第22話 話し合いの後に……
あーたーらしーいー朝が来た♪きぼーうのあーさーだ♪
「爺ちゃん、今日は更に動きが良いな」
頭の中で懐かしい曲を思い出しながらストレッチをしている俺と爺ちゃん。ついでに源。
一応、朝の日課は続いているんだぜ。……体力ついたかわかんないけどさ。
何せ目の前で元気な爺ちゃんと、走るのが大好き源に先導されていればさぁ……しかもその一人と一匹、俺より体力あるし……!
「今日はジャンがいないからと言って距離を短くしたりしないからなー。しっかりついて来い!」
「わんっ!」
気合いの入っている爺ちゃんの声に元気な源が返事してるけどさ。俺はちょっとげんなり……
ただ、爺ちゃんも嬉しいんだろうなぁ。俺だってジャンさん達の喜ぶ姿を想像するだけで心があったかくなったし。
だけど……
「爺ちゃーん!ちょっとスピード落とせってぇー!」
「若者がなーにを言ってる!源をみろ!」
「犬の体力と一緒にすんなって!」
……うちの爺ちゃんはやっぱり規格外だ。こんな元気な65歳他に居ねえよ。
でもさ。思いっきり走ってキツイのを乗り切れば、後は気持ちいいんだよ。ダラダラ汗掻くのだって、なんかスッキリするし。
「コウ。余裕が出て来たか?」
風が気持ちいいと思っていると、隣にいつの間にか並走していたジャンさんが声をかけて来たんだ。
「ジャンさん、はよ。もう良いのか?」
今日はまだヤレンさんやディグレンさんと話し合っていると思ってたけど。
「ああ、今ヤレンとディグレンが自分達の家に戻って行ったんだ。本格的に睡眠と休養をとるらしい」
「そか。なら良かった」
走りながら見るジャンさんの横顔が、明らかにスッキリしたものになっていたのは俺も安心した。
だけど、走りながら話すのって体力使うんだって……!
「おーい、洸。もう走らんのか?」
「わん!わん!」
未だ走り続ける爺ちゃんと源を見るも、俺は限界……!ぜーぜー言いながら木に寄りかかって休憩中なんだ。
ジャンさんはそんな俺に付き合って一緒に休んでくれている。そして、ジャンさんは俺をみると、ポンと頭に手を置いてきたんだ。
「洸、ありがとう。あの二人の為に色々揃えてくれたんだってな」
「ん?そんなん当然だろ?ジャンさんの仲間なんだから」
「仲間……か。良いもんだな、仲間って」
噛み締めるように言うジャンさんに、赤犬種の苦悩を垣間見る俺。
……ジャンさんはずっと一人で家族を守って来たんだよなぁ。それって、結構苦しいと思うけど。期待が裏切られるよりは良いって思ってたのかな……?
でもさ——
「だろ?仲間になったら一人で頑張んなくて良いんだぜ?それに、勝手に出て行こうとするのも駄目なんだぞ!」
もう一人で抱え込まなくても良いって事は、なかなか実感しないんだろうなぁ。
なんとなくピンッと感じた事を言っただけだけど、どうやらそれが図星だったみたいでさ。
「……参った。……洸は、どうしてそう思った?」
驚いた表情のジャンさんに、俺は当然だろ?と言い返す。
「だってさ。普通に考えれば、戦力が増強されたら次に何をするか?って考えつくもんだって。大方、ヤレンさんやディグレンさんと一緒に他の仲間を助けに行くんだろ?でもって、ケイトさんとトーニャは此処に置いて」
「………そうか。読まれていたか」
「俺だって気付いたんだぜ?って事は……」
「ふむ。やはりか?」
「わふ?」
爺ちゃんがこっちに向かっていたのがわかったから、爺ちゃんだってそう思っている筈だぜ、と言おうとしていたら意外に早く側に来ていた爺ちゃん。
うん、源はわかってねえな。走らないの?って顔しているし。はいはい、いい子いい子。
俺にじゃれついて顔を舐めてくる源を落ち着かせて、ジャンさんを見ると、爺ちゃんに困った表情で尋ねていたんだ。
「チョウジュウロウも予想していたのか?」
「言っとくが……ウチの家族は、相談も無しに何処かへ行こうなんぞ許さないからな?それに、洸は今気付いたみたいだが……昨日の時点で繁と遥さんと俺で、既に話しあっていたんだ。凛は聡い子だから、既に気がついているだろう」
「ん?爺ちゃん、それって俺が気付くの遅いって言ってねぇ?」
「まぁ、気にするな。で、ジャン達はどう行動する事にしたんだ?」
話がはぐらかされてちょっと面白くなかったけど、まぁ、仕方ない。それよりもジャンさん達の考えを聞くほうが優先だな。
「……あの二人の体調が戻ったら情報収集に動きだそう、と言う事になっている。勿論、迷惑はかけないつもりだが……」
「ふむ、ケイトさんやトーニャには?」
「二人には話していない。後で書き置きでもして行こうと——」
『はーい、もう無理よ?ケイトさん聞いちゃったわ』
「うえ?母さん?っつか、爺ちゃん。いつの間に携帯かけてたんだよ」
「さっきの間だ」
しれっと爺ちゃんが携帯をポケットから出して見せたんだけど、しっかりスピーカーモードになっているし。
『もう!ジャンったら私とトーニャが寝た後に話していたのね!黙って行ったらもう家に入れてあげないんだから!』
お、ケイトさんもお怒りのご様子で。
「ケイト……だが」
『あのね?何年貴方の妻をやっていると思っているの?しかも、遥さんなんて私が来た時にもう動いているくらい、貴方の性格なんてバレバレなのよ?』
『そうだな、ジャン。それに仮にも恩人である俺達に黙って行くなんて、三人とも水臭いなぁ』
お?父さんもいるんだ。って事はリビングでまた聞いているんだろうな。じゃ、トーニャは凛が構ってやっているのか。
「シゲルまで……」
『よし、この案件はさっさと片付けるに限る。全員でまたヤレン達の家に押し掛けるぞ!』
「了解!ジャンさん、もう諦めなよ。坂木家に関わったら、黙って行こうなんて無理なんだから」
「だな。仲間とはそう言うもんだ」
父さんが纏めて俺と爺ちゃんがその言葉に同意すると、ジャンさんはクシャっと困った表情になったけどさ。
そうそう簡単に出し抜ける坂木家じゃございませんっての。
そんなジャンさんを連れてヤレンさんとディグレンさんの所に押し掛けて行くと、やっぱり驚いた表情で戸惑っていたけど……気にせずに中に入り、三人は真ん中に座って貰い、俺達で囲むと言う荒技を仕掛けたわけだ。
「さて、全員が揃ったところで始めようか」
父さんが司会の形を取り、始まった第一回仲間会議。
「議題は獣人族解放について。まずは、情報収集だが、意見のある人は挙手をお願いします」
「「は?」」「……やはり」
手も上げずに言葉を発したのはヤレンさんとディグレンさん。ジャンさんに至っては苦笑いをしていたな。
「はい、そこ!意見は挙手の後にお願いします」
徹底した父さんの司会振りに、これは大人しく従った方が良いと思ったヤレンさんが静かに手を上げる。
「では、ヤレンどうぞ」
「いや……その、どういう事なのかわかってないのだが……?」
「はい。ではこの説明はジャンにお願いしましょう。では、ジャンどうぞ」
「ああ。二人共、此処にいる全員を出し抜く事は諦めた方が良い。理由を知って尚我らを責める事もなく、むしろ協力をしてくれるようだからな」
「だが……これは我らの問題であって、迷惑かける訳には——」
「はい!」
「はい、洸。意見どうぞ」
「はい!迷惑なんてかけてなんぼだと思います!」
「はい!」
「はい、凛。意見どうぞ」
「はい!仲間外れは良くないと思います!」
「はい」
「はい、親父。意見どうぞ」
「はいよ。気を使ってくれるならば、恩人をたててくれないかな?」
「はい」
「はい、遥。どうぞ」
「はい。ウチの家族全員支えになるわよ?」
「はい」
「はい、ケイトさん。意見どうぞ」
「はい。置いて行くなんて、許しません」
「あい!」
「お?トーニャ、何かあるかな?」
「ディーもレンもとーちゃもメッよ?」
流石に最後のトーニャの言葉には俺達も参った。全員が思いっきり笑ったよ。
トーニャでさえ、知らないで置いていかれるのは嫌なんだ。それは俺達も同じ。例え知り合った期間が短くても、俺達にとってはもう仲間なんだから。
そんな思いが伝わったのか、ヤレンさんもディグレンさんも俯いて黙ってしまった。ポタポタと雫が膝に落ちているのが見えたからなぁ。
そんな二人をみんなが笑顔で見守る事しばらく、タイミングを見て父さんが仕切り直す。
「よし!では改めて、第一回仲間会議を始めよう!」
おっし!まずは、情報収集方法か!……あれ使えねえかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます