第12話

元の世界に戻ったFEBRUARYとJUNEは、人間の戦場で得た情報を整理しながら歩を進めた。荒廃した人間の戦争の現場で目にした人間の憎悪、悲しみ、そして無数の命の輝き。それらの記憶は、二人の胸の奥で鮮やかに甦る。JUNEは小さく息を吐き、手元の装置を操作する。「これがあれば、歴史の書き換えは可能だわ。介入した戦争の記録も、すでに私たちの操作範囲に入っている」


FEBRUARYは頷き、遠くに広がる魔法都市の景色を見渡した。表面上は平穏に見える街だが、彼らは知っている。この街の背後には、無数の悲劇の連鎖が潜んでいることを。彼女たちはその連鎖を断ち切るため、まず人間の歴史改変から着手することに決めていた。


二人は、集めてきたアイテムを慎重に並べる。――それらは、時空データバンクへのアクセスに必要な鍵となるものだった。FEBRUARYが手を伸ばし、複雑な符号と光の連鎖で結ばれた鍵を起動する。青白い光が二人の手元で蠢き、空間に細い線を描きながら時空の扉を開いた。


「準備はできたわね」JUNEは淡々と言うが、その目は興奮に光っていた。二人は静かにデータバンクに足を踏み入れる。膨大な歴史書が、光の書架のように並び、未来から過去までのあらゆる記録が静かに息づいていた。その中で、先ほど介入した人間の戦争の記録を呼び出す。


「ここから書き換えを始める……」FEBRUARYの指先が、古びた歴史書のページをなぞる。ページは柔らかく光を放ち、書き換えの準備が整った。JUNEは周囲を警戒しながらも、心の中で戦場での出来事を反芻する。「あの時の怒りも悲しみも、無駄にはさせない……」


書き換え作業は、予想以上に緻密だった。戦争の勃発、決定的瞬間、各人物の思惑――それらをただ削除したり書き換えたりするだけでなく、因果の連鎖に影響を及ぼさないよう慎重に調整する必要がある。光の文字が空間に浮かび上がり、二人の指の動きに合わせて微細に変形する。時計の針が一周する間に、戦争の記録はゆっくりと修正され、憎悪や悲劇の連鎖は少しずつ弱められていった。


「完了……」FEBRUARYが低く息をつく。書き換えられた歴史書を見つめ、静かに微笑む。JUNEも隣で同じように微笑むが、その笑顔には覚悟と責任の重さが刻まれていた。書き換えによってもたらされる未来の影響は未知数であり、それが正しい方向に向かうかどうかは、まだ確かではない。


二人はデータバンクから退き、扉を閉じる。光の扉は静かに消え、再び現実世界の感覚が戻ってきた。外の空気は、戦場の硝煙とは無縁の穏やかさを帯びている。FEBRUARYは手を伸ばして深呼吸をすると、微かに変化した世界の空気を感じ取った。「少なくとも、最初の一歩は踏み出せた」


JUNEは頷きながらも、遠くの街並みを見つめる。「これで終わりではないわね……これから、歴史の微調整を続けて、連鎖する争いを防がなくちゃ」


二人の目の前に広がる街は、静かで美しい。しかし、彼らの心の奥底には、介入の重さと責任が確かに存在していた。歴史を書き換える力――それは同時に、未来を左右する大きな刃でもあった。


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魔法と超能力の正しい恋愛と戦い/魔法封印戦争 紙の妖精さん @paperfairy

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