第11話 雨の日の探索
「それじゃあ始めましょうか」
「はい」
マネージャーの桃尾
そして私達は雨の日限定で開店をしているという『かふぇ・れいん』を探すために歩き始める。栞菜さんから事前に聞いた話だと、そこには先代の店主からお店を受け継いだ二人の男女がいて、一人は栗色の髪の可愛らしい人間の女性、もう一人がこの世の者とは思えない程の美形の男神なのだという。
「神様と人間が営むカフェ……どんなところなんでしょうね」
「そうですね。ただ、雨の日という条件は達成してますが、問題は押し潰されそうな程に辛い思いを私達が抱えているかどうかですね」
「その基準もよくわからないですしね……」
ただ、私は辛い思いは抱えているつもりだ。玉藻に頼りたいくらいに子狐の事をどうにかしてあげたいけどそれは出来ないし他の手だって考えられない。この思いの辛さは中々のもののはずだ。
「それにしても、よく私の誘いを受けてくれましたね?」
「え?」
「桃尾さんにその『かふぇ・れいん』に行きたいという気持ちはあったみたいですけど、やっぱり噂は噂に過ぎないと思ったんじゃないですか? そもそも神様が人間と一緒にカフェやってるなんて現実的にあり得ないですし」
「それはそうですね。どんなところなのかという興味はあっても、やはり噂に過ぎないのだろうなと思っていました」
「それならどうして……」
「あなたのマネージャーだからですよ、狐崎さん」
「え?」
桃尾さんは真剣な顔で私を見る。
「そもそも行きたい理由だってあなたのためなんです。そこでは様々な悩みを相談出来て、アドバイスまで貰えると聞いていましたから、そこへ行って狐崎さんが今後どのようにしていけばいいのかを聞きたかったんです」
「桃尾さん……」
「それに、あなたと二人きりで歩く時間も最近はあまり無かったですしね」
「たしかに……私がデビューしたての頃は色々と相談を聞いてもらいながらやっていましたしね。だから、本当に助かってました」
「私にとってこの時間も大切なんですよ、狐崎さん。たとえ噂に過ぎなかったとしても、それを探すためにあなたと一緒に過ごした時間は」
その言葉は本当に嬉しかった。それだけで救われてしまいそうな程に。でも、やっぱり見つけてみたい。噂のカフェというものを。
そうして色々なところを歩きまわり、少し疲れてきたその時だった。
「狐崎さん、もしやあそこが……」
桃尾さんがあるところを指差す。そこはとてもおしゃれな雰囲気を漂わせた一軒の建物であり、看板にはしっかりとその名前が書かれていた。
「……『かふぇ・れいん』」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます