第18話
「やっぱり来る前にコンビニ寄っておいて良かったね。天気予報だとそんなに降らないって言ってたけど、花火が打ち上がる頃には止んでるかな」
「ふぉーふぁえ、ふぁんべるぽいいふぇ」
「……何て言ったんだ?」
俺は隣の潮見にそう尋ねる。どうやら潮見も同様に先ほど茅ヶ崎が何と言ったのかわからないらしく、ふるふると首を振った。その様子を見た茅ヶ崎はもぐもぐと口を動かした後、それをごくんと飲み込んだ。手にはさっき買ったばかりでまだ湯気が立っている焼きそばを持っている。
「『そーだね、止むと良いね』って言ったの」
「そ、そうか」
少し前、雨が降り始めた際には花火大会が予定通りに開催されるのかと不安になったものの、雨脚はそれほど強くはなかった。潮見が言うように、この先雨が上がってくれるのであれば、問題なく開催されそうだった。この辺りではそこそこ大規模の花火大会ということもあり、準備にかかったであろう労力を思えば、少しくらいの雨で延期されるということもないだろう。
俺たち三人は縁日の場から少し離れた公園の東屋の下で休憩していた。傘を片手に歩くと場所を取ってしまうだろうと考えてのことだった。同じことを考えたのだろう、他にも数組の人たちが屋根の下に集まっていたが、それでも窮屈というほどではなかった。この程度の雨脚であれば気にせずに外を歩いている人も多いだろう。
「それで、どうしよっか。今から会場行ってもまだ打ち上げにはちょっとだけ余裕あるけど」
茅ヶ崎の言葉を受けて、俺は自分のスマホの時刻表示を確かめる。確かに言う通り、今から花火大会の会場に向かったとして、打ち上げには三十分かもう少し余裕がありそうだった。チケットはすでに購入済みだから、三人で花火の見える場所さえ確保できれば、そこまで急ぐ必要もなかった。
「とはいえ縁日はもう一通り周ったしなあ。まあ少し待つことにはなるだろうけど会場行っとくか。話でもして待ってればすぐだろ」
「それもそうだね」
潮見が俺の提案に賛成し、そうして俺たちは花火大会の会場である砂浜へと向かうことにした。
途中、先程のクレープ屋の前を通ることがあった。屋台の暖簾の一方が新しく無地の布で覆われていたが、気付いていないのか、誰もそのことを話題には出さなかった。
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