第4話 打開 打倒

彼女の情報は真偽に値するか。だがこの状況に右往左往しているのには変わりない

ともあれ攻撃に転じる前に奴の視界から消える必要がある

ジャングルの木々茂みに紛れ身を隠す


(本当に倒す算段があるんだろうな?)


焦ってそんな猜疑心まで芽生えてくる。だが疑っていても始まらない

あの子も俺と同じ身だ。 騙す理由はない


(と言っても。あれと戦いたくねえ…)


前回痛い目を見て恐怖が骨髄まで染みわたっているのを感じた

ゴブリンの群れより絶対に強い手合いだ。そこらのチンピラとは訳が違う


(身をもって体験したんだけど。この装備は本当に機能するのか?)


前の様にサービスでのセーフティ機能は外されている。

防具の防御力である程度は大丈夫らしいが正直未だに信じられない

こんな布装備で本当にあいつの攻撃を受けて平気なのか?と

そう考えるのは良い訳なのかもしれない。未だに行動に起こさず仕方ない理由を探して縮こまっている

怖い。でもどうしようもない。戦わなきゃ。死ぬ!!!


標的を見失い踵を返したギガントオークの背後。そこに全力の一刀を叩きつける


「うあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


裂帛の気合は気合いか恐怖を押し殺す為か


振るった刃の先膨れた肉体に刃が。通らなかった


「な!?」


そしてにやりと薄ら笑いを浮かべるオークが持っている棍棒を身をよじらせて背後に振るう

振りかぶる風圧で吹き飛ばされかねない威力を防御も取らずにまともに食らう


「がぁ!!!!!!」


激痛が全身に蹂躙しのたうち回りたい

痛みと痒みの二重奏。筋肉と骨が打撃により鈍い音を響き渡らせる


「あ…かぁ…!!」


痛い痛い痛い痛い痛い!!だが…骨は折れてない。痛みはあるがケガはない


これが防具の恩恵。木々に当たり跳ね上がりボールのように縦横無尽に跳ね飛ばされたがそれでもまだ動ける余力が残っている

でも。痛すぎていやだ。あの子どうしてるんだ?

まだ時間を稼がなきゃいけないのか? これ以上戦いたくない…

そう地面に倒れ伏して立ち上がるも心は折れている

目の前には俺を屠らんと目を爛々と輝かせているギガントオークが俺を見下ろす

俺じゃこいつには勝てない。甘かった。ゲームみたいに楽しむなんて無理

これは現実だ。いくら馬鹿げていても現実だ。俺の体と命はひとつだけでリセットボタンもハッピーエンドもない

殺される。ただ無常に、殺されるだけ。


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呼吸を殺す。決して悟られてはならない。

囮にしているようで気が引けるが彼の提案だ。私は全力でサポートするだけ

人差し指と中指で振り絞る弓弦。番えた矢を目いっぱい引いて軋みを上げる

呼吸は一泊。弓道をやっていた感覚を思い出す

勝負は一回。外せない…!!!


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殺される。そう思った刹那銀色の流星を見た

光り輝くのは一瞬でたどり着くのも一瞬だ

俺という標的を前に舌なめずりを晒し、それ以外の標的に目もくれていないという失態

驕りか怠慢か。どちらにしても―――――――――――

弓なりにしなった強弓から繰り出される一撃は俺の背後から一射されて駆け抜ける

そして奴の鼻頭へピンポイントの直撃した


「GSAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGGGGGGGGGGG!!!!!!!????????」


弁慶の泣き所。足の小指を角にぶつけたように巨体を持つギガントオークが痛みでもだえ苦しんでいる

弱点とは鼻のことか…!


「今だよ!!!」


そこ声ではっとした。そうだ俺がとどめを刺さなきゃいけないのか

すかさず剣を取り奴の脳天へ切っ先を叩きつける


ザクンっと音を立てて眉間に貫通。先ほどの脂肪の壁のない急所はあっさりと攻撃が通ってオークは血を吐き出し身悶えしたのち絶命した


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=====


「終わった…」


「お疲れ様。倒せたみたいね」


「うん。君のおかげだよ」


「にしても…愉快な吹っ飛び方してたねぇ!ビリヤードかって思ったわ」


「お前な…生き死にかかってんだぞ…」


冗談にしても不快だ


「え?これって夢でしょう?」


「夢だけど夢じゃないの。ここで死んだらガチでゲームオーバーなんだよ」


その発言から彼女はまだ俺と同じく経験が浅くダメージを受けていない様子だ

今回の戦いもゲーム感覚で行っていたのだろう


「まさか。まあ楽しかったから良いですけど

またやりたいですわ」


「そういってられるのも今のうちだけだ

それより君は誰だ?ほかにも同じ人はいるのか?」


「質問多い。それに初対面なら自分から話すのが常識では?」


「それもそうだな。俺は」


とそう名乗ろうとした時に間が悪くタイムアップが来たようだ

白い空間へ戻されて互いに自己紹介をせぬまま終わった



***********



「嫌がらせなタイミングだな」


『ソーリー。まあ逢引きはまた後でな☆』


聴かれては困る…という雰囲気には見えなかった

やはりただの嫌がらせだろう


『おめでとう。経験値は50。あと107でレベルアッポウ!!

ゴールドは700。これで良い装備揃えな☆』


「ずいぶん太っ腹だな」


『OHOHOH!ミッションの難易度でもっとサービスしちゃうぜ☆

それにしてもクリアできて良かったな!ギガントオーク

逃がしてたら都市に大変な被害だYO☆』


それは大げさな気がする。あの程度なら現行兵器で駆除できるだろうし


『オイオイオイ!何のためのその武器と防具だとおもってんNO!!

兵器が効かないからそんな武器があるんだRO!!』


「つまり…逃がしたら俺が何とかしない限り…」


『イグザクトリー!!・・・アポカリプスっちゃうぜ?』


「・・・・・・・・・・・」


『まー落ち込むなって!逃がしてないしこれからそうしてきゃいいのサ!

逃がした時のポイントも高いぜ☆倒せればだがな☆』


そういう問題ではない。俺のミスで誰かが死ぬ。それは一般高校生には耐えられない重責だ

夜眠るたびにミッションが行われる。そして失敗すれば現実世界に現れる


本当に、質の悪いゲームだ…!!

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インビジブル 竜翔 @RYUSYOU

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