最強の道具屋。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~
さんまぐ
第1話 召喚術四式。
ヴァン・ガイマーデはヘマタイト・スティエットに頼み込み、無限術人間真式…オルドスが自身の身体に溜まり続ける力を逃がす為にオオキーニの地に設置した、世界の根…ミチト・スティエット風に言えば、大地の根へと赴いていた。
ヴァンは壮観としか言いようのない金色に光る巨大な大地の根を見て感動を口にしながら、「あんがとねヘマタイト。専用直結術も教えてよ」と言う。
「いいですけど、ヴァン君は真模真式なので成長限界はないでしょうから、接続の必要はないでしょう?」と心配そうに話すヘマタイトに、ヴァンは笑顔で「にひひ。宿題なんだよね。教えてよ」と言うと、ヘマタイトはヴァンに無限術人間真式が成長限界を迎えた時や、引退を意識した時に大地の根と繋がる為にミチトが考えた直結術を伝心術で説明する。
感謝の直後から「んー…」と悩むヴァンに、「ヴァン君?」と聞くヘマタイト。
「ヘマタイトさあ、ヘマタイトは今も大地の根に繋がってるんだよね?流してる術に色をつけるイメージで、一瞬だけ強めに流してくれない?」
「…また変なお願いですね」
無限術人間真式としてヴァンの言葉の意味を理解したヘマタイトが、一瞬だけ直結術の気を強くすると、ヴァンは「おお、見えたよヘマタイト。ありがとう」と言って笑う。
ヴァンはそのまま大地の根に向かって歩き出し、大地の根に手を触れて「吸収術」と唱えてすぐに手を離すと、「うん。貰える。出来たよ。召喚術四式」と言った。
ヴァンが「見ててヘマタイト!召喚術!トゥモ・スティエット!!」と召喚術を使うと、光と共に目の前にはヘマタイトの先祖、トゥモ・スティエットが立っていた。
「お、ヴァンとヘマタイトじゃないか」と言って笑ったトゥモは、ヴァンを見て「四式か?」と聞いてきた。
「うん。この場所を見たらトゥモならわかっちゃうよね。ちなみにこの先の試験はオッハーのペリドットの家でジェードを呼んでみるよ」
トゥモは本当に嬉しそうに、弟の頭を撫でるようにヴァンの頭をガシガシと撫でて、「お前すげぇよヴァン!術量の軽減化をこれで実現したんだな!」と言い、四式のポイントを見極めてヴァンを褒める。
「にひひ。うん。俺は真模真式だから、どうしても限界値は更新されないしね」
トゥモは「それがすげぇんだよ。シヤの兄ちゃんみたいだよ」と言ってヴァンを褒めると、今度はヴァンが「シヤ?シヤ・トウテ?」と聞き、トゥモは「ああ、シヤの兄ちゃんが転生術の基礎だよ。俺が頼めばパパなら話してくれるよ。宿題というかチャンスだからパパに話してもらいな」と言ってミチトがやるみたいに人差し指をくるくると回す。
そのまま「術使用も試してみるか」と言ったトゥモは「ヘマタイトは大地の根の術量を見ててやれよ」とヘマタイトに指示を出す。
ヘマタイトが「はい。お爺様」と言ったタイミングで、トゥモが「よし、念話術。おーい、パパ?元気?うん。ヴァンが四式で呼んでくれたよ。後学の為にさ、ヴァンにシヤ兄ちゃんの話をしてやってよ。出来たら三式で構わないから召喚術で呼んでさ、多分混線するから、それをヴァンに見せてやりたいんだ。うん、あのジェネシスの話。俺はそれを知って召喚術に使う魂の概念を見つけた。パパの転生術は遺髪や想いの残る品を道標にしたけど、俺はシヤ兄ちゃんを見て召喚術に導けたんだ。頼むね。え?今日は帰るよ。ヴァンはこの後ペリドットの所でジェードを呼ぶらしいしさ、忙しいからやめとくよ」と言ってミチトと会話を終わらせてしまう。
トゥモはそのまま遠視術も使ってリナ、イブ、ライブ、アクィを見つけて声をかけると、コーラルはアクィに師事を受けて訓練していて、ヴァンに「コーラルは来なかったのな」と声をかけると、ヴァンが「コーラルはここに来たら、成長限界も迎えてないのに貴い者としてって言って大地の根に同化しそうだから、アクィさんに頼んで足止めしてもらったんだ」と呆れ顔で答えた。
「成程な」と笑ったトゥモは「ママがコーラルにつきっきりなら、ヘマタイトは助かったろ?」と悪い顔で聞く。
「はい。助かってます。アクィお婆様達は、僕が妙齢を過ぎて独身なのを気にしています」
「俺に似たって言われるのか?」
「はい」
晩婚だったトゥモはアクィ達から「ロゼを見習え、ジェードを見習え、コードは見習うな」と散々言われていて、自分がした思いをヘマタイトがしている事を見抜いて笑っていた。
「じゃあ、ヘマタイトにも宿題だ、コーラルからオブシダンの魂を見つけて、四式で呼び出して、代わりに怒られてもらっておけ」
「…やってみます」
満足そうに「おし」と言ったトゥモはヴァンに「術量の消費と集中の具合は読めたなヴァン?」と聞くとヴァンは「うん。ありがとう兄弟子」と言って頷く。
真式同士の会話は話が早くて助かる。
ヴァンは真式ではないモノの真模真式として真式と遜色ない会話が出来ている。
「おう。今度はママのケーキとパパの串焼き肉の日に呼んでくれ」
「にひひ。コーラルのケーキと並べてどっちがアクィさんのケーキか試してみていい?心眼術は禁止ね」
「話にならねーって、楽しみにしてるよ。じゃあ!食事以外なら四式の問題点は想像ついてるから、五式の改善策を思いついたり、逆に困ったら呼んでくれ」
「うん。そうするよ。ありがとうトゥモ!」
ヴァンはトゥモを消すと、その足で転移術を使ってペリドットの家にお邪魔する。
「お?どうした?それに珍しいな。今日はコーラルじゃなくてヘマタイトなのか?」
「うん。転生術四式の為にヘマタイトに頼んだんだ」
ペリドットは関心した面持ちで「ほぉ、もう四式作ったのか、凄いな。成功か?」と聞くとヴァンは嬉しそうに「うん。第一段階はね。でもここでやれるかが問題なんだよね」と言うと、「早速やるね!召喚術!ジェード・スティエット!!」と言った。
ヴァンがジェードを呼ぶと、ジェードは現れたが、ヘマタイトが「ヴァン君、やはり消耗が激しいですね」と意見する。
それは大地の根の消耗具合で、大地の根の目の前で呼んだトゥモは1の消費ならジェードは20近く減っていて、これでは話にならない。
呼べると使えるには大きな隔たりがある。
「かー、やっぱり距離が問題かぁ…、五式というより改善しないとダメだね」
ヴァンの言葉がわからないペリドットは首を傾げながらも、現れたジェードに「なあ、俺の家族に会ってくれよ」と言って、父母やきょうだいに合わせると父母達は驚いてジェードに挨拶していた。
あいさつの後、ペリドットの家でお茶を飲みながら、ジェードが「…で、四式って何よヴァン」と質問をする。ヴァンは「えへへ、俺は真模真式で弱いからさ、大地の根に術量を肩代わりしてもらって召喚術してるんだよね」と言ってオオキーニにある大地の根の方角を指さして説明をした。
「お前、すげぇ事考えるな。向こうで誰を呼んだんだ?」
「トゥモに来てもらったよ。約束だったんだ」
ジェードは嬉しそうにヴァンの頭を撫でて、「お前はすげぇよ」と言ってから、ペリドットを見て「真式なんだからお前もなんかやれよな」と言って怖い目をする。
ペリドットは肩を落として「わかってる」と言うと、懐かしむような顔で、「その目をやめてくれ、死んだ爺さんによく似てる」と言うと、ペリドットの言葉にペリドットの親きょうだいもうんうんと頷いていた。
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