はじめてのおつかい(ソロ)
先日から攻略を進めていたゾンビゲーのイベントが全て回収し終えた...。
もとより、買ったゲームは完全攻略するまでやり、他のゲームを買うのはその後という主義だったため、部屋にはやり残したゲームが存在しない。
AIのサポートもあるおかげで、掃除や洗濯などをある程度こなすことは出来ていたが、10日は家を出ていない。
食料は目に見えて減っているし、そろそろ日光を浴びたいとは思う。思うが、真夏なので外に出るのが少し億劫だ。
仕方なく、近所のスーパーに行ってみることにした。
周囲があまりに静かなものだから、太陽が照りつけるアスファルトから「ジリジリ」と聞こえてくるような気さえしてくる。蝉は暑すぎて鳴いていない。
スーパーの正面口は当然閉まっている。店内も暗く、人が入った形跡もない。
エアコンが付いてなければ、生物は全滅だなぁ。
なんて考えながら裏口に向かうと、当然裏口もしまっていた。一縷の望みをかけてすぐそばのポストを開くと、鍵が1つ。
試しに、とその鍵を裏口の鍵穴に差し込み、回すと、カチャリと小気味いい音が聞こえ、解錠されたことがわかった。
コソコソする理由もないのに、そろりそろりと従業員入口からの侵入を行う。
人が消えてから初めてのお使いとか考えていたが、これじゃ、はじめての万引きみたいじゃないか。
外からの光を頼りに、店内の照明を点けることができた。
エアコンも冷蔵器具もしっかりとは稼働していなかったようで、生物は全般的にダメになっていた。
ただ、蓋で閉じられていた冷凍食品やアイスなどは、その冷気で低温を保っていたようで、生物ほど悲惨なことにはなっていなかった。そのほかある程度の品は問題なく、食べれるものも多くあった。
裏側にある冷蔵庫に触れていないけれど、そこを開ける時は限界になった時にしよう。
食料を持って帰路に着く最中、浮かんだ疑問をAIに投げてみた。
「ねぇ、この世界の電気は無くならないの?」
「電力の消費による枯渇ということでしょうか?
その件については心配要りません。核燃料炉には限界がありますが、人ひとりの人生程は自動稼働が可能な状態にされています。」
やっぱり聞き覚えのあるAIの声だが、段々と違和感は減っていた。
「そっか、ありがとう。」
「どういたしまして。お役に立てて光栄です。」
汗だくになって帰った僕は、持って帰った食料を冷蔵庫や冷凍庫などに放り込み、シャワーを浴びて横たわったら寝てしまった。
少し、不思議な夢を見た。
今まではゲームに夢中で睡眠が浅かったからか、夢を見なかったんだろうと思うけれど、不思議な夢だ。
ぴ...ぴ...ぴ...と、少しリズミカルに何かを計測する機械の音が聞こえて、バタバタと足音と、AIの叫ぶ声...?でもAIの感情表現でも、激情は表現出来ないんじゃ...?
不思議な夢だなぁと。暗闇に意識を沈める。
独り立ち 埴輪モナカ @macaron0925
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