起こして手に持った棍棒を投げ捨てわちゃわちゃと両手をブンブンと振り回す。


その内に奥に行きすぎてどうやら引っかかって取れなくなってしまったようだ。


次第に顔色が紫になって、体がビクンビクンと引き攣りやがてばったりと倒れてしまった。目を大きく開いて涙を流し、こんな筈ではと言った絶望感のある表情だ。恐らく振動した電マが巧妙にもうまい具合で喉に詰まってしまったのだろう。


電マに悪意は無いが未だ詰まった喉奥にて賑やかに振動し続ける電マ。それはまるで生を吸い尽くしてやると言わんばかりの元気の良さ。


電マに排されるとは恐ろしい死に様である。自分はこう言う死に方はしたくない。



「はぁっ……はぁっ……マジで……死ぬかと思った……」



苦しみもがいて全身泥だらけになった、ゴブリンのそばで膝をついた。


「……何がどうしてこうなったんだよ……俺……転生して、最初に倒したのがゴブリンっていうのはまだ分かる。けど武器?がこれって……」


薄汚れた白衣の裾を振り払って立ち上がり、あたりを見渡す。周囲にはゴブリンの御遺体と先程召喚実験の際に投げた場所まで移動してたのか、けたたましい音を奏でた無数の電マ。森の中は相変わらず薄暗く、湿気と虫の羽音がまとわりつくように漂っている。

どこか獣の匂いのようなものも漂い、気を抜けば吐きそうになる。



「ステータス……オープン」


恥ずかしげにポーズをとると、半透明の画面が浮かび上がる。



【名前】鷹志(たかし)

【年齢】41(転生時)

【種族】ヒューマン(外来種)

【職業】見習い医療事務(転生前)

【称号】遭難転生者/社畜経験者/女神に嫌われし者

【スキル】バイブ召喚(Lv.1)/ステータスオープン(ポーズ強制)


【状態異常】

・疲労(中)

・新鮮な性病(詳細不明)



「……状態異常、ほんとどうにかしてくれよ神様……」


顔を覆ってうずくまりたくなる気持ちを抑え、何とか気を持ち直す。

だが、倒したゴブリンの死体を眺めながら、鷹志はふと考え込んだ。


「この世界……マジで生き残るの大変そうだな。俺、武器もまともに使えないし、鍛えてもないし……バイブって、なぁ……」


そう呟いたとき、どこからか再び茂みの音が聞こえた。


ザザ……ガサッ……ガッシャガッシャ


一体のゴブリン(らしき生物)を倒した直後、森の奥から重たい金属音がゆっくりと近づいてくる。


(うおっ、まさか次の敵!?)



鷹志は反射的にその場に落ちたバイブを構えた。心臓の鼓動が早くなる。


「……第二ラウンドか? 頼むから、もうちょっと休ませてくれ……!」




びくりと肩をすくめ、鷹志は電マを両手に構えた。だが姿を見せたのは、全身を銀色の甲冑に包んだ騎士だった。陽の光を受けて剣がぎらりと光る。


その佇まいは凛として威厳に満ちている。

だが、それ以上に鷹志が目を奪われたのは――


(……顔、整いすぎじゃね? めっちゃ彫り深いし、鼻筋通ってるし……外人モデルかよ)


その騎士は兜の目線だけは見えており、顔が異常に整っていると伺える。



騎士は周囲に散らかされた無数の電マ、息絶えたゴブリン、そしてその傍らでバイブを構える鷹志を見比べ、静かに剣を引き抜く。


「……あ、やばい。完全に誤解されてる……いやいや違う! こいつが襲ってきて、俺は――」


必死でジェスチャーを交えながら説明しようとするが、当然通じない。

騎士は剣を構え、じりじりと近づいてくる。


「ま、待って! ステイ! ノー・アタック! アイム、フレンド!」


カタコト英語で必死に訴えるが、騎士は首をかしげるばかり。

(どうやら完全に言語が違うらしい……神様マジで説明不足すぎんだろ)


鷹志はひとまず、電マをそっと地面に置いて両手を上げた。人を簡単に殺傷出来る武器をお持ちな為できるだけ刺激しない様にゆっくりと。だが電マを見た騎士の眉がぴくりと動いた。


「……ン、……セ、リィ……?」


騎士の口から、不思議な抑揚の言葉がこぼれる。声は微かに高く、透明感がある。だが、やはり意味は分からない。


(……ん? 今の声……ちょっと高くね? いやいや、そんなことよりこの状況……)


しかし、騎士の方はというと――


じっと鷹志の服装や顔つき、地面に転がる“バイブ”を見て複雑な表情を浮かべていた。


「……カーン……ルグリ……マギ?」


「マ、マギ? 魔法使い的な意味かな?」


不意に騎士が腰の小さな革袋から、何かの草を取り出すと、それを鷹志の額に押し付ける。

(えっ、何? おまじない? お清め的なやつ?)


突然の接触にドキリとしつつも、拒否する余裕はない。

しかもその草が地味にくすぐったく、何とも言えぬ距離感だった。


(……でもなんか変だな、この騎士。力強いけど、よく見たら腰とか……細くない?)


そう思いながらも、彼の脳内には「たぶん超絶中性的なイケメン外国人」くらいの認識しかなかった。



騎士様は何処の外国語だろうか、色々自分と地面に倒れたゴブリンと電マに指を指して色々喚いている。


時折英語の単語も出てくる事からこの世界の神様はどうやらこちらの世界での色んな国の言語をごちゃ混ぜにした言語にしたようだ。


まったく何を言っているのかわからない。それにめっちゃ声がキンキンしてくる。イケメンな顔で声が高いとかちょっとイラッとしてくる。


自分もイケメンだったらと、イケメンだったら中学生の頃に気になるあの子に声をかけた所、顔が中性子崩壊したのとか言われた。


当時は意味がわからなかったが、高校生になってふとネットで探すと自身の顔面偏差値に対しなお一層の事不快に思った。


コレもイケメンが悪い。お金を貯めてイケメンに整形したくなる中学時代だった。


イケメン騎士はキンキンした声で叫びつつ、腰に帯びた剣を抜きこちらに向ける。

ピカピカと陽光を受けて輝いている刀身はめっちゃ切れそう。


日本では包丁ですら大きものだと銃刀法違反じゃないかと思うが騎士様がお持ちの物はすごい長い。

しかし次の瞬間、騎士の瞳に宿る鋭い殺気が、森の湿った空気を一変させた。


ギン、と鋭く光る剣先が、まっすぐ鷹志を射抜くように向けられている。


「……ナンリュ・ゼカ……トゥス!」


異世界語の叫びが響く。意味はわからない。だが、明らかに**「よし、頃そう!」**という気迫が込められていた。


「え、ま、まって!? 待てってば!? 俺悪くない、悪くないよね!? トラストミー!誤解!! 完全に誤解だって!」


鷹志の叫びも虚しく、次の瞬間、剣が風を切って振り下ろされた。


ギィィン!


「うおおおおッ!?」


間一髪、転がるように身をかわす。すぐそばの地面に突き立った剣は、白衣の裾を裂いた。わずかに裂けた白衣からは、神様特典だったとは思えないような汗臭さが立ち上がる。


「こ、こいつ……マジで殺す気かよ!!」


その表情は冷酷だった。女神に蹴られて転生し、ゴブリンに襲われ、今度は騎士に命を狙われるとは……まさに踏んだり蹴ったりだ。


剣を構え直し、またも突進してくる騎士。


「うおおっ!? ま、待ってって言ってんだろ!! 電マ召喚!」


反射的に鷹志は肩バイブを召喚し、それを盾のようにかざす。

――ギィィン!


振り下ろされた剣が電マと激突し、予想外の振動で一瞬だけ騎士の手が鈍る。


「すげぇ……電マ、マジでやるじゃん……!」


鷹志は間髪入れず、電マを投擲!


「いけぇっ!」


「ンッ!?」


見事、電マは剣を持っていない手に命中し、びっくりした騎士がバランスを崩す。

その一瞬を逃さず、鷹志は脱兎のごとく森の奥へと逃げ込んだ。

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