⑦ ≪オールド・ハート≫と覚醒子





「そうかぁ。・・・そうだね。じゃあまず整理しようか。


〈契約〉と《オールド・ハート》を組にして頭の隅に置いておいて。そしてこれらを繋げる前にひとつの伝説を聞いてもらうよ。事実かどうかの判断は任せよう。


 むかしむかし、ユクジモ人種の中にロクリエの花を祖に持つ部族がいた。

 さて、ロクリエの花というのは腐敗した沼なんかに生息して毒素や不要物を濾過して養分や水分を得る際、ひとつにまとめて吐き出す性質を持っているのは話したかな?


 これはロクリエの花の特徴なのだけど、それに似た機能を受け継いでしまったのがユクジモ人ロクリエ族のヒトだったんだ。


 彼らには「金臓」と呼ばれる、体内に取り込まれた金属を溜め込んでしまう特殊な器官があったんだ。「サクラ」とも隠語で呼ばれる金臓は文字通り桜色の臓器だったともいわれている。その他にもボクらの知らなくていい由来もあるのだろうけどそれはとりあえずナシにしよう。


 で、そんな発達した器官があり、そして地中の金属を取り入れてしまう木の実や溶け込んだ水を摂り続けるとどうなるか? 貴重な金属を長年に渡りその「金臓に蓄積していく」という運命がついて回ることになるよね。


 そして彼らの部族では命を落とした者を灰にして土に還し、その灰から取り出される「金属の塊」を死者の魂として祀る風習があった。


 もう、察しはつくかな。


 彼らは全人種・全生物のどれを探しても見つけることのできない金臓という器官を持ってしまったがために、金目当ての者たちから狙われるようになっていったんだ。


 わかるかい? 「狙われる」ってことは罪なきロクリエ族を殺して、腹を切り裂いて金臓を抉り出すってことなんだよ。

 ・・・いつしか「サクラ狩り」なんて言葉さえ耳に馴染むほどそんな凶行は世間に伝わっていったんだ。


 ロクリエ族も始めのうちはそんな襲撃から逃れるために場所を替え、また他部族に紛れて生き残りを図ったんだけど、それも長くは続かなかった。とばっちりを恐れたユクジモ人たちからは見放され、保護を引き受け匿ってくれた他人種からも微量の金属を無駄なく掻き集めるための「精製装置」としてしか見なされなくなっていったんだよ。


 年月を待たねば大きな金属塊には育てられない金臓も、ヒトの欲が求める速度についてはいけないまま、ついに老いたロクリエ族だけでなく若者たちまで手にかけられるようになっていったのさ。


 そんなロクリエ族の終焉の時代に一人のヒトが立ち上がった。

 後に伝説の魔法使いとも台王とも呼ばれた名のない若者だ。


 そのヒトは自らを部族の名で名乗り、〔魔法〕を手に入れて世界を掌握したんだよ。」


 なんでもない場面で時折エレゼが憂うような眼差しを見せていた理由に、そこで一同はようやくふれる。


「なっはっはっはっ! みろ、チペっ! やっぱり〔魔法〕はあったんだよっ! そいでそいで、どうなった? 〔魔法〕はどうした? どうすれば魔法使いになれるんだいっ?」


 あまり感銘を受けなかったのか、あるいは誰よりも感銘を受けたのか元気になってしまったニポはいよいよ手にも力が入ってしまう。ほぶっ、と呻くキペを尻目に。


「続き、いいかなニポちゃん。ええと、「ロクリエ」と名乗るその魔法使いが世界を支配した、そこまではいいね。


 では次に《オールド・ハート》について話しておこうか。

 今ニポちゃんが尋ねた質問を少し受ける形になるかな、ロクリエと名乗った魔法使いはその力と同時に「何か」を得たようなんだ。たぶん、これについてはスナロアくんやモクくんの方が知っているんじゃないかな。ふふ。


 まあとりあえず、ロクリエ王は自分の体に備わったそんな〔魔法〕を封じる術を手に入れたんだ。

 どうやって手に入れたかは不明だけど、やはりそんな危ない〔魔法〕を他の誰かが使えるようになったら不都合だからね、策を講じたんだろう。

 その中のひとつとされているのが〈契約〉なんだよ。


 なぜかは知らないけど《オールド・ハート》の現れる者にだけ取り交わせる〈契約〉は〔魔法〕の一部の力を引き出すことができるんだ。


 ふふ、矛盾しているように思えるだろうけどそこにはカラクリがあったんだよ。

 ロクリエ王は〈契約〉を濫用させないために宿主となるヒトの肉体に負荷が掛かるよう仕込んでいたのさ。・・・実際はいくつも例外があるのだけど、ややこしくなるからそこは省くとしよう。


 とにかく〔魔法〕を全力で使いこなすことができないよう、わずかな力だけを与える〈契約〉でそれ以上の能力開発を縛ることに台王ロクリエは成功したわけだ。とはいえ《オールド・ハート》の残る者は〈契約〉を交わすことができる分だけ危険因子であることに変わりはない。


 そうそう、ちなみに《オールド・ハート》の保持者というのは昔からいるし、実はそんなに珍しい存在でもないんだよ。劣性遺伝だから数は少ないのだけど、突然に発生する率が低くないからね。

 ただその数に比べて〈契約〉を済ませた者が極端に少ないのは、取り交わせる「資格」の目印である《オールド・ハート》が大人になるまでにほとんどの場合消えてしまうから。だから《オールド・ハート》が小さい頃にはあった、というヒトはわりと身近にいると思っていいだろうねぇ。

 ちょとごちゃごちゃになってきたかな?


 うんと、大人になっても《オールド・ハート》が残り続けて〈契約〉できる者をボクらは「覚醒子」と呼んでいる。


 とはいえヒトの命の営みの話だからね、〈契約〉を交わせる例外が他にもあるんだよ。

 わかりやすいものだと特定の系譜で見られる「血聖」や特殊な「いれぐら」なんかがあるけど、これは今はやめておこう。


 あ、それとこれも関係しているから言っておくね。たぶんサムラキくんの云う「ほしふせ」は星の印に酷似している斑が臥せる、って意味で《オールド・ハート》の消えた者、あるいはそれを元々持っていない者のことを指していたんじゃないかな。

 つまりは、文字通り「ほしふせ」の者が立ち入れば死んでしまう、という《膜》への警告を表したものだろうねぇ。


 そしてアヒオくん。

 以上の説明から言えることは、リドミコちゃんは少なくとも覚醒子であり、いま人格を乗っ取っている第八人種となんらかの〈契約〉を終えている、ってことだよ。もちろんそれ以上のことも考える必要はあるけどね。」


 伝説を語り始めた時は誰もが絵空事と聞き流していたものの、現実に目の前で起こったリドミコの変化とその原因である《オールド・ハート》が繋がったことで戦慄さえ覚えてしまう。


 ただキペだけは、おまんじゅうってどうしておまんじゅうってゆうのかな、と思っている。彼は当事者だが、脱落者でもあった。


「つくづく役者だな、サイウンの語り部。偶然がこの状況を作り出したにしてもまだ本質に触れようとしないとは。」


 呆れるようにリドミコは笑い、エレゼを見上げる。


「避けてるわけじゃないさ。でもそれならば今度はキミが導く番じゃないのかな。

 は本当に驚くべき偶然だけど、だからボクもここへ来たんだ。キミの案内があれば事は一層加速して進むことになるだろうねぇ。」


 こちらも呆れるように笑んでリドミコを見つめ返す。

 だがそんなリドミコに宿る「見えざる者」が場を緊張させる中、ひとつの燃え盛る魂が声を絞り出す。


「では・・・では、ここには本当にお宝はないのだに?」


 食い下がるのは、元手が掛かっていたからだ。

 やっとのことで巷で噂の財宝神殿に辿り着いたにもかかわらず何にもありませんでしたでは帰れない。


「チヨーのダイーダ、望む形ではないだろうがな。ついて来い。宝と呼ぶに相応しいものを見せてやろう。」


 そう残すリドミコは一同の反応を伺うことなくつかつかともと来た道を歩き出す。たぶんだが、先の丁字路の右と左を間違えたのだろう。


「リドミコっ、あ、えっと、どうしたら・・・」


 リドミコではないリドミコの対処がわからなくなってオロオロするキペに、シクロロンの肩を借りて立ち上がるアヒオが言葉をかける。


「行くしかないだろ。よくわからんが、そういうことなんだろ、エレゼ。」


 静かに意味ありげな笑みをひとつ浮かべて語り部は頷いた。


「あれがおらたちのほしなのか。おら、もとのいいこのほうがえがった。」


 比喩でいうところの星、という意味もあるのだろう。

 まだその関係性は伺い知れなかったが、サムラキにとっても今のリドミコより本物のリドミコの方が好きだったことは伝わった。


「落ち込むな、ぬめぬめ。謎まみれのちびっこ野郎が「来い」ってんだから行くっきゃないじゃないのさ。

 新しい石碑だってあるかもしれないし、持って帰んなきゃなんない話がありそうだからね。あたいも行くよ。・・・パシェ、待ってな。」


 びっくり体験は味わったもののこの神殿の全容はまだまだ解っていない。

 それもあってか使命感に沸くニポは乗り気だった。


「ニポさん・・・私も同行します。お兄さまもどうせ止めても行くのでしょうから、せめて容態を少しでも診られる者がいなければ。

 ・・・というわけです、道具係のダイーダさんも来てください。」


 よいせ、っと自分で進もうとするアヒオを寄りかからせてシクロロンも続いて歩き出す。


「無論だに。宝があるならどこへだってなや。・・・道具係?」


 そんなダイーダの隣で終始リドミコやエレゼの話を聞いていた学者も場に合わせてではなく、自らの意志で足を踏み出した。


「どうやらおもしろいものが拝めそうですな。見たところワタシと同じ畑の研究者もいないようですし、新たな解古学の一項に出会えるのであれば他の者たちより先んじなければ。お供させていただきましょうか。」


 そうして一行は神殿入り口から左右に分かれていた左の通路へと歩を進め、陽の翳り始めた回廊を地下に降りていく。

 

「うわぁ、けっこう明るいんだね。」


 ほの明るく緑に輝く苔に覆われた地下回廊は、低い祭壇を讃える広間へと続いていた。


「これはまた、神秘的ですな。」


 そんな薄明かりに目が慣れてくると、くり抜かれたままの岩肌に覗く鉱物が光る苔に反射してキラキラと頭上を飾っていることに気付く。


「お、なんだいありゃ? 祭壇かい? しかしあのちびっこ野郎はまた偉そうにしくさって・・・」


 神殿と呼ぶに値するそんな荘厳な空気がだから、奥にある祭壇から一同を見下ろすリドミコを厳然とさせていた。


「先に言っておくけどね、ここからは完全にボクもお手上げの領域になる。嘘も隠し事もない。そのぶん、何の保証も予測もない。ついてきてくれるかい?」


 本心だったのだろう、珍しくしかめた顔でエレゼはキペたちを振り返ってそう告げる。


「こんな景色で脅かしはナシだ。おれの腹は決まってる。他の連中もココまで来てじゃあ帰りますってこたぁねーだろ。」


 帰りたかったキペは「もちろんそうさ」という顔をする。傍らのニポは含み笑いだ。


「ならば上がってこい。奇跡をその目で確かめられるだろう。」


 投げる声は反響し、祭壇へ上る者たちのささやかな足音をすら呑みこんでいく。


「こ、れ、・・・ニビの木だ。巨大なニビの木の一枚板でできてる。」


 申し訳程度の階段を上った先には苔むす扉の形のモニュメントがあった。

 そしてその取っ手となる部分には七つの木皿があり、澄み透った水を満々と湛えている。


「本当に、これは奇跡だねぇ。・・・ふう。過去にここへ辿り着いた者はたぶんボクたちの他にもいただろう。でもね、このリバイン・ハウルドで誰もが阻まれたはずだよ。

 この「扉」の鍵は、見ての通りこの七つの器を「満たす」ことで発動するのだから。」


 そこでようやく、奇跡だ偶然だとリドミコやエレゼが連呼していたことに思い至る。


「ななつのほしが、ひとつのいのりのつきになる。からからはへだたりをのみこみ、ひるとよるとをあかでつぐ。」


 月星信仰における理なのか、サムラキは思い出すように言葉を紡いだ。


「おたくココへ来てからよくしゃべるようになったなや。いろいろ知ってるならちゃんと教えて欲しかったに。・・・ところでそれ、どういう意味だなぃ?」


 詩的な表現が多すぎるカラカラの教えから分かれたイモーハ教月星経典だからか、あまり具体的に示していないようだが、


「はん、どーせ朝焼けや夕焼けになぞらえたこの扉への導入説明、ってトコじゃないのかい。謎解きはいいからさっさと開けな、ちびっこ。」


 せっかく知恵を絞って考えた先人の謎解きタイムは無惨にもこれにて終了してしまう。


「ここにいる七つの人種の、その血を分けるのだ。

 リバイン・ハウルドはお前たちも知っている神殿の像と似た働きをする。それを支えているのが我々のような存在だとは知らぬようだがな。ふ、まあいい、お前たちが怖気づけばそれで終わりだ。さ、どうする?」


 試すように目を閉じたまま顔だけを向け、リドミコは一同を見渡す。


「き、傷をつけて血を流せというのかに?

 ・・・ふふふ、いったい誰にモノを尋ねているのかね(金)。この行商一筋ダイーダ=ローイェをお嬢ちゃん、いったい誰だと思っているのかね(金)。手傷のひとつやふたつやみっつやよっつ、立ちはだかる財と宝と奇跡を前に渋って値切って買い叩くほど落ちぶれきった商人にアタシが見えるというのかね(金)っ!

 ・・・ふっふっふ。こく、もぉぉぉーつっ!」


 するとそこでだいぶ薄汚れた自尊心を丸出しにしてダイーダがアヒオの指投げ刃をかっぱらい指を切り裂いた。・・・どいつもこいつもかっぱらってばっかりだ。


「どぅおふっ・・・あ、あとを・・・頼んでもいい金?」


 思いのほか痛かったのだろう。もう横になっていい?と言わんばかりの青い顔でそういい残す。


「・・・バカだなー。おまえさん指なんて神経が密集してんだから地味に痛いに決まってるだろ。切るなら腕とか背中とかもっと鈍いとこにしとけばいいのによ。

 んでアレだろ? 別にそんな恰好つけなくても血液ならなんでもいいんだろ? なら鼻血とか口ん中噛んだ方が利口ってモンだぞ。・・・ま、もう手遅れだろうが。」


 確かに思い切ったわりにダイーダの指からはあまり血が出ていなかった。

 血判でも押すのなら体裁も兼ねて指や手を切るのだろうが、血液内組織やそこに生息する見えざる命や酵素に用があるのなら鼻血で充分だった。


「なるほど。・・・なあチペ、あたい、あんたのこと、本当に気に入ってるんだよ。

 ・・・どりゃあっ!」


 え、何、ニポ、ちょ、こんなところでそんな、あは、でも僕もなんていうのかな、そういうのって悪くな―――のようなドキドキ感は至近距離からぶん殴られて滲んできた鼻血と一緒にキペに別れを告げてゆく。


 キペはニポにとって、三下なのだ。


「ほぐ・・・に、ニポ。・・・僕、顔腫らしてばっかりなんだよ?」


 一番ケガをしているキペに運命は手加減なしだった。


「あぁ、キペさん・・・でも、確かに自分でやるより誰かに任せた方が思い切りがついていいですね。自分だと手加減してしまいそうですし。

 ・・・あの、お兄さま、私を、その、傷つけてください。もう、好きなように。ええもちろん。いいのよ、そう、ダメ。もっとよ、もっと、そう、わかる? イヤじゃないの、そう、もっとよ、そしてその調子でもっと私を、もっともっとめちゃめちゃにしてー――」

「せいっ!」


 それ以上はリドミコの前でしゃべらせたくなかった。

 予想以上にアグレッシブなシクロロンの解放だけはどんなリドミコであれ見せたくなかった。

 だので手首の表っ側をざくっと切りつけるアヒオだった。


「あひゃん・・・それも、いい。」


 そして妙に色気を出してくるシクロロンに目を奪われていたヤアカの手もざくっとやる。


「どひゃん・・・まだ何も言ってないのですがっ?」


 あ、そうだったすまないなとりゃっ、と言ってサムラキの手も切る。ちょっとした通り魔だ。


「いてえつの、いてえっつの、いてえよ。」


 なんだかんだと言ってもやはり、たかだか一滴ばかりの血を流すということは痛いことなのだ。戦で争い命を奪うということはその延長線のずっと先にありこそすれ、決して遠くない位置にある現実だった。


「ぬんっ!・・・あとは、リドだけか。」


 そして自分の腕を切るも、さすがにその少女にだけは刃を立てられない。

 他の者に傷つけさせることも嫌だったが、己の手でなど不可能な所業だ。


「あの。・・・お兄さま、私、縫い針を持っているんですけど・・・」


 むおんっ!とアヒオは目をひん剥く。

 おめソレさぎに言ってくんち、とでも言うように。


「・・・ほ、ほぐん。あれ? じゃ、僕は殴られなくても済んだのかな。」


 むおんっ!とニポは白い歯を剥く。

 なんか文句あんのか三下、とでも言うように。


「・・・お前らには何かこう、緊張感というものがないのだな。・・・お、上手いな、シムのシクロロン。」


 うるさい連中は放っておき、シクロロンはちゅ、と血管に沿わせて針を刺す。

 痛みはあるものの、顔を殴るやら腕を切るやらよりよほど効率的に血を流せた。そしてなんだかんだで血が流れなかったキペとダイーダも同じように針を刺してもらい、ようやく七つの苔むす木皿の水にそれぞれの血を溶かし入れることができた。


 世紀の一瞬もグダグダな二度手間に感動をむしり取られた形だ。


「ふよよよー、さー来るかい? え? 〔魔法〕かい? それとも妖精かい? ササの妖精かい? あたいお姫さまみたいになれるかねー? ね、どうするチペ、あたいお姫さまとか魔法使いになったら。きしし、なあチペ、夜な夜な舞踏会なんぞ開いてはササをあおってちやほやされたらチペ、あんたどうしちゃうんだい、ねえ? あたいってばこう見えてフリフリのドレスが着てみた・・・

 なんだいっ! 何にも起こらないじゃないのさっ!」


 クレームから寝言までそのすべてを受け入れるのが『ヲメデ党』党員・キペの勤めなのかもしれない。彼が石像のようになってしまったのはきっと、心を守るためだろう。


「ったく徹頭徹尾うるせー女だな、ちったぁ待ってみろ。そんでおまえさんの寄りかかってるキペを見てみろ。半ば放心状態じゃねーか。大事にしてやれよ、ったく。」


 そう言いながらも何かが始まるのを待ってみるも、その扉が開く気配はなかった。


「おかしいねぇ。これで合ってるはずなんだけどなぁ。何か間違っていたかい、見えざる者のリドミコちゃん? 


 あ・・・・・・そういう、ことかぁ。」


 とそこでずるずるずる、ぱたん、とサムラキが崩れるようにして倒れる。

 それに続いて背の低いダイーダとヤアカもとろんとした目になり膝をつく。


「え、あれ? 皆さんどうしたんですかっ?」


 同じく背の低いリドミコもフラフラとし始め、そのけだるさを確認すると話し出した。


「血を落としたからまばゆい光に包まれて、という仕組みではない。お前たちはどうやら勘違いしているようだがな、ここはもう、リバイン・ハウ、ルド、の中な、のだ。」


 そう不敵な笑みを浮かべるリドミコもサムラキたちのように体を横たえる。


「ここが風の届かない地下ってことに気付ければ、もう少し早く、理解できたかもねぇ。まさかこ、んな形で血に反応す、る《ロクリエの祈り》があった、なんて。ボクも勉強不足だ、った、かね、ぇ・・・」


 そんなエレゼのぼやきを聞き届けるより早く、一同は静かな眠りについた。

 それをまるで祝うかのように瞬き続ける苔の光に包まれながら。


 年月を待たねば大きな金属塊には育てられない金臓も、ヒトの欲が求める速度についてはいけないまま、ついに老いたロクリエ族だけでなく若者たちまで手にかけられるようになっていったのさ。


 そんなロクリエ族の終焉の時代に一人のヒトが立ち上がった。

 後に伝説の魔法使いとも台王とも呼ばれた名のない若者だ。


 そのヒトは自らを部族の名で名乗り、〔魔法〕を手に入れて世界を掌握したんだよ。」


 なんでもない場面で時折エレゼが憂うような眼差しを見せていた理由に、そこで一同はようやくふれる。


「なっはっはっはっ! みろ、チペっ! やっぱり〔魔法〕はあったんだよっ! そいでそいで、どうなった? 〔魔法〕はどうした? どうすれば魔法使いになれるんだいっ?」


 あまり感銘を受けなかったのか、あるいは誰よりも感銘を受けたのか元気になってしまったニポはいよいよ手にも力が入ってしまう。ほぶっ、と呻くキペを尻目に。


「続き、いいかなニポちゃん。ええと、「ロクリエ」と名乗るその魔法使いが世界を支配した、そこまではいいね。


 では次に《オールド・ハート》について話しておこうか。

 今ニポちゃんが尋ねた質問を少し受ける形になるかな、ロクリエと名乗った魔法使いはその力と同時に「何か」を得たようなんだ。たぶん、これについてはスナロアくんやモクくんの方が知っているんじゃないかな。ふふ。


 まあとりあえず、ロクリエ王は自分の体に備わったそんな〔魔法〕を封じる術を手に入れたんだ。

 どうやって手に入れたかは不明だけど、やはりそんな危ない〔魔法〕を他の誰かが使えるようになったら不都合だからね、策を講じたんだろう。

 その中のひとつとされているのが〈契約〉なんだよ。


 なぜかは知らないけど《オールド・ハート》の現れる者にだけ取り交わせる〈契約〉は〔魔法〕の一部の力を引き出すことができるんだ。


 ふふ、矛盾しているように思えるだろうけどそこにはカラクリがあったんだよ。

 ロクリエ王は〈契約〉を濫用させないために宿主となるヒトの肉体に負荷が掛かるよう仕込んでいたのさ。・・・実際はいくつも例外があるのだけど、ややこしくなるからそこは省くとしよう。


 とにかく〔魔法〕を全力で使いこなすことができないよう、わずかな力だけを与える〈契約〉でそれ以上の能力開発を縛ることに台王ロクリエは成功したわけだ。とはいえ《オールド・ハート》の残る者は〈契約〉を交わすことができる分だけ危険因子であることに変わりはない。


 そうそう、ちなみに《オールド・ハート》の保持者というのは昔からいるし、実はそんなに珍しい存在でもないんだよ。劣性遺伝だから数は少ないのだけど、突然に発生する率が低くないからね。

 ただその数に比べて〈契約〉を済ませた者が極端に少ないのは、取り交わせる「資格」の目印である《オールド・ハート》が大人になるまでにほとんどの場合消えてしまうから。だから《オールド・ハート》が小さい頃にはあった、というヒトはわりと身近にいると思っていいだろうねぇ。

 ちょとごちゃごちゃになってきたかな?


 うんと、大人になっても《オールド・ハート》が残り続けて〈契約〉できる者をボクらは「覚醒子」と呼んでいる。


 とはいえヒトの命の営みの話だからね、〈契約〉を交わせる例外が他にもあるんだよ。

 わかりやすいものだと特定の系譜で見られる「血聖」や特殊な「いれぐら」なんかがあるけど、これは今はやめておこう。


 あ、それとこれも関係しているから言っておくね。たぶんサムラキくんの云う「ほしふせ」は星の印に酷似している斑が臥せる、って意味で《オールド・ハート》の消えた者、あるいはそれを元々持っていない者のことを指していたんじゃないかな。

 つまりは、文字通り「ほしふせ」の者が立ち入れば死んでしまう、という《膜》への警告を表したものだろうねぇ。


 そしてアヒオくん。

 以上の説明から言えることは、リドミコちゃんは少なくとも覚醒子であり、いま人格を乗っ取っている第八人種となんらかの〈契約〉を終えている、ってことだよ。もちろんそれ以上のことも考える必要はあるけどね。」


 伝説を語り始めた時は誰もが絵空事と聞き流していたものの、現実に目の前で起こったリドミコの変化とその原因である《オールド・ハート》が繋がったことで戦慄さえ覚えてしまう。


 ただキペだけは、おまんじゅうってどうしておまんじゅうってゆうのかな、と思っている。彼は当事者だが、脱落者でもあった。


「つくづく役者だな、サイウンの語り部。偶然がこの状況を作り出したにしてもまだ本質に触れようとしないとは。」


 呆れるようにリドミコは笑い、エレゼを見上げる。


「避けてるわけじゃないさ。でもそれならば今度はキミが導く番じゃないのかな。

 は本当に驚くべき偶然だけど、だからボクもここへ来たんだ。キミの案内があれば事は一層加速して進むことになるだろうねぇ。」


 こちらも呆れるように笑んでリドミコを見つめ返す。

 だがそんなリドミコに宿る「見えざる者」が場を緊張させる中、ひとつの燃え盛る魂が声を絞り出す。


「では・・・では、ここには本当にお宝はないのだに?」


 食い下がるのは、元手が掛かっていたからだ。

 やっとのことで巷で噂の財宝神殿に辿り着いたにもかかわらず何にもありませんでしたでは帰れない。


「チヨーのダイーダ、望む形ではないだろうがな。ついて来い。宝と呼ぶに相応しいものを見せてやろう。」


 そう残すリドミコは一同の反応を伺うことなくつかつかともと来た道を歩き出す。たぶんだが、先の丁字路の右と左を間違えたのだろう。


「リドミコっ、あ、えっと、どうしたら・・・」


 リドミコではないリドミコの対処がわからなくなってオロオロするキペに、シクロロンの肩を借りて立ち上がるアヒオが言葉をかける。


「行くしかないだろ。よくわからんが、そういうことなんだろ、エレゼ。」


 静かに意味ありげな笑みをひとつ浮かべて語り部は頷いた。


「あれがおらたちのほしなのか。おら、もとのいいこのほうがえがった。」


 比喩でいうところの星、という意味もあるのだろう。

 まだその関係性は伺い知れなかったが、サムラキにとっても今のリドミコより本物のリドミコの方が好きだったことは伝わった。


「落ち込むな、ぬめぬめ。謎まみれのちびっこ野郎が「来い」ってんだから行くっきゃないじゃないのさ。

 新しい石碑だってあるかもしれないし、持って帰んなきゃなんない話がありそうだからね。あたいも行くよ。・・・パシェ、待ってな。」


 びっくり体験は味わったもののこの神殿の全容はまだまだ解っていない。

 それもあってか使命感に沸くニポは乗り気だった。


「ニポさん・・・私も同行します。お兄さまもどうせ止めても行くのでしょうから、せめて容態を少しでも診られる者がいなければ。

 ・・・というわけです、道具係のダイーダさんも来てください。」


 よいせ、っと自分で進もうとするアヒオを寄りかからせてシクロロンも続いて歩き出す。


「無論だに。宝があるならどこへだってなや。・・・道具係?」


 そんなダイーダの隣で終始リドミコやエレゼの話を聞いていた学者も場に合わせてではなく、自らの意志で足を踏み出した。


「どうやらおもしろいものが拝めそうですな。見たところワタシと同じ畑の研究者もいないようですし、新たな解古学の一項に出会えるのであれば他の者たちより先んじなければ。お供させていただきましょうか。」


 そうして一行は神殿入り口から左右に分かれていた左の通路へと歩を進め、陽の翳り始めた回廊を地下に降りていく。

 

「うわぁ、けっこう明るいんだね。」


 ほの明るく緑に輝く苔に覆われた地下回廊は、低い祭壇を讃える広間へと続いていた。


「これはまた、神秘的ですな。」


 そんな薄明かりに目が慣れてくると、くり抜かれたままの岩肌に覗く鉱物が光る苔に反射してキラキラと頭上を飾っていることに気付く。


「お、なんだいありゃ? 祭壇かい? しかしあのちびっこ野郎はまた偉そうにしくさって・・・」


 神殿と呼ぶに値するそんな荘厳な空気がだから、奥にある祭壇から一同を見下ろすリドミコを厳然とさせていた。


「先に言っておくけどね、ここからは完全にボクもお手上げの領域になる。嘘も隠し事もない。そのぶん、何の保証も予測もない。ついてきてくれるかい?」


 本心だったのだろう、珍しくしかめた顔でエレゼはキペたちを振り返ってそう告げる。


「こんな景色で脅かしはナシだ。おれの腹は決まってる。他の連中もココまで来てじゃあ帰りますってこたぁねーだろ。」


 帰りたかったキペは「もちろんそうさ」という顔をする。傍らのニポは含み笑いだ。


「ならば上がってこい。奇跡をその目で確かめられるだろう。」


 投げる声は反響し、祭壇へ上る者たちのささやかな足音をすら呑みこんでいく。


「こ、れ、・・・ニビの木だ。巨大なニビの木の一枚板でできてる。」


 申し訳程度の階段を上った先には苔むす扉の形のモニュメントがあった。

 そしてその取っ手となる部分には七つの木皿があり、澄み透った水を満々と湛えている。


「本当に、これは奇跡だねぇ。・・・ふう。過去にここへ辿り着いた者はたぶんボクたちの他にもいただろう。でもね、このリバイン・ハウルドで誰もが阻まれたはずだよ。

 この「扉」の鍵は、見ての通りこの七つの器を「満たす」ことで発動するのだから。」


 そこでようやく、奇跡だ偶然だとリドミコやエレゼが連呼していたことに思い至る。


「ななつのほしが、ひとつのいのりのつきになる。からからはへだたりをのみこみ、ひるとよるとをあかでつぐ。」


 月星信仰における理なのか、サムラキは思い出すように言葉を紡いだ。


「おたくココへ来てからよくしゃべるようになったなや。いろいろ知ってるならちゃんと教えて欲しかったに。・・・ところでそれ、どういう意味だなぃ?」


 詩的な表現が多すぎるカラカラの教えから分かれたイモーハ教月星経典だからか、あまり具体的に示していないようだが、


「はん、どーせ朝焼けや夕焼けになぞらえたこの扉への導入説明、ってトコじゃないのかい。謎解きはいいからさっさと開けな、ちびっこ。」


 せっかく知恵を絞って考えた先人の謎解きタイムは無惨にもこれにて終了してしまう。


「ここにいる七つの人種の、その血を分けるのだ。

 リバイン・ハウルドはお前たちも知っている神殿の像と似た働きをする。それを支えているのが我々のような存在だとは知らぬようだがな。ふ、まあいい、お前たちが怖気づけばそれで終わりだ。さ、どうする?」


 試すように目を閉じたまま顔だけを向け、リドミコは一同を見渡す。


「き、傷をつけて血を流せというのかに?

 ・・・ふふふ、いったい誰にモノを尋ねているのかね(金)。この行商一筋ダイーダ=ローイェをお嬢ちゃん、いったい誰だと思っているのかね(金)。手傷のひとつやふたつやみっつやよっつ、立ちはだかる財と宝と奇跡を前に渋って値切って買い叩くほど落ちぶれきった商人にアタシが見えるというのかね(金)っ!

 ・・・ふっふっふ。こく、もぉぉぉーつっ!」


 するとそこでだいぶ薄汚れた自尊心を丸出しにしてダイーダがアヒオの指投げ刃をかっぱらい指を切り裂いた。・・・どいつもこいつもかっぱらってばっかりだ。


「どぅおふっ・・・あ、あとを・・・頼んでもいい金?」


 思いのほか痛かったのだろう。もう横になっていい?と言わんばかりの青い顔でそういい残す。


「・・・バカだなー。おまえさん指なんて神経が密集してんだから地味に痛いに決まってるだろ。切るなら腕とか背中とかもっと鈍いとこにしとけばいいのによ。

 んでアレだろ? 別にそんな恰好つけなくても血液ならなんでもいいんだろ? なら鼻血とか口ん中噛んだ方が利口ってモンだぞ。・・・ま、もう手遅れだろうが。」


 確かに思い切ったわりにダイーダの指からはあまり血が出ていなかった。

 血判でも押すのなら体裁も兼ねて指や手を切るのだろうが、血液内組織やそこに生息する見えざる命や酵素に用があるのなら鼻血で充分だった。


「なるほど。・・・なあチペ、あたい、あんたのこと、本当に気に入ってるんだよ。

 ・・・どりゃあっ!」


 え、何、ニポ、ちょ、こんなところでそんな、あは、でも僕もなんていうのかな、そういうのって悪くな―――のようなドキドキ感は至近距離からぶん殴られて滲んできた鼻血と一緒にキペに別れを告げてゆく。


 キペはニポにとって、三下なのだ。


「ほぐ・・・に、ニポ。・・・僕、顔腫らしてばっかりなんだよ?」


 一番ケガをしているキペに運命は手加減なしだった。


「あぁ、キペさん・・・でも、確かに自分でやるより誰かに任せた方が思い切りがついていいですね。自分だと手加減してしまいそうですし。

 ・・・あの、お兄さま、私を、その、傷つけてください。もう、好きなように。ええもちろん。いいのよ、そう、ダメ。もっとよ、もっと、そう、わかる? イヤじゃないの、そう、もっとよ、そしてその調子でもっと私を、もっともっとめちゃめちゃにしてー――」

「せいっ!」


 それ以上はリドミコの前でしゃべらせたくなかった。

 予想以上にアグレッシブなシクロロンの解放だけはどんなリドミコであれ見せたくなかった。

 だので手首の表っ側をざくっと切りつけるアヒオだった。


「あひゃん・・・それも、いい。」


 そして妙に色気を出してくるシクロロンに目を奪われていたヤアカの手もざくっとやる。


「どひゃん・・・まだ何も言ってないのですがっ?」


 あ、そうだったすまないなとりゃっ、と言ってサムラキの手も切る。ちょっとした通り魔だ。


「いてえつの、いてえっつの、いてえよ。」


 なんだかんだと言ってもやはり、たかだか一滴ばかりの血を流すということは痛いことなのだ。戦で争い命を奪うということはその延長線のずっと先にありこそすれ、決して遠くない位置にある現実だった。


「ぬんっ!・・・あとは、リドだけか。」


 そして自分の腕を切るも、さすがにその少女にだけは刃を立てられない。

 他の者に傷つけさせることも嫌だったが、己の手でなど不可能な所業だ。


「あの。・・・お兄さま、私、縫い針を持っているんですけど・・・」


 むおんっ!とアヒオは目をひん剥く。

 おめソレさぎに言ってくんち、とでも言うように。


「・・・ほ、ほぐん。あれ? じゃ、僕は殴られなくても済んだのかな。」


 むおんっ!とニポは白い歯を剥く。

 なんか文句あんのか三下、とでも言うように。


「・・・お前らには何かこう、緊張感というものがないのだな。・・・お、上手いな、シムのシクロロン。」


 うるさい連中は放っておき、シクロロンはちゅ、と血管に沿わせて針を刺す。

 痛みはあるものの、顔を殴るやら腕を切るやらよりよほど効率的に血を流せた。そしてなんだかんだで血が流れなかったキペとダイーダも同じように針を刺してもらい、ようやく七つの苔むす木皿の水にそれぞれの血を溶かし入れることができた。


 世紀の一瞬もグダグダな二度手間に感動をむしり取られた形だ。


「ふよよよー、さー来るかい? え? 〔魔法〕かい? それとも妖精かい? ササの妖精かい? あたいお姫さまみたいになれるかねー? ね、どうするチペ、あたいお姫さまとか魔法使いになったら。きしし、なあチペ、夜な夜な舞踏会なんぞ開いてはササをあおってちやほやされたらチペ、あんたどうしちゃうんだい、ねえ? あたいってばこう見えてフリフリのドレスが着てみた・・・

 なんだいっ! 何にも起こらないじゃないのさっ!」


 クレームから寝言までそのすべてを受け入れるのが『ヲメデ党』党員・キペの勤めなのかもしれない。彼が石像のようになってしまったのはきっと、心を守るためだろう。


「ったく徹頭徹尾うるせー女だな、ちったぁ待ってみろ。そんでおまえさんの寄りかかってるキペを見てみろ。半ば放心状態じゃねーか。大事にしてやれよ、ったく。」


 そう言いながらも何かが始まるのを待ってみるも、その扉が開く気配はなかった。


「おかしいねぇ。これで合ってるはずなんだけどなぁ。何か間違っていたかい、見えざる者のリドミコちゃん? 


 あ・・・・・・そういう、ことかぁ。」


 とそこでずるずるずる、ぱたん、とサムラキが崩れるようにして倒れる。

 それに続いて背の低いダイーダとヤアカもとろんとした目になり膝をつく。


「え、あれ? 皆さんどうしたんですかっ?」


 同じく背の低いリドミコもフラフラとし始め、そのけだるさを確認すると話し出した。


「血を落としたからまばゆい光に包まれて、という仕組みではない。お前たちはどうやら勘違いしているようだがな、ここはもう、リバイン・ハウ、ルド、の中な、のだ。」


 そう不敵な笑みを浮かべるリドミコもサムラキたちのように体を横たえる。


「ここが風の届かない地下ってことに気付ければ、もう少し早く、理解できたかもねぇ。まさかこ、んな形で血に反応す、る《ロクリエの祈り》があった、なんて。ボクも勉強不足だ、った、かね、ぇ・・・」


 そんなエレゼのぼやきを聞き届けるより早く、一同は静かな眠りについた。

 それをまるで祝うかのように瞬き続ける苔の光に包まれながら。


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