第3話 チーム戦
『ハロー。プレイヤー。じゃなくて功でよかったんだっけ?』
「・・・・・・・・・・・・」
前回のミッションを思い出し憂鬱な気分のまま俺は学校から帰宅し
夜睡眠に入って今白い空間の中謎の声に招かれてここにいる
装備は自動的に持ってくるとわかっていても警戒は怠らず防具と武器を装備して睡眠に入った
『オイオイ。何しょげてんだよユー?前はたまたまうまくいかなかっただけジャン☆
ミーも言い過ぎたよ。ゴメンゴメン☆』
「命がけなのに他人事なのな。いや他人事だからそんなテンションなのか」
『ザッツライト☆ミーは観客兼サポーターサ☆
なるべく死なせないよう努力はするからどんどん質問してくれたまェ!!』
「じゃあ質問。装備は着ていなくてもここに持ってこれるのか?」
『イエースイエース!そのための箱ちゃんよ☆
流石にノーアームで戦いは強いないぜ☆
こっちとしても戦って勝ってほしいしな☆』
まあむしろ着ている場合なら誰かが起こしに来た時不審に思われるので当然だろうが
裸一貫で挑む場合も考慮して細心の注意を払い着てきたのだが杞憂だったようだ
「わかった。質問はもういい」
『あり?もっとクエスチョン来ると思っていたのに意外だ
どういう風の吹き回しカナ☆』
「簡単だ。俺の質問したいことにお前が答えられないからだ
お前の正体。このゲームの目的。誰がこのシステムを作ったか
聴きたいことはあるが答えないだろうし何より俺に有益じゃない」
謎技術に異世界の話。興味は尽きないがそれは当座、俺には関係ない話だ
知ったところで生殺与奪を握られた時分だ。自由など論外だろう
『いいねぇ、鋭いよキミぃ。
確かにそれらは答えられない。ガイドラインに抵触するからね☆
ミーも強い立場じゃないのサ☆
じゃあこれからキルするエネミーを紹介するゼ!
『ギガントオーク』一体。こいつは強敵だぜェ!
言っておくが前回みたくサービスはしないぜ?
生命保護はもう使えない。初回特典だからネ☆』
それは先刻承知だ。残機無限ならばゲームの意味がない
そしてその為に俺は武器や防具の使い方を知っておく必要があった
現実でも使えるのだがいかんせんいい場所がない
見られればアウトならば東京で人の目が付かずなおかつ監視カメラもない場所など限られている。命がかかっているので慎重に期すのは当然だ。しばらくはミッション内で戦いを慣らしておこう
浮遊感が全身を包む。異世界への転移が始まる
そして前回同様声は言う
『レッツ。異世界サバイバー☆』
陽気な声に癇が触りあいつに向かって中指立てながら
肉体は別の世界へ移動する
******
今度は森林地帯。目標のギガントオークは名前からしてボスクラスとみていいだろう
だからこそその体躯は大きいはず。幸い森林地帯は遮蔽物が多く隠れるのに適している
あらかじめウィンドウを出しギガントオークのいる箇所をマークする
居場所はここから20キロ圏内。少々暴れても気づかれないだろう
ミッションにはボーナスという特典がある。そして目標だけ狙うというのはリスクが大きすぎる。ならば出る答えはひとつ
「周りの雑魚を蹴散らして経験値とボーナスをもらう」
装備に戦う意思を巡らせて筋力と殺傷能力を上昇させる
さて、どこまで動けるか。初期装備なのであまり期待できないが
まずは跳躍力。足に力を入れジャンプする。すると大体20メートルは地面から離れた気がする
地面にあった小枝を盛大に踏み鳴らし着地
フィードバックらしきものはない。確かに防具としての役割は果たしている
剣についてはどうか。巨木とまではいかない普通サイズの木に向かって横に薙いだ
一刀両断。何の抵抗もなくあっさりと倒れる木と共に切り株が完成する。
前回は無様を見せた。そして謎声はなるべく生き残るようにサポートしてくれる
ということは無理難題はなく倒せる保証があるから戦いに赴かせるということがわかる。つまり今回も下手を打たなければ勝てる相手というわけだ
少し、ワクワクしてきた。GANTZみたいにムリゲーではなくちゃんとゲームとして役割をはたしているならばこれは好機とみていい。
リアル感覚で味わえるゲームとして楽しむことができる
派手な音を立てたせいで周囲に斧を持ったゴブリン10体が集う
前回は後れを取ったこととあの無様の憂さ晴らしのため
先手必勝。剣を引き抜きゴブリンに向かって唐竹割に切り裂いた
牛刀鶏割というように簡単にゴブリンの体を集中線に切り分ける
一体撃破。
その隙を突かれ背後からくるゴブリンの斧をモロに受ける
だが痛みはなくはじかれたような音とともに
ゴブリンの体幹が揺らぐ
『ギャゴ!??』
ゴブリンの攻撃より防御が上回っているようだ
予想外のことでのけぞるゴブリンに向け剣を振るい
はらわたぶちまけて胴体を泣き別れにする。
つんざく血と肉の匂いに胃液が出そうになるがこらえ
慣れるよう努めて切り替えていく
そうだ。こんなバカげたゲーム(?)に巻き込まれたんだ
楽しまなきゃ損じゃないか。俺が日々求めていた非日常がいま手の中にある
両手を開いては閉じを三度繰り返して三人がかりで来るゴブリンに向かって
一閃。
残り六体と思考するころには背後のゴブリンは死屍累々に転がっているだろう
まき散らした臓腑が地面に落ちる音を聞いた
感覚も抵抗もほぼないに等しい。プリンにスプーンを差すようにまったく手ごたえがない。だからこそ現実感も薄れゆく。高揚感と恍惚、多幸感が全身を支配する
絶対なる強者に立ち、弱者をなぶる快感のみが俺にほとばしり
逃げていく6体をジャンプでその上を通過し着地。仁王立ちで立ちはだかり動揺した奴らを見て嗤ってしまう
数秒も経たずに雑魚6体を屠り現実に帰るころには冷静になりハイな状態は収まっていく。勃起している。射精とかはしないが収まるまで待とうと思った時
ズシンッと地面が揺れる。自身ではなく等間隔に響くそれは足音だ
大きななにかが走っている。大樹を小枝の様に薙ぎ払い何かを追いかけている存在
「ギガントオーク…!??」
マズった。ゴブリン狩ってたから物音でバレたか。そう思ったがそれなら目標は俺のはず
だが向かっている先には黒髪の女の子
格好を見れば俺と同じ境遇の人物らしい
ギガントオーク。レベルは分からないが今の俺では到底太刀打ちできない相手だろう
かといって放置するわけにもいかない。
アイツが追いかけているのは女の方だ。意識は全くこちらに向いておらず
あのまま女を囮にすればうまく立ち回れるかもしれない
だけど。うーん。それだと後味悪いし
むしろ彼女と一緒にギガントオークを攻略した方が得策か?
そうこうしている内にギガントオークと女の距離が縮まっていく
はぁ…とため息をついて
「よし、助けに行くか」
そう言ってオークの後ろを追いかけ疾駆する
背後はがら空き。クリティカルを狙うために首に一閃お見舞いする
首筋に朱線が走るも攻撃は軽微だ。不意打ちでクリティカル狙ってコレとは
間違いなく難易度設定が間違っている
女も振り向いたようで意外な助け舟に驚いている
後ろからの攻撃に意識が俺に向けられる。その際の殺気と敵意に彼我の差を思い知らされ身じろぎする
─殺されたら本当に死ぬ。残機はない。コンテニューの出来ないクソゲー
そう脳裏に走馬灯のように流れた言葉を刹那に伏せ
振り向いた瞬間に恐怖を戦意で塗りつぶし双眸めがけて横一文字に切り払う
ダメージは僅少であるが視覚を奪うには十分な役割を果たし
痛みでオークも目を両手で抑えて隙を見せる
そしてすかさず
「オイ君!!戦えるのなら手伝ってくれ!!
俺だけじゃこいつは倒せない!!!」
現状事実、こいつを倒す決定打が全くない
スキルも何もない防護服と剣だけで巨人相手に大立ち回りなどできるはずもない
ならば少ない手ではあるがこの子の助けが必要だ
持っている武器は弓矢。攻撃力には心もとないが…
だがあいつは前に言った
『攻略出来ないミッションを与えない』
ならば今の状況で打開策は必ずある
目をやられたオークがあたふたしている間に俺は彼女の使えるものを訊き出す
「君は何が使える?そしてジャイアントオークが攻略対象なら俺も同じだ
だから君の戦力を知りたい。俺は見ての通り武器と防具だけだ
何かあいつに有効な手を知らないか?」
そう都合よくはと思いながらも意外な返答が来た
「えっと…私の毒矢で動きを鈍らせたりあいつの弱点を撃つことができる
ただ私だけじゃそれができなかった。だから私からもお願い
アイツを倒すの手伝って」
それはつまり奴の弱点を知っているという意味か
そしてそれに失敗し敗走したというのがいきさつらしい
それは仕方がない。攻撃武器が弓矢だけなら白兵戦に向いていない
遠距離からの一射のみが彼女の戦闘スタイルで本来タンクや守備を固める存在が必要不可欠な武器チョイスだ
だが同時に俺にとって都合がいい。俺自身一人で倒すのは困難だろう
「わかった。俺が時間を稼ぐ。君はあいつを倒すための準備をしてくれ」
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