第18話 現在、通話中。

『しかし、トーニャには驚いたな』


「だろ?俺らも焦った焦った!」


「本っ当に危なかったんだよー!」


 トーニャ失踪事件が解決した直後に、ようやく移動を始めた父さんと爺ちゃん。


 今は、皆が聞こえるようにお互いが通話をスピーカーモードにして会話中なんだけど……父さんと爺ちゃんサイドは、父さんが改造バイクで運転しつつ、爺ちゃんがスピーカー通話にして携帯を持っている状態なんだって。


 こちらは、母さんと俺と凛の三人が拠点リビングで寛ぎながら会話中。


 ジャンさん一家は一旦自分達の家に戻っている。なんせ、トーニャが本格的に昼寝に入っちゃったからなぁ。


 あ、でもジャンさんは戻ってくるって言ってたけどさ。


「で、お父さん達の方は魔物が出てない?」


 凛はさっきの事もあってより心配になったみたいだな。携帯かけたまま移動出来ないか聞いたのは凛なんだよ。


 まぁ、俺と母さんもその方が安心出来るから良いけどさ。


『あー……今親父が倒してくれたな』


『必殺!高圧酸性源泉攻撃だ!』


 父さんの何か諦めた声の後に聞こえてきた爺ちゃんの声がなんか楽しそうだな……?


 ところで酸性って酸味があって殺菌効果が高いくらいの成分じゃなかったっけ?


「ねえ、お爺ちゃん。酸性ってどう言う事?」


 あ、凛も疑問に思ったか。


『スキルで酸性成分を更に濃縮させて危険な効能にするんだ。高圧で源泉をだすから、ジュっと焼けてドロッと溶ける感じだな』


「……爺ちゃん、エグい」


『洸、ファンタジーはイメージだろう?だから、やってみたら出来たって感じだな。他にも温泉には放射能泉や硫酸塩泉があるが、効果聞きたいか?』


「……いや。爺ちゃんが強いのはわかったよ」


『洸。親父は面倒だと大規模掘削したり、顔に灼熱源泉水球を固定させて殺すやり方もしているんだ。正直言って、俺は親父を敵に回したくない……!』


『なんだ?繁は効果を見たくなかったのか?仕方ないな……これだからホラー嫌いはグロ耐性が弱くていかん』


『嫌いなものは嫌いなんだって!』


 移動中もコントを繰り広げる二人に笑う俺達。やっぱ、会話聞いていると安心する。


 そうそう。父さんによると、どうやら移動体感速度は約30kmなんだって。


「このままなら、すぐに森抜けれそう?」


『だなぁ、結構順調に来ているからなぁ』


『……繁。そうはならなくなったぞ』


 いきなり爺ちゃんが不穏な事を言い出したかと思うと、なにか声が聞こえてきたんだ。


『……って、まってくれ!』


「何か声が聞こえたよ?」


『……繁、どう思う?』


『見た感じ、物取りには見えない』


 ずっと聞いていると二人は何かに近づき、改良バイクを降りて歩き出したようだった。


『そっちはしばらく黙っていてくれよ?』


「わかった」


 辺りを警戒しながら声をかけてきた父さん。短い返事はしたもののなにかが起こっている事がわかり、更に心配になって互いの顔を見合わせる俺達残留組。


 俺達の心配をそのままに二人が草を分け歩く音を聞いていたら、音がピタっと止まったんだ。


『洞窟だな?』

『ここか』


 と父さん達の話し声他に『……ぅぅ』とうめき声が聞こえてきた。


 人がいるんだ……!


『ディグレン!大丈夫か!』


 うぇ?ディグレンって聞こえたぞ?


 口を開きそうになって手で口を押さえると、凛がクイクイっと服を引っ張って頷いたんだ。凛もやっぱり聞こえたんだな。


『ソイツはどうした……?』


 父さんも気づいているだろうに、敢えて触れない事にしたらしい。


『頼む!ポーションを持っていたら、俺と交換で売ってくれ!』


『なんでお前なんぞ買わなければならない』


『頼む……あんたらには利はないだろうが、俺には他に売るものは無いんだ』


『……ボロボロのお前になど価値はない。むしろ荷物が増えるだけだ』


 おおおお……!父さん、言うねぇ。


『今は!毛の色を敢えて汚しているが、俺は銀狼種だ!奴隷として売れば高値で取り引きされるはずだ!だから……!』


『……そもそも俺達がポーションを持ってなかったらどうするつもりだ』


『確実に持っているのを見て声を掛けた!おそらく、あんた達が盗賊や奴隷商ではない事も見極めた上だ!』


 ん?父さん達がポーション飲んでいたのって休憩していた時だよな?でも、既にかなり距離走ってる筈だけど……?


『繁よ、もう芝居はいいだろう。何より、お前交渉ヘッタクソだからなぁ。なーにを渡す為の言葉を探しているんだか……』


 ため息を吐きながら、爺ちゃんが何かをゴソゴソやっている音が聞こえてきたけど……爺ちゃんぶっちゃけすぎじゃね?


『……こんな状態の奴を放って置くのは、無理なんだって!これでも警戒したつもりなんだけど?』


『警戒するならもっと最初からせい。黙っていれば、何大人しくついて来ているんだか……ホレ、アンタはこれを飲ませてやれ』


『これは……!!助かる!』


 多分、爺ちゃんがポーションを渡したんだろうなぁ。


 だって、おそらく呻いていたのはジャンさんの言っていたディグレンさんと同一人物だと思うし。でもって俺の予想が外れてなければ、話していた奴がジャンさんを売った奴だ。


『これは……!凄い……!』


 ん?奴が何かを感動してるけど、どうした?


『まぁな。これを体にもかけてやれ。で、お前も飲め』


 父さんも奴にポーション渡してるし!いや、ディグレンさんは良いとしても!


『こんな高級なポーション、俺ぐらいで足りるかどうか……』


『ああ、だからお前には働いて貰う。ソイツを連れて行く為に俺達と来い』


「え!!父さん!!」


 やっべ!声出しちゃったよ!いやでも、なんでソイツまで!


『あー……洸にしては持った方か。洸、良いか。この件は俺達が判断する案件じゃない』


『そうだな。洸、後でちゃんと説明するから、今は黙って受け入れてくれるか?こりゃ、ちいっと事情がありそうだからなぁ』


 爺ちゃんまで俺を説得に来たからには、そりゃ仕方ないけどさぁ……


『なんだ!どこから声が!?』


 ……あ、奴が驚いてるや。父さんフォローよろしく。


『気にするな。むしろその後ろの奴と一緒にコレ身につけろ』


 うん?フォローしてくれたのは良いけど、何か渡したか?


『身につけて魔力を流すと……おお!綺麗になったな二人共』


 爺ちゃんがそう言ったって事は、俺が付与した洗浄魔石を渡したみたいだな。万が一汚れたらすぐに使ってくれって言ったけど……もしかして結構匂ってたとかしたのか?


『だな。これで連れて行ける』


……推測当たってたな?これ。父さん、結構綺麗好きだもんなぁ。


『……済まない、ヤレン。今はどんな状況なんだ?』


『ディグレンは心配要らない。この人達がお前を助けてくれたんだ。そして今からこの人達について行く事になっている』


 どうやら、奴はヤレンって名前らしい。何かを察したディグレンさんがヤレンに問いただしているけど、そこは見かねた爺ちゃんが間に入ったんだ。


『とりあえず、ここじゃ落ち着いて話も出来ん。一先ず移動する。繁、何かいい移動案あるか?』


『確か、浮遊魔石あったよな?今からサイドカーならぬ後続浮遊車両簡単に作って、連結して飛んで戻るのはどうだ?』


『有りだな。まだ体力的に二人共問題だろうから、それが安心だな。どのくらいで作れる?』


『まあ、見てな』


 どうやら父さんがチャチャっと木で箱型で浮く乗り物作ったんだけど、結構いい感じらしい。


 流石、父さん!これで俺達も一緒に動く事が可能になった!


 とはいえ、その前にこの二人も拠点に来る事になったか……また問題発生だな。

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