第7話 二人でファミレス
「ふぅっ」
ついムキになって喋りすぎた。
野菜ジュースが空になってる。
「ちょっと飲み物取ってくる」
「俺も行くよ」
二人でドリンクバーの前に行き其々自分のカップに好きな飲み物を入れる。
「わたしの推しはヒーローなの!
重い
そんな
異世界で己の器量も解らず大きな顔してるバカとは違うの!」
テーブルに戻るとわたしは改めて自分の理想像を高嶺に熱く語る。
「悪人と戦って、好きな女には告白も出来ないようなヘタレなヤツが理想なのか?」
「姿勢よ!姿勢!生き方の姿勢を言ってるの!
わたしの理想なんだからいいでしょ!大体何よその湾曲した取り方は!」
あれだけわたしが熱く語ったって云うのに何訊いてるのよ!
「はいはい…要は今売れてる異世界物のキャラクターがお前としちゃあ納得がいかない訳だ」
真っすぐに向ける視線が胸中を見透かされてるみたいで落ち着かない。
「それに…わたし自身異世界にあんまり魅力を感じないのよ」
高嶺と目を合わせるのが決まりが悪く、野菜ジュースに目を落として答える。
でも嘘じゃない。もしわたしが異世界に転生したらあんな能天気になんか
してられない。
「それで、異世界の苦手な志摩はどんな話を書くんだ?」
思った以上に高嶺はわたしの書く小説について色々訊いてきた。
どんなジャンルを書くのか。
どう云うタイプの主人公が好きなのか。
今までどのくらい書いたのか。
書いた小説はどうしてるのか。
将来は作家を目指しているのか。
あんまり真面目な顔で訊くもんだからわたしもつい答えてしまった。
わたしの書くのは恋愛物。
それもハッピーエンドしか書かない。
小説投稿サイトに載せていて、読者数は少ないけど将来はやっぱり作家デビューしたいと思っていること。
ちょっと夕食を食べて帰る筈だったのに、気が付けばあっと云う間に0時を超えていた。
「話し込んでたら遅くなったな、悪い。ちゃんと送るから」
高嶺は伝票を持ってレジの方へ歩き出す。わたしも慌てて後を追った。
「高嶺、わたしの分…」
レジで会計をしてる傍に行き、お財布を取りだそうと鞄を開ける。
「バーカ、こんな時は見栄を張らせろ」
高嶺はすました顔で二人分の飲食代を払っている。
「でも…」
「何遠慮してんだ。俺たち友だちだろ?それに高嶺ってなんだよ」
高嶺はファミレスを出るとわたしの方へ向きを変えじっと見据えてくる。
「な…なに?」
「名前、なんで友だちなのに高嶺なんだよ」
えっ?
いや…だって…友だちだからって名前呼びは…
「お前学校じゃオタクだって隠してるだろ?」
「当たり前でしょ!そんなの知られたら絶対バカにされるもん」
「暴露されたくなかったら名前呼びな」
「はぁあ?」
何言ってんだこのばか男!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます