第53話

 領都ツリードに迷宮都市ルナーツから帰還すると、僕は屋敷に到着してすぐに父さんへと報告に向かった。


 「ただいま帰りました。」


 「おかえり、カナタ。それでは報告を聞こう。」


 「はい。」


 迷宮都市ルナーツであったことを報告していく。


 ダンジョン・ゴブリンの洞穴と魔蟲の密林の攻略が完了したこと。


 ダンジョンで手に入れたアイテムのこと。


 ダンジョン探索で得た成果を。


 最後に新しく召喚が可能になったスライム系モンスターのことを僕は伝えていく。


 「なるほどな。カナタ、ダンジョンに行けて良かったか?」


 「うん!色々試したいことも出来たし、行けて良かったよ!それにゲートスライムの事もあるしね!」


 「ゲートスライムの力は今後に役に立つからな。冒険者になるとしても、軍人になるとしても役に立つだろう。今は硬直状態になっているが、いつ人間共が進行を再開するか分からない。そのゲートスライムの力を使うことになるかも知れん。」


 「うん、ゲートスライムで何が出来るのか確かめてみるよ。」


 父さんへの報告が終わったことで、母さんに帰ったことを伝えてから長旅の疲れを癒す為に僕は浴室に向かうのだった。


 身体の疲れや汚れを落とした僕は母さんの元へと向かう。帰還の挨拶だけで何も話していないからだ。


 「改めてただいま、母さん。」


 「お帰りなさい、カナタ。」


 お茶やお茶菓子の用意は出来ている様で僕は椅子に座ると抱えていたリムを膝に乗せた。


 「それでルナーツでどうだったの?」


 「楽しかったよ!」


 それから僕は迷宮都市ルナーツであったことを母さんに伝えながらお茶やお茶菓子を食べていく。


 催促してくるリムにお茶菓子やお茶をあげながら久しぶりにのんびりとした時間を過ごして行った。



 領都ツリードの屋敷に帰ってから翌日にはゲートスライムの実験を始めた。


 まず行なわれたのはゲートスライムとリムの間でもゲートを開くことは可能なのかを調べることだ。


 まあ、これは常にリムとは一緒に僕がいるのだからあまり意味のある実験ではないが、それでもやっておいて損はないだろう。


 この実験は成功した。リムの力はすべての召喚可能なスライムの力を使えること。それならばゲートスライムの力も使えるのは自明の理なのだろうが、実際に試してみることに意味がある。


 しかもこの事でゲートスライムの力で開かれたゲートを開く魔力量も分かる。あとはどれくらいの距離だとどれくらいの魔力を使うのかを調べるだけだ。


 とりあえず練兵場の端から端までゲートスライムには移動して貰ってゲートを開いたのだが、今の僕の最大魔力量の20分の1の魔力消費だった。


 もっと魔力を使うのかと思ったのだけれどゲートをここからここまでで開くのに使用する魔力はそこまでないみたいだ。


 これなら領都ツリードから近隣にある魔境・獣の森までの間ならば、今の僕の魔力のほとんどを使えばゲートを開くことが出来るだろう。


 あとはこのゲートを開ける時間と、どれだけの人数が通れるのかの確認をする必要がある。


 最初はスライムたちにゲートを通り抜けて無事にたどり着けるのかを確かめて貰おう。


 続々とスライムたちがゲートを通り抜けていく。最後のスライムが通ってからリムに無事に向かうのゲートにたどり着いたのかを聞けば、ゲートを通り抜けたスライムたちは無事にたどり着いたそうだ。


 次に行なわれたのは兵士たちがゲートを通っても大丈夫なのかだ。本来なら僕が通り抜けて確かめるところなのだが、流石にそれは駄目だと修行の監督をしている騎士に止められてしまったので兵士たちが確かめてくれている。


 その結果、兵士たちもスライムたちと同じ様に無事にゲートの先にたどり着くことが出来た。


 これで長距離の移動も僕の魔力次第で可能になったことが示される。それに僕の魔力を使うのはゲートを開く時だけで、それ以外では魔力消費がないこの移動方法は画期的な行軍手段になるだろう。

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