第21話

 あれから1週間も経たずに姉さんは冒険者仲間たちと一緒に旅立った。何でも指名依頼が国の方から来たからだそうだ。


 姉さんが旅立ってからも僕は貴族関係の勉強だけではなく、武術や体力作りも毎日頑張っていた。


 武術に関しては父さんから部下の騎士たちに命令したこともあって、短剣術と槍術と弓術の3つをそれぞれの達人と言えるほどの技量を持つ騎士に教えて貰うことになる。


 その中でも特に弓術の才能が高かった俺はすぐに動かない的なら30メートル以内なら命中させることも出来るようになった。


 だけど、それ以上の距離を狙うにはどうしても筋力が足らないせいで的に届かないことが多くなる。


 本来なら魔法が得意なエルフ族は風魔法を使って飛距離を伸ばしたり、身体強化魔法で筋力を上昇させることで遠く離れた的にも当てられるようになるようだが、僕にはその2つは魔法が使えないせいで行なえない方法だ。


 その為、今は飛ばせる矢の飛距離の範囲で動く的の役をスライムたちに担って貰っている。


 そんな風に暮らしていると、ようやくスライム種が生成する素材の売買が行なえるようになった。


 「これがそうですかな?」


 「はい。このスライムが生成した物です。」


 流石に事情を知らせる人を少なくする為に僕の召喚するスライム種が生成する素材の鑑定をするのは古くから我が家ツリード公爵家の御用商人のムータさんに見てもらう。


 ちなみにムータさんはエルフ族の中でもかなりの高齢な人で、歳を取っても大半のエルフは見目麗しいがより長く生きれば歳を取るから容姿も老人のようになり、そのことから容姿がお爺さんのムータさんはかなりの年月を生きているエルフだと分かる。


 「品質はそれなりですな。これは1日にどれくらいを?」


 「魔力があれば問題なく作れます。でも魔力はスライムたちの訓練にも使うから大量に用意は出来ないかな?」


 「ふむ、そうですか。なるほど。」


 何やらふむふむと頷いているムータさんは父さんと話があると言い、そこから父さんとムータさんの話し合いが始まった。


 「これは凄いですが、不味いですな。」


 「ああ、そうだろう。だから知らせる者は少ない方が良い。私もこのことを伝えるのは少数だけに止めているのだ。ムータ様。」


 「様はよしてくださいよ。公爵様。今の私は商人なのですからな。」


 御用商人なのは知っていたけど、ムータさんは父さんが様付けするような人なのか?身分的にもしかして王族なのかも知れないが、貴族の勉強の際に王族の名前や貴族の苗字名前にもムータと言う名前には覚えがない。


 そもそもムータさんのように長く生きているエルフ自体が希少で、そんな珍しい人なら貴族の何かしらの勉強の際に教えられるかも知れないな。


 「これくらいでどうですかな。ユグドラシル王国全域に販売しますからな。値段もこれくらいが妥当だと思いますぞ。」


 「うむ、それで問題ない。金属はこの国に出回りにくいからな。」


 「そうですな。そのせいで鍛治師も育たない。これを機に少しでも金属が出回れば増えてくれると良いですな。」


 それから父さんとムータさんは他にも生成することが出来る素材を確認し、それを売るのならどれくらいの値段になるのかを決めていく。


 「週末に信頼できる者を向かわせますぞ。」


 「よろしく頼む、ムータ。」


 「よろしくお願いします、ムータさん。」


 商談が決まり、今回の分をムータさんが持ってきていたマジックバックに素材を仕舞い、売った素材の代金は父さんが3割、僕が7割の割合になった。


 この7割のお金でも量が量だからかなりの値段だ。このお金を使って召喚可能なスライム種を増やせるような素材やアイテム、装備品に魔道具を購入しようと思う。


 出来ればマジックバックを作るのに必要な素材やマジックバック自体を購入してリムに食べさせたい。


 そうすればマジックバックのような能力を持ったスライム種が召喚することが出来るようになるはずだからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る