第28話 お菓子は別腹

「……ふぉふぉふぉっ! 聞いて驚くなかれ、ワシはマスター・G! 昔はヒーローをしていて、ヒーロー名は武術の達人マーシャルアーツ! ヒーローランキングは第1,000せん———」


「——終わったわよ~」


 爺さんが腕を組み、片足で立ちフラミンゴみたいなポーズを決めていると、ドア越しにミカヅキの声が聞こえてきた。


 終わったらしい。帰ろ。


「おっ、悪いな。もう帰るから続きはまた今度で頼むわ」


「え、え!? ま、まだ途中で、しかも一番いいところじゃよ!?」


「どうせヒーローランキング1,000位とかだろ? その年になってヒーローを辞めたのに、積極的にヒーローギルドに関わって活動してるなんて凄いと思うぜ。これからも俺たち市民のために頑張ってくれ! じゃあなー」


 俺は何か言いたげな爺さんを置いて早々に部屋を後にした。

 武術の達人マーシャルアーツというヒーロー名は中々イカしているが、ヒーローランキング1,000位やそこらだと実力に対して名前負け感が否めないな。

 最下位の俺も1,000位くらいだと思うし、きっと似たような立ち位置だろう。


 銃弾を指でキャッチし、そこそこ強そうな佇まいだから期待でしていたが……1,000位か。ランキングを基準にするならミカヅキの方が圧倒的に強いんだろうな。


「ふぅ……朗らかな爺さんだな」


「誰かと話してたの?」


 俺がドアを閉めて嘆息していると、すぐ近くにいたミカヅキが声をかけてきた。

 視線を下げると隣にはアイシーちゃんもいる。


「んー、なんでもない」


 ただつまらんギャグを連発する爺さんの話し相手になってただけだ。

 退屈凌ぎにはなるがあれは会話ではない。寒さの押し売りだ。


 悪い人ではなさそうだったけどな。


「そう。それじゃあ帰りましょうか」


「ハイド、ミカヅキ。帰りにご飯食べたい」


「あら? もうそんな時間?」


「もう18時過ぎだな。適当なファミレスに寄って帰るか」


 確かに腹が減った。

 お菓子は別腹なので食べていない計算となる。


「そうね。アイシーちゃんもそれでいい?」


「うんっ」


 アイシーちゃんはミカヅキの問いかけに対して嬉しそうに返事をすると、両手で俺とミカヅキの服の裾を引っ張って歩き出した。


 さて、爺さんのはまたどこかで会う気がするし、今日のところは悪いが飯を食って帰るとしよう。

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ヒーローランキング最下位の俺、今日も力を隠して呑気に生きる チドリ正明 @cheweapon

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