第6話 思わぬ展開
あれから一週間。
特に変わった様子はない。
相変わらず
嫌な男の典型的だ!
節操もへったくれもありゃしない!
最近の流行りだってそうだ。ハーレムだの妹溺愛とか節度無さ過ぎだろ!
お前らにはモラルってものが無いのか?
こんな事考えるわたしが古いのか?
それとも頭が堅いのか?
わたしにはそんなものに陶酔してる奴らの頭が腐ってるとしか思えない。
まあ、むこうもあれから特段言って来ないんだから、ちょっとした気まぐれで揶揄っただけなんだろう。
どう考えてもわたしみたいな中の下を彷徨ってる女なんか、あいつの周りにいる女共と同列に扱われる訳が無い。
それより今週末は待ちに待ったアニソンライブの日だ!
あんなクズみたいな高嶺のことにかまけるなんて止めてもう忘れよう!
「あれ?志摩じゃん、どうしたんだこんな時間に」
アニソンライブの帰り、わたしが最寄りの駅に着いたのは22時を過ぎていた。
いつもの事なので気にせず駅を出るとばったり高嶺と会ってしまった。
しかも平気で名前呼びしてる!
「ちょっと出かけてて…」
なんとなくアニソンライブとは言いづらくはぐらかした。
「こんな時間に帰ってきて何してんだよ。男か?」
「バカ言ってんじゃ無いわよ!アンタと一緒にしないでよね」
それじゃあ…と別れを告げて歩き出す。
「こんな時間に危ないだろ?送ってくよ」
はぁあ? どう云う風の吹き回しよ?
「今日みたいなのはいつもの事だし、それにファミレスで夕飯食べてから帰るから」
えっ?!
ちょっと…
わたし断ったよね?!
さっきちゃんと断ったよね?!
なのになんで同じテーブルにアンタが座ってんのよ?!
「今日みたいなのってよくあるの?」
注文が終わると、いつになく真顔でいきなり訊いて来た。
「あ…偶に…」
勢いにのまれておかしな返事になったけど、別に悪い事をしてるわけじゃない。
親にだって了承は取ってる。
「何したらこんな時間になるわけ?」
なんだか突っかかるような言い方に少し腹が立った。
「ライブに行ってたの!アンタだってそれくらい行くでしょ?」
そう答えるわたしをジロジロとコイツは見ている。わたしはちょっと恥ずかしくなる…
今着てるTシャツは推しのアニメキャラが描かれてるからオタク丸わかりだ…
「へぇ〜」
な…何よその含みのある言い方は!
「そういや、志摩はどんな小説書くんだ?今流行りの異世界とか?」
「そんな物書かないわよ!」
ちょっと意外そうな顔をされる。
「今そう云うの流行ってるだろ?異世界転生とか、勇者や聖女とか…」
「あんなのはアンタみたいな頭の腐った輩が自分の妄想全開で読んでるだけよ」
わたしはドリンクバーの野菜ジュースを飲みながらここぞとばかりに語りだした。
「普通に考えたって可怪しいでしょ?いきなり異世界に連れてこられて喜ぶなんてバカだけよ」
「そうかと思えば変なチート能力で無双しちゃって…寄ってくる女は可愛いきゃ何でもありだし…」
「大体妹とかに特別な感情を持つって何?
気持ち悪!」
「強くても種まきしか能が無い男なんて御免だし、利用されてるのに顔が良いだけの王子と恋愛ごっこかましてる聖女も愚の骨頂だわ!」
わたしは最近のラノベへの不満を一気に高嶺相手にぶちまけた。
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