始まりもしくは終わり
相変わらずの夏の陽射しに呻きながら、涼しい家の中で支度をしようとするのだけれど、両親が寝室から出ていない。
普段なら出発の支度を終えて、ちょうど出るくらいなのに...。早い仕事でも入ったのだろうか。
あんまり気にしないで天気を聞く。
「本日の天気予報は、晴れ。ゲリラ豪雨の心配も不要と予測されています。」
快晴と言わないあたり、雲による影はあるだろうか?日当たりが良すぎても暑すぎて困るのだ。
あと、なんだか自動音声の声に聞き覚えがある。誰かの声な気がするけど、分かんないや。
ホロウィンドウで適当なニュース番組を見ようとするのだけれど、流れてくるのは真夜中に流れるような翌日の天気予報のみ。つまり今日の天気予報しか流れてこないのだ。
普段なら、昨日起きたこととか、今日のゲリラ豪雨危険地帯予想とかが流れてくるのに...
若干の不満を抱きながら、さっさと支度をして自宅を出る。
相変わらず暑いけれど、電動自転車ならまあまあ楽である。それでも暑いけど。
通学路を駆けている最中、違和感が大きくなりつつあった。
なにせ、自動タクシー以外の車が動いていない。というより見えないのだ。
こんなに静かな道路も珍しい、おかしいな。
とはおもいつつ、高校に到着するといよいよおかしい。
校門が閉まっている。時刻はだいたい8:30。既に何人かの生徒が登校していてもおかしくないし、朝から部活動がある人は既にいるはずだろう。教員などもっと早くついているはずなんだ。
「ねえ、今何時何分?」
自分の認識がズレているのかと、疑いと少しの期待をして聞いたのだけれど
「現在時刻は8時27分です。」
大体あっているので、これはいよいよどうしたものかとなやんでしまう。
とりあえずできる推測としては、人が居ない。ということである。
「両親の生体反応はある?」
これで無いと言われたら、その推測を信じるしかない。ただの偶然で人と遭遇しなくて、学校はいきなり休校になっていた...とかね
「現在、マスターのご両親の端末はそれぞれのベッドにありますが、生体反応は確認されませんでした。」
なんてこった。じゃあ本当に人間が居なくなったって言うのか?俺以外?なんで?
疑問しか浮かばない。なんて事は無く、ただただ自由に過ごせるのではないだろうか?という思惑の方が早く浮かんできた。だが、
「ほかの...確認できる範囲で、俺以外の生体反応は?」
「ありません。私の権限における範囲で、マスター以外の生体反応を認識出来ませんでした。」
となると、誰もいない。ということだ。
別に、全員の端末がおかしくなったとか、インターネットが壊れたとか、そういう訳では無いことは今使っているAIが証明している。
仮に全員が端末を手放していたとしても、ここまで人と接触しないのはレアがすぎる。どれだけ共謀しても、車で通勤する人だっていただろう。
逃避的な思考になるものの、いいやそんなことより。と考えを切替える。
つまりは、自由なのだ。今からすることを考えなければならない。
食べ物と飲み物は、自宅に2週間分程度はあるはずだ。スーパーやショッピングモールは開いているだろうか?いいや無理だろう。限界が近づいたら非常口や従業員用の出入口からの侵入を試みることにしよう。
とりあえずは...帰ってゲームするかぁ!!!
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