第12話

翌日。

 俺達は昼食を終えて、ホテルの受付前に居た。

 受付嬢が受付カウンターの上に魔法陣がプリントされた紙を置いてくれている。

 現時刻13時59分55秒。

 ……56、57、58、59、14時になった。

 紙にプリントされた魔法陣が発光した。そして、次の瞬間。紙の上にはあて先や中身が書かれた小包が現れた。

 俺は小包を手に取った。

「……すーごいねぇ」

 エマは驚いている。仕方が無い。俺もこのサービスを初めて利用した時は衝撃を受けた。魔法はこんな使い方もあるのだと。

「そうだな。ありがとうございます」

「はい。それではこの紙は破棄しておけばいいでしょうか?」

 受付嬢が訊ねてくる。

「はい。お願いします」

「かしこまりました」

「じゃあ、失礼します」

 俺達は泊まっている部屋に向かう為にエレベーターに乗った。

 俺は自分達が泊まっている部屋がある5階の階数ボタンを押す。エレベーターは上昇し始めた。

「ねぇねぇ、ジェード」

「どうした?」

「へやについたらそれあけてもいい?」

「いいけど、壊すなよ」

「……こわさないよ。だって、エマだよ」

 エマは自信満々に言った。

 どう言う理屈だ。そして、その自信はどこから出てくるのだろう。訊ねても時間がかかるだけだから訊ねないが。

「そ、そうだな」

「でしょ」

 エレベーターが止まり、ドアが開いた。

「はやくもどろう」

 エマは飛び出そうとした。

 俺はエマの手を掴んだ。きっと、エマは泊まっている部屋まで走るに違いないと思ったからだ。

「走るな」

「……はーい。ごめんなさい」

 エマは反省しているようだ。

 俺達は泊まっている部屋に戻った。

「ジェード、はやく」

「はいはい」

 俺はエマに小包を渡した。

 エマは小包の包装紙を破り、中に入っていた箱を開けた。中にはメモリーストーンと専用の機械と説明書と二つ折りの紙が入っていた。

「このまえ、おみせでみたやつだ」

「そうだな」

 俺は二つ折の紙を手に取って開いた。

 紙には「先日は助けていただきありがとうございます。これはささやかなお礼の気持ちです。また、お店に来てください。サービスさせていただきます。ボイドより」と書かれていた。

「……ボイドさん」

 お礼をする為に絶対にまたあの店に行かないといけない。

「どうつかうのかな」

 エマはメモリーストーンと専用の機械を眺めている。

「ちょっと待ってよ」

 俺は説明書を読む。説明書には「メモリーストーンを専用の機械にセットし、映し出す範囲を設定し、その後、投影のボタンを押してください」と書かれている。

 俺はメモリーストーンを専用の機械にセットして、投影する範囲を設定した。

「エマ、カーテン閉めて、電気を消してくれ」

「うん。わかった」

 エマはカーテンを閉め、電気を消して、俺に駆け寄って来た。

「じゃあ、押すぞ」

「エマにおさせて、おさせて」

 エマが頼んでくる。

「仕方ないな。ほら、このボタンを押すんだぞ」

「うん。キッキ、みててね。エマがおすからね」

「キーウ」

 ネックレスの姿になっているキッキが鳴いた。

「ぽっちとな」

 エマはメモリーストーンの専用の機械のボタンを押した。すると、専用の機械から夜空の映像が部屋全体に映し出された。まるで、翼を得て、空中で星を眺めているかのような感覚だ。

「すーごい」

「キーウ」

 エマとキッキは部屋中を楽しそうに見ている。

「あ、ながれぼしいっぱい」

 エマは壁を指差した。エマが指差した壁には流星群が映し出されている。

「本当だな……エマ、カーテンを見てみろ」

「カーテン……わぁーオーロラだ」

 カーテンにはオーロラが映し出されている。このメモリーストーンは傍にある物を最大限に利用するみたいだ。

「綺麗だな」

「うん」

「キウー」

 俺達は少しの間、部屋の中の夜空を楽しんだ。

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