第038匙 二つの「プペ」そして伝説へ:喫茶プペ(竹橋)

 東西線の「竹橋駅」から徒歩圏内なので、ここでは大雑把に〈竹橋〉エリアに分類させていただく事にするが、その〈竹橋〉エリア内に在る細道の角に、幼児用のパンダの乗り物が特徴的な小さな公園がある。その小さなスペースの脇に、看板や幟に描かれている女性のイラストが個性的な一軒の喫茶店が見止められる。その店こそが「喫茶プペ」さんだ。


 ちなみに、ここの店名はカタカナ表記なので、カナだと気付きにくいかもしれないが、おそらく、この店の名の由来は、〈人形〉を意味するフランス語の〈poupée〉であろう。


 日本において〈プペ〉と言えば、一九六〇年代後半に世界的に大ヒットした、フランス・ギャルの曲、「プペ・ドぅ・シール、プペ・ドぅ・ソン」を思い出す方もいるかもしれない。直訳すると「蝋人形、音人形」なのだが、邦題は「夢見るシャンソン人形」なので、こちらの曲名の方がピンとくるかもしれない。


 とまれ、フランス・ギャルが歌ったこの曲が世に出たのは一九六五年、そしてなんとリリース後一か月半で二十万枚を売り上げたそうだ。つまり、これほどの大ヒット曲の原題なので、六〇年代後半に青春期を送った人にとって、この〈プペ〉という単語は、もしかしたら耳馴染があったかもしれない。


 そして、この「プペ」さんは、今年で創業〈五十四〉年を迎えた、神田錦町の老舗喫茶店なのだが、別の言い方をすると、プペさんの開業は、「プペ・ドぅ・シール、プペ・どぅ・ソン」のリリースから五年後なので、店名に何某かの影響があった可能性もあろう。

 

 フランス・ギャルが歌ったこの曲は、二十一世紀の日本において、『ソフトバンク』や『サントリー』の「烏龍茶」のCMにおいて採用されており、この事実は、この曲が、リリースから半世紀経った今なお強い影響力を持っている、レジェンド曲である事を示唆していよう。


 対して『喫茶プペ』さんの「プペ特製カレー」は、「喫茶プぺを支えてきた」「創業当時から変わらぬシンプルでありながら手間を惜しまぬ製法」の「伝承のカレー」であるらしい。


 だから、プペさんのカレーを口に運びながら書き手は、「プペ」の名を持つ曲と店が共に半世紀以上の歴史を持ち、今なお聴かれ、かつ、食べられている事実は、二つの「プペ」が日本において、ある種の〈伝説〉になっていると考えられはしないか、と思ったのであった。


〈訪問データ〉

 喫茶プペ:竹橋駅

 二〇二四年九月十九日(水)十一時半

 プぺ特製カレー:一〇〇〇円(現金) 

 カード38「キン肉マンマーキュリー」


〈参考資料〉

『公式ガイドブック』、三十ページ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る