目覚め
遅れて気付くのは神域を逆に利用されたと言う事。
利用されたのは「禁則地化」の方だ。
禁則地は許した者以外の立ち入りは許さない。
そして、ルカの侵入は許していたはずだった。
しかし、彼女は恐らくその設定よりも優先される事項に触れた。
それが恐らく神の依り代として配置された偶像だ。
彼女はここに来るまでの間に、偶像を触るなり持ち上げるなりして「不敬」を働いた。
それでも、元の位置へと偶像を戻すことで神域の発動事態はさせたのだ。
そして、異能発動時に神域内に侵入していたルカは自動的に退去させられた。
いや、そういうふうに彼女自身が仕掛けた。
瞬間移動でもするかのように神域である領域内からの離脱を測り、こちらの手勢の攻撃をすべて躱した。
そして今は、神域の一番端にいるだろう。
そもそも、こちらが神域をすぐに顕現させなかったのは、時間的制約とルカに気取らせない為だった。
だから、彼女が領域内に入ってすぐではなく、こちらが攻撃を仕掛けるその瞬間に異能を発動させたのだ。
だが、彼女はそこまで見抜いていた。
こちらの異能を利用して難を逃れたのだ。
「だが、まだ終わっていない」
すぐに奴の元まで急行し、攻撃を仕掛ける。
◆
「なに、これ」
黒髪に赤のインナーカラーを入れた少女、二ツ神ネッカはその異能の気配に声を洩らす。
一般的に多くみられる異能とは毛色が違う。
そう断言できるほどに異様な気配だった。
と言うか。
「なんで、常世が形成されてるの?」
彼女の異能は「幽世への干渉・認識」。
彼女の異能は常世感知した。
ただ、普段彼女が認知し干渉している幽世と目の前に存在する常世は毛色が違って見える。
それは、神域が疑似的に再現されたことにより領域内が常世と化しているためのものであり、彼女の認識するものとはルールが違った。
死人でなくともその中で生存が可能であると言う点は最も違う部分だろう。
しかし、どうであれ結果として目の前にある神域は彼女の異能の範囲にあった。
そして。
「“魂に触れる”、か」
それは一枚のレシートだった。
裏面に「ありがとう」とペンで書かれている。
これは、御野間リオに、ルカに貸した帽子の中に挟まっていたものだった。
ツムギを経由した返してもらった帽子には彼女からのお礼の言葉が書かれたレシートが折りたたまれていた。
しかし、これがただのお礼なわけがなかった。
レシートの内容は「魂に触れる」と言う漫画本と「一年後の君へ」と言う小説。
そして日付は去年の今日。
そこから推測できるのは、一年後の君へと言う本がレシートの日付から一年後である本日を指していること。
更に、ネッカの異能を把握しているのだろう。
それにまつわる「魂に触れる」と言う漫画が行動を示していると考えた。
だが、あくまで予想。
自身の考えに半信半疑ではあった。
ただ、念のためルカが動くと言う情報も含めて、周辺に来てみれば常世に遭遇したのだ。
そして次の瞬間、常世に驚くネッカを他所に眼下ではいきなりルカは現れた。
だが、彼はまた一歩進む。
それは神域へと再度足を踏み入れたことを意味する。
目の前に現れたと言うことは今がその時だと嫌でも理解した。
それにどんな意図があるかは測りかねるが、彼女には二つの魂が所狭しと収まっている。
つまり、それに触れろと言うことだろう。
そして、ネッカが異能によりルカの魂に触れるのと、何歩か足を進めたルカの背後に六つの人影が現れるのは同時だった。
その結果をネッカが見届けるよりも前に、ルカの魂の一端を覗いたことによる揺り戻しが彼女を襲う。
何も見えない。
いや、脳が処理できないのか、闇だけが彼女を襲った。
◆
財布を探しに来たはずが、路地に入った瞬間一瞬にして景色が変わった。
意味の分からないことを言っているのは百も承知だけど、一瞬にして目の前の光景が変わったのだ。
先ほどまで路地にいたはずの俺は別の場所にいた。
位置的に言えば、恐らく後方、自販機がたくさんある隠れ家的スポットと同じくらい離れているかもしれない。
しかし、目の前の情報だけを頭の中で反芻しても俺に答えは分からない。
異能が現れた世界で、こんなことがあっても不思議ではない気もするけれど、でもありふれた事象ではないだけに自分の頭を伺ってしまう。
ただ、俺が数歩前進した時、体の奥に違和感を感じる。
次の瞬間、意識が途切れたことにさえ気づかなかった。
◆
イグナイトのメンバーである六人が、ルカの後を最速で追うために使った方法。
それはルカと同様に「不敬」とみなされる行為を行うこと。
禁則事項に触れることでの一瞬の移動を成した。
ルカと彼らの位置は直線状、最短距離で領域外へと押し出そうとする特性を鑑みれば最終的な位置は恐らくほぼ変わらない。
そして、その目論見はあたり彼女の背後に出ることに成功した。
予想では、神域からすぐに離れると見なしていたこと、そして彼女がこの短い間でわずかに足を前方に進めていたこと。
これらの要因が重なり、一秒にも満たない意識の無駄とわずか一歩にも満たない移動距離がルカの行動よりも一足遅れる。
「───っ!?」
そして、彼らは驚く。
いや、驚く暇もなく
異能が使えないはずの神域の中で、燃ゆり破裂を繰り返して周囲にまき散らされた青の電流は六人すべてを無効化するに至った。
◆
「なっ」
距離は大分あるだろう。
だが、それでも十分に見て取れた。
ザンマが視界に映るのは青い電流の輝き。
雷が落ちたと身が舞うほどのその威力は空気を焼いた。
それだけで、彼方に向かった他の六人が戦闘不能に追い込まれたことは察することが出来た。
ただ、イグナイトの面々は恐らく異能を発動していない。
それを考えれば、ルカが神域内にいると予想できる。
だが、それでは道理が通らない。
「禁則地化」を利用していたのだから、「異能の禁」も対称ないであるはず。
それならば。
いやな予感が頭をよぎり、ザンマは奥歯を鳴らした。
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