51話 衝撃
「さて、やみちゃんに今から発表したいことがあります」
配信が終わってからハナ先輩が真剣な顔をして私を見ている。
発表ってなんのことだろう。まさか、私が粗相をやらかしてそれの処遇とか?微妙にあり得そうなことを自分で考えるのはやめておこう。
「そんな怖い顔しないでも悪いお話ではないわ。まあ、私と二人になって警戒しているのかもしれないけれど」
「そ、そんなことはございません!」
「そう?なら早速発表させてもらおうかしら」
みあ先輩もみか先輩も配信が終わったら帰ってしまったのでこの場にはハナ先輩と二人なのである。
くすっ、と笑うその表情でしか得られない栄養素があるので緊張なんてどこかに吹き飛んでしまった。
「さっき質問で後輩ができたら、というのがあったでしょう?実はね、オーディションの話が出てるの。これは光が言っていたのだけどね。そこで新たな子を見つけたいんですって。事務所もそれを通したから本当に後輩が増えるかもしれないわ。そして、本題はここから。これは光に関すること。ほら、私たち0期生って光以外はユニットがあるでしょう?でも、光はどこにも属さない。だからあの子、次の子が来たら裏方に戻るって言っているの。私とマオは止めてるんだけど、聞かないのよね。ああこれは事務所と私とマオ。それと、やみちゃんだけしか知らないわ」
ハナ先輩は真剣な顔をしてそう言った。
オーディションをするという話までは自分にも後輩ができるのだと高揚していた。
それなのに、驚くことを聞かされたらそんな感情はどこかにいってしまった。
「ひ、光先輩がそ、卒業するってこと、ですか?」
自分が発した言葉は思ったよりも震えている。
それほど動揺しているから。
「卒業、というかあまり配信をすることがなくなる、といったところだと本人は言っていたわ。あまり心配もしなくていい、ともね。でもね、私にとっては大事な同期だし、一緒にこの事務所を大きくしてきた仲なの。だから、一つやみちゃんにお願いがあります」
ハナ先輩が私を見つめてくる。
その瞳が私を捉えて離さない。お願い、それが何かをどこかで察している自分がいる。けれど、そんなお願いを私が叶えられるだろうかと思う。
「やみちゃん、光を説得してください。一度決めたらやる子だから難しいかもしれない。けれど、あの子にはせめてやりきったと言って終わってほしいのよね。話をしている時にまだやり残していることがあるようなことを言っていたから。それならまだいてほしいって思うの」
考えていた通りのお願いごと。
光先輩を説得して欲しいという私へのお願いでいいのかと思うこと。
けれど、答えは決まった。
「ファンとして推しには最後までやりきってほしい。分かりました、そのお願い引き受けましょう!!」
推しの決定を止めるというのを本当にしていいのかと戸惑う気持ちもある。しかし、他でもない光先輩の同期に頼まれているのだ。
だったら、私が断る理由はない。
どうしたらいいのか分からないけれど、ただ全力でぶつかりにいくだけだ!
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