同性婚

 私は前にも言った通り、トランスジェンダーである。しかし、恋愛の対象は女性である。尤も、最近はその感情が恋愛感情ではなく自らの憧れの投影ではないかという疑念にぶち当たった事で、殆どアセクシャルに近い状態になってしまったのだが、それは今回の話とは関係ないのでその辺りは割愛する。

 つまるところ、私は幸い身体男性で産まれてきたので、同性婚の問題とは直接の関係を持たずにいるのである。

 しかしながら、ジェンダーマイノリティの一人として、また、もし普通に身体女性に産まれていたらそうなっていたかもしれない身として、他人事としては考えられない。

 以前ジェンダーマイノリティの話をした時、我々が求める理解とは何かを説明した。

 つまり、それを理由に非難されたり不当な扱いをさせられることの無いようにして欲しい、ということなのだが、今回も本質的にはそういうことだ。

 憲法第二十四条において「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定められている。しかし、これはあくまでも、本人の意志によって婚姻が成立するということを示したものであり、例えば親が「お前に娘はやらん!」などと言う権利はないと規定しただけのものではないか。現在の日本国憲法が制定された時には同性婚の問題など考えられていないのだから、このような表現になってしまったのだと考えるのが妥当ではなかろうか。本質は第三者が口出しすることなく、当人らの意志に基づく婚姻の成立を規定したのであって、男女に拘る理由はあるまい。

 結婚というものを軽く考えている方もいるかもしれない。しかし、結婚出来ないことがどれ程の弊害を生むか考えたことはないだろう。

 まず、同性カップルは家族ではないので、相続が出来ない。仮に、あまり考えたくない話ではあるが、カップルのどちらかが事故や病気で急死してしまった場合、亡くなってしまった方の所有物を受け取ることは出来ない。もし、亡くなってしまった方の人が家を所有していたならば、残された方は同棲していただけの他人なので、家を失うことになる。

 或いは、同棲カップルでは子供を作れないので、養子をもらったとする。しかしカップルは家族ではないので、どちらかはその子とも家族ではないことになってしまう。当然、相続やら何やらの問題もあるし、家族ではないからと病院で面会を拒絶されたりその他様々な弊害が起こり得る。

 家族同様に暮らしていても、法律上は家族ではない。それを法的に家族と認めてもらうための手段として同性婚を認めて欲しいと言っているだけのことだ。同性愛者だからといって、社会の仕組みから排斥しないでくれと。

 同性婚を反対する立場の人はよく「社会が大きく変わってしまう」等という根拠のない理由を述べるが、そんなわけがない。一体どれだけの同性愛者がこの日本にいるというのだろうか。社会を大きく変える程であれば、それは最早マイノリティではない。もしそれで大きく変わるというのなら、それはもう変えなければならないことだ。どちらにしても、反対する理由にはなり得ない。

 一体何が気に入らないのか教えて貰いたい。それを認めることで、諸君らマジョリティの権利を何か侵害するのか? 勿論そんなことは起こり得ない。

 今年の三月に、札幌高裁が同性婚を認めないことについて「違憲」であるとの判決を下した。詳しいことは省くが、先述の第二十四条のみならず、法の下の平等を定めた第十四条第一項にも違反するとしている。

 このような事例すら出てきている現状を鑑み、政府には早急に対応をして頂きたいものである。もし全ての問題を解決出来る手段が他にあるのなら、同性婚という形でなくても構わない。いくつかの自治体で行われているパートナーシップ制度も何の解決にもならなかったという上で、万が一同性婚に代わる解決手段があるのなら、だが。


 ところで、選択的夫婦別姓についても同様にやたらと反対する人がいるが、同姓でいたいなら同姓であることを選択すれば良いだけのことなのに、何をそんなに反対するのか、明確な根拠とデータを以て教えて頂きたい。これは私が賛成とか反対とか関係なしに、ただ感情的に反対を唱えるだけの方々に対する苦言である。

 例示したものに限らず、何事に対しても明確な根拠やデータが無いのであれば、闇雲に否定することはやめるべきである。そんなことは百害あって一利なしだと、そろそろ気が付いて貰いたい。

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