第23話

翌日の朝。

 俺達は隣町の駅のホームに居た。理由はリリア達を見送る為だ。

 あと数秒もしない内に電車が来る。

「ありがとうね」

「ありがとうございます」

 リリアとユリアさんは俺達に言った。

「こちらこそありがとう」

「離れ離れになっちゃうの?」

 トムが震えた声でリリア達に訊ねた。

「そうだよ。でも、大丈夫。きっとすぐに会えるよ。と言うか、会いに来るよ。逆に会いに来るって言うのもありだよ」

 リリアはトムの頭を優しく撫でた。

「どうするの?」

「え、ちょっと考えさせてくれ。色々あるから」

 いきなりの問いについ驚いてしまった。

「……うん、分かった」

「偉いね、トム」

「偉い、偉い」

 電車がホームに近づいて来る。それはリリア達との別れが近づいている事を意味する。なぜだろう。胸の中が焦げていくような感覚がする。こんな感覚初めてだ。

 ……寂しい。ふと、そう思った。

 俺はリリアと別れるのが寂しいのか。なぜ、寂しいんだ。一緒に居たからか。一緒に居る時間が心地よかったからか。大事な人だからか。

 ……大事な人。そうか、リリアは俺にとって大事な人になっていたんだ。

 電車がホームに止まった。そして、電車のドアが開いた。

「これでお別れだね」

 リリアは寂しそうに言った。

「そうだな」

 このままでいいのか。このままで別れていいのか。いや、また会えるじゃないか。

 リリア達は電車に乗った。

「バイバイ」

「さよなら」

 リリア達は別れの言葉を言う。

「バイバイ、二人とも」

 トムが二人に手を振る。

「…………」

 電車の発車音が鳴り始めた。ドアが閉まり始める。

「ジェイム?」

「……リリア、好きだ。またな」

 勝手に口が動いた。……頭で考えた言葉じゃない。感情が言った言葉だ。

 ……なんだろう。無茶苦茶恥ずかしいが後悔はしていない。

 ユリアさんは驚いた顔をしている。

「ジェイム、私も好き。またね」

 リリアはニコッと笑った。

 二人とも思っていた事は一緒だったらしい。それに二人とも心が繋がっている。

 電車のドアが閉まった。そして、ホームから離れていく。

「行っちゃたね」

「そうだな。でも、また会えるさ。いや、会いに行こうか」

「うん。絶対だよ」

「当たり前だろ」

 俺はトムの手を繋いだ。

 今回の事件で俺は様々な大事な物を手に入れた。思い出、感情、好きな人。そして、この握っている小さな温かい手を持つ家族を。


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ソウル・リコンストラクション APURO @roki0102

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