第2話 【1層】ステータス!
「来た来た来た、ついに俺の時代が来たぁ!」
ロケットスタートを決めていち早く教室を飛び出す。
騒ぎの中ということもあり俺を止めるものは誰一人としていない。
いや、正しくは一人いた。
「ちょっと待ちなさいっ!」
サイドで結んだ赤茶色の髪を揺らす人物が俺を呼ぶ。
それはもちろんアマネだ。
しかもこいつは陸上部の中でも鬼のように足が速く、俺はすぐに追いつかれ腕をしっかり掴まれてしまった。
「おい、離せよ」
「どこにいくつもり?」
「そんなのわかりきってるだろうが!」
「だめだよ。あんな得体の知れないもの、絶対危ないんだから!」
「あ、お前パンツ見えてるぞ。おいおい、知らない間にそんな際どい柄」
「うそっ!? 見ないで!」
アマネはスカートを抑えしゃがみ込んだ。
こいつは昔からこの手の嘘にいとも簡単に引っ掛かる。
俺はここぞとばかりに全力で逃走を図った。
「どうやらまいたようだな……!」
靴に履き替えて校庭へ出る。
見上げた塔はかなりの高さで、ここからだと頂上がまったく見えない。
一体何階層あるんだと想像すればワクワクが止まらない。
入り口は探す間もなくすぐに見つかった。
「いざ、ダンジョン探索!」
張り切って扉に手をかける。
「ちょっとカズサ! 私今日スパッツなんだから見えるはずないじゃない!」
げ、アマネだ。
振り返らずそのまま扉を押す。
「初発見者カズサ、この塔を校庭ダンジョンと名付ける!」
いや、その前に拳を天に突き上げる。
ここはなにより宣言が重要だろう。
「カズサ、早くどいて! そこどいてぇっ!」
「は? お前何言って……!?」
振り返ると、後から突っ込んできていたアマネに押される。
俺達はその勢いのまま塔の中に吸い込まれた。
「まさかお前がそこまでやる気だとはな?」
「だから、あれは止まらなくなったんだって!」
「お前はどこぞの猪か。まあ、ここまで来たら覚悟を決めることだな」
壁や天井は石でできていて、床だけ土のようで柔らかく踏みしめることができる。
遠くまで見渡せるほど周囲は明るい。
俺の想像していたとおり、中はいかにもなダンジョンそのものだ。
さて、まずは定番のあれを確認しておこう。
「ステータス!」
俺は広げた手を正面に突き出す。
このポーズはテンションによるおまけだ。
するとやっぱり出てきた。
【ステータス】
カズサ:レベル1
称号:ダンジョンルーキー
クラス:見習い戦士
スキル:バスタースイングLv1
>>基本的な攻撃スキル。全武器種で使用可能。消費MP5、再使用1秒。
パラメーターはお馴染みのものばかりだ。
力が少し高くあとは並か低いくらいと見よう。
「す、すてーたす?」
アマネは眉間にシワを寄せたまま手を出している。
ああそうだ、こいつがいるのをすっかり忘れてた。
「お前が見ても意味わかんなさそうだな」
「まったくね」
「一応聞いとくけど、どの数値が一番高いんだ?」
「
さすがは陸上部のエースだ。
初期値は身体能力と連動してるのかもしれないな。
「よし、じゃあ確認も済んだし進んでいくぞ」
「ちょっと待ってよ。これ引き返せないの?」
「入った時の扉が開かなかったんだよ。ま、こういうのはどこかにセーブポイントがあってな。そこで戻れたりするんだ」
「ふうん。じゃあそのせえぶを探すのね」
「その前に武器を押さえておきたいところだけどな。もしかするとモンスターがいるかもしれないし」
「え、怖いやつがいるってこと? 私無理だからね!」
「言ってもここ1階だから余裕だろ。ああでも、1歩目からボスが出てくるクソゲーもあったけどなぁ!」
忌々しい記憶とともに、アマネをひいぃと怖がらせどんどん先を急ぐ。
どうやら行き止まりの道に入ったようだ。
「ここじゃないんじゃない?」
「いや、あそこに箱が見えるだろ。あの中に何かいいものが入ってるってわけだ」
「カズサだめだよ。あれ絶対危ないやつが隠れてる!」
声を無視して宝箱を開けると、中には小振りの短剣が2本入っていた。
ひとまず身につけてここでようやく装備画面を開いてみる。
【装備】
頭:
右手:N【初心者ダガー】
左手:N【初心者ダガー】
胴:N【初心者の服】
足:N【初心者の靴】
アクセサリー1:
アクセサリー2:
使い魔:
よくあるオーソドックスな画面だ。
Nがノーマル、Rがレア、
使い魔ってのが謎要素だがこの先手に入るんだろう。
「よし、これで戦えるようにはなっただろ」
「私は何もしなくていいよね?」
「ああ、後ろで見てればいいよ」
俺達は来た道を引き返して別の道に入る。
するとすぐに、何かの影が近寄ってくるのがわかった。
「ついにお出ましか。VRで散々鍛えた動きを見せてやる!」
「本当に大丈夫かなぁ?」
後ろからの不安そうな声を耳にしながら向かっていく。
それは暗い場所ではお馴染みのコウモリ。
スティールバットLv1とその名前が表記されている。
どうやら先制攻撃のようだ。
俺は左右で持ったダガーで2回切りつける。
モンスターからは悲鳴のような声が聞こえた。
なるほど、血とかは出ないタイプか。
相手の噛みつき攻撃をあっさり回避する。
再度切りつけるとコウモリは光り、そのまま姿が消えた。
経験値が増えているということは今のが倒した時のエフェクトだな。
それと同時にGPというポイントが20増えているが、今のところは気にしなくてもいいだろう。
「カズサ、すごーい!」
「だろ。まあまだ1階だしこんなもんだ」
「どんどんいってみようよ!」
「お前本当調子いいのな」
アマネに体を押されつつ、敵を倒しながら進んでいくと2階への階段を発見した。
結局ここではレベルが1つ上昇。
HPとMPは自動であがり、他のステータスは自分で割り振る方式のようだ。
俺は何を隠そうどのゲームでも力一択でやってきた。
もちろんそれ以外の選択肢は無粋というものだ。
【ステータス】
カズサ:レベル2(↑1)
ダンジョンルーキー
HP:25(↑5)
MP:8(↑3)
STR:14(↑4)
AGI:8
INT:2
LUK:1
スキル:バスタースイングLv1
そういえばスキルのことを忘れていたな。
次モンスターと出会ったら試してみるか。
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