Phenomena@fa(?)e
(?)=c
「私の勝ち」
彼の声と共に布が裂ける音がした、気がした。
「君を見つけるのに貴重な子を使ってしまったじゃないか」
彼はクマのぬいぐるみ、所謂テディベアを片手に現れた。
「まあ何にせよ結局この子に頼ることになったか、うん」
色褪せ、薄汚れた子グマ。その腹部は大きく裂け、内容物が飛び出している。そう、文字通りのはらわたが。
(?)=d
そこにいたのは恐ろしく無表情の人の形。生命の気配はなく、底なしの悪意と限りない祝福が滲み出ている。黒ずんだ白装束に朽ちた帯を締めたその身体は朱色に塗られた一本の矢に貫かれていた。
(?)=k
夢現といった様子だが、今は夢幻にうつつを抜かしている場合ではない。この方法なら大丈夫。私たちは永遠になれる。私は君と指を絡めた手に力を込める。離れたくない。はなしたくない。君と生きていたい。今すぐ死んでしまいたい。
(?)=m
「ひとりかくれんぼってあるだろ。あれの応用だよ。一度ゲームが始まれば、鬼はまさしく鬼となる。どの次元であろうと、たとえ隠世だろうとね。この手法はリスクが大きいし鬼の入手も難しいのだけど、友人の窮地となれば出し惜しみなんかしていられないよ。ま、私の手腕があってこその解決なんだけどね。」
友人。彼は私を友人として認識している。私にはそんなもの一人だっていないのに。
「まあ今回は隔離世と言った方が正しいのかもしれないね」
意味がわからない。それでも納得はした。理由はわからない。何も、わからない。
Error:(?)=n
自分の感情を制御できず、自らの手綱を自らに奪われてしまう。だが彼女の自我を奪い取ったのもまた彼女自身だ。彼女には類い稀なる運命が待っていたわけではない。自身にとって最善の行動と思考を積み重ねた、それだけ。ただ自分と自分とを倒錯してしまっただけ。雁字搦めの意思はいずれ暴れ出す。そして彼女の場合それが目に見える形で___彼女には見えないのだが___顕現した。奇なる鬼として。悲鳴をあげる姫君として。その存在もまた彼女自身であることに変わりは無いのだが、他の自身とは異なり生まれ落ちたその瞬間から倦まれていた。疎まれていた。
(?)=r
彼の指先から黄金色の火花が迸り、仕事を終えた子グマは黒煙に消えた。それが仲間への労いなのだと彼は笑うが、どうにも気分が悪い。そこにあった命(のようなもの)を消し去ってしまったような気がする。
(?)=t
自身を取り戻した彼女の選ぶ道。鬼の居ぬ間の、選択。
(?)=z
「ここは蛇の中だ。全く、こんなに居心地の悪いところはないね」
意味不明なことを呟く彼。
「こんなところ早く出よう。君、料理は得意かな?久々に他人の手料理を食べたいな。」
そんな言葉を聞き流しながら、私は思わず真っ黒な地面に転がっている件の人形を拾い上げた。突然目の前に和服姿の少女が現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます