フワフワでモフモフな小さい奴

654:名無しの悪党@荒らし活動中

M27

勇者ちゃんが楽しそうにおしゃべりしてます可愛い

ついでに隣のやつ殺していいですかどうぞ

 

655:名無しの悪党@荒らし活動中

なんか輩多くね

 

656:名無しの悪党@荒らし活動中

うめうめ

 

657:名無しの悪党@荒らし活動中

>>654

M26

やれるもんならどうぞー

 

658:名無しの悪党@荒らし活動中

あんま殺気出すなよおじいちゃんにバレるぞ

 

659:名無しの悪党@荒らし活動中

例のブツは無事到着とのこと

 

660:名無しの悪党@荒らし活動中

この焼き鳥屋グルメティア表追加で

非常にグッドです

つ『画像』

 

661:名無しの悪党@荒らし活動中

ネキに任せると確認作業が増えて嫌やわぁ

 

662:名無しの悪党@荒らし活動中

信じられるか?

あれ悪の組織の親玉なんだぜ?

 

663:名無しの悪党@荒らし活動中

>>659

了解

 

664:名無しの悪党@荒らし活動中

>>660

そこ美味いよな分かるわ

 

665:名無しの悪党@荒らし活動中

>>662

しかも隣の子の親殺してるんだぜ

 

666:名無しの悪党@荒らし活動中

>>661

確認したからって安全ってわけでもないのがやる気を削ぐ

 

667:名無しの悪党@荒らし活動中

>>660

3本くらい買っといて

後で金渡すわ

 

668:名無しの悪党@荒らし活動中

ネキ曰く「最初の村から出る準備」らしいけど

 

669:名無しの悪党@荒らし活動中

>>665

別に取り繕ってるとかじゃなくて、変に仮面かぶってるとかでもなくて素で接してるところが怖い

 

670:名無しの悪党@荒らし活動中

>>667

行けたら行くレベルで信用できない

 

671:名無しの悪党@荒らし活動中

>>669

仮面を被る(物理)

 

672:名無しの悪党@荒らし活動中

最初の村(国)

 

673:名無しの悪党@荒らし活動中

>>669

寧ろラスボスモードの方が取り繕った結果という

 

674:名無しの悪党@荒らし活動中

それはソレこれはコレができる上司の鑑にして人間の屑

 

675:名無しの悪党@荒らし活動中

>>669

罪悪感どこ…?ここ…?

 

676:名無しの悪党@荒らし活動中

>>670

ふーんだ!いいもんね!ワイまた今度師範ニキとちょっとお高めの酒飲む約束してるもんね!(#゚Д゚)

 

677:名無しの悪党@荒らし活動中

>>674

なお私情は頻繁に挟む模様

 

678:名無しの悪党@荒らし活動中

>>675

羊水と一緒に流されたんやろ

 

679:名無しの悪党@荒らし活動中

>>677

ラスボスが自我出すなよな舞台装置のくせに

 

680:名無しの悪党@荒らし活動中

そういやワイらは生まれた痕跡も無くなっとるわけやけどイッチの親ってどうなったんや?

 

681:名無しの悪党@荒らし活動中

ガチのサイコってあんな感じなんやろうなって

 

682:名無しの悪党@荒らし活動中

未だにイッチの扱いが組織一雑いの笑う

もしキレたら全部消し飛ぶのに()

 

683:名無しの悪党@荒らし活動中

>>681

ネキとかとは違う怖さあるよな

なんかリアルにいそうな怖さ

 

684:名無しの悪党@荒らし活動中

>>680

ある程度成長した時点でワイらと同じようになったはず

 

685:名無しの悪党@荒らし活動中

>>682

イッチは最強ランキングでとりあえず殿堂入りするタイプのキャラみたいなもんやし考えるだけ無駄

 

686:名無しの悪党@荒らし活動中

>>684

あの時イッチ自分から殺すの提案してきたよな

マジで震えた

 

687:名無しの悪党@荒らし活動中

>>682

誰もイッチが最後までキレることも本気出すこともないと思っとるし、なんならラスボス戦でさえ八百長して終わるんやろってぐらいの認識

 

688:名無しの悪党@荒らし活動中

M22

大通りまっすぐ行っとるがこれどこ行くつもりなんや?

 

689:名無しの悪党@荒らし活動中

イッチが一番エンジョイしとるし自由にやっとるのにワイらに文句言われる筋合いない

 

690:名無しの悪党@荒らし活動中

そう考えるとワイらマジ大物過ぎ

 

691:名無しの悪党@荒らし活動中

>>688

多分現場の痕跡確認しに行くつもりなんやろ

この街に伝手あるんかしらんけど情報買えるとこなんか知れとるし

 

692:名無しの悪党@荒らし活動中

寧ろ一番ヤバいのはイッチの中で勇者ちゃんとかに情が移ることやろ

 

693:名無しの悪党@荒らし活動中

インフレの到達点

 

694:名無しの悪党@荒らし活動中

>>683

リアルなんだよなぁ

 

695:名無しの悪党@荒らし活動中

こちら聖国

カルトニキが国外に布教してもええか聞いてきたんやけどこれどうしたらええんや

 

ちなタゲは王国

 

696:名無しの悪党@荒らし活動中

>>692

ソレはない

なんなら情が移っても頑張れ頑張れ言いながら殺しに掛かる

 

697:名無しの悪党@荒らし活動中

>>691

なんか残しとったっけ?

 

698:名無しの悪党@荒らし活動中

>>691

賢者が修復するとか言っとったけど本人おらんのやから行かんのじゃないん?

 

699:名無しの悪党@荒らし活動中

>>695

ふぁっ!?

 

700:名無しの悪党@荒らし活動中

ダニィ!?

 

701:名無しの悪党@荒らし活動中

>>697

子供は回収されたしソレ以外は特に

強いて言えば残留した魔力ぐらいか?

 

702:名無しの悪党@荒らし活動中

おちけつ

カルトニキなら全力で説得すればイけ……るか?

 

703:名無しの悪党@荒らし活動中

カルトニキ!?

 

704:名無しの悪党@荒らし活動中

>>701

下水ニキ大分エンジョイしたからな

 

705:名無しの悪党@荒らし活動中

ここでプレミはマジでヤバい

タイミング的にすれ違いにはなると思うけど邪魔入ったとか言ってキレたネキとニキで戦争なるぞ((((;゚Д゚)))))))

 

706:名無しの悪党@荒らし活動中

なんでだよ(素朴な疑問)

 

707:名無しの悪党@荒らし活動中

今じゃないだろ(憤慨)

 

708:名無しの悪党@荒らし活動中

>>695

出たな思想以外はぐう聖人

 

709:名無しの悪党@荒らし活動中

カルトニキくんさぁ…

 

710:名無しの悪党@荒らし活動中

イッチ呼ぶか?

 

711:名無しの悪党@荒らし活動中

聖国内なら自由にしていいって言ったはずなんですがその

 

712:名無しの悪党@荒らし活動中

正直ニキはあの見た目やから許されてるところある

 

713:名無しの悪党@荒らし活動中

帰るか

 

714:名無しの悪党@荒らし活動中

はいっクズ確定ぶっ殺します(純粋無垢な殺意)

 

715:名無しの悪党@荒らし活動中

ただでさえ帝国で師範ニキがアップを開始しました状態やのにカルトニキまで動き出したら国というか世界終わっちゃう

 

716:名無しの悪党@荒らし活動中

>>712

中身知らんかったら余裕でノンケ卒業するレベルやもんな

 

717:名無しの悪党@荒らし活動中

>>712

APP20は固い

 

718:名無しの悪党@荒らし活動中

>>711

ネキがちょっと自由に動き始めたから羨ましかったんやろ

 

719:名無しの悪党@荒らし活動中

見た目は正義側

性格も正義側

思想は吐き悪

 

720:名無しの悪党@荒らし活動中

やっぱ見た目は正義なんやなって

 

721:名無しの悪党@荒らし活動中

思想があまりにもあんまりやからなぁ

 

722:名無しの悪党@荒らし活動中

あの人自分の顔面の良さ理解しとるのがまた厭らしいんよ

 

723:名無しの悪党@荒らし活動中

ひ、人の考えは尊重してくれるから…

 

724:名無しの悪党@荒らし活動中

>>715

師範ニキって帝国でガチガチに動く感じ?

ソレこそ勇者ちゃん殺しそうやけど

 

725:名無しの悪党@荒らし活動中

近いうちにまた幹部会議開いてほしい

そんで全員イッチにぶちかまされて欲しい

 

726:名無しの悪党@荒らし活動中

いや、考え方によっては聖国編の匂わせもできるんか?

まだ大分先やけど

 

727:名無しの悪党@荒らし活動中

>>718

ちょっと(ちょっとじゃない)

 

728:名無しの悪党@荒らし活動中

>>724

だってそうでもせんと暴れ出しそうやし仕方ない…仕方なくない?

 

729:名無しの悪党@荒らし活動中

>>726

聖国の方は聖国で動いとんよな?

カルトの制圧とか結構前から力入れとるって聞くし

 

730:名無しの悪党@荒らし活動中

>>726

うーん悪くはない、悪くはないんやけどとりあえずニキが直で来るのはNG

端末係送るだけならOKって感じじゃね?

 

731:名無しの悪党@荒らし活動中

>>729

ちょくちょく精霊信仰とか魔人信仰とか見るけどあれはちゃうの?

 

732:名無しの悪党@荒らし活動中

面倒ごとになりそうやから王国は無しにして

帝国とか天峰ならええから

 

733:名無しの悪党@荒らし活動中

>>716

ガチで心酔したやつはちゃんと軒並み自殺しとるから無問題

 

734:名無しの悪党@荒らし活動中

単一宗教で成り立っとる国やしカルト系は煙いはず

ただあんまり派手に騒動起こされるとシナリオにヒビ入りそう…

 

735:名無しの悪党@荒らし活動中

幹部同時の衝突がいっちゃんダルい

 

736:名無しの悪党@荒らし活動中

>>731

その辺は田舎でも数えるぐらいしかないから放っとる

 

737:名無しの悪党@荒らし活動中

マジ災害

 

738:名無しの悪党@荒らし活動中

>>734

開闢の門の最終堤防にして究極の暴力装置イッチ

 

739:名無しの悪党@荒らし活動中

>>735

止めれる奴がおらんからな

師範ニキと引きニキの喧嘩もネキは野次馬になるしカルトニキはニコニコで見物しとるし

 

740:名無しの悪党@荒らし活動中

>>736

そういうのが後々響いてくるって歴史から学ばんのかね

 

741:名無しの悪党@荒らし活動中

やっぱこうなってくるか

こう考えると引きニキってちゃんと弁えとったんやなって思うわ

 

742:名無しの悪党@荒らし活動中

なんとしてでも止めねば(使命感)

 

743:名無しの悪党@荒らし活動中

>>740

これだから人類って奴ぁてんで鈍いんだ

 

744:名無しの悪党@荒らし活動中

シナリオが一気に動き出してウキウキなんやろみんな

多分一番楽しみにしとったんイッチとか幹部組やし

 

745:名無しの悪党@荒らし活動中

>>741

ノリが一番ワイらに近いからな

冷めとるように見えるけど結構愉快やぞあの人

 

746:名無しの悪党@荒らし活動中

カルトニキは軽い布教くらいなら譲歩してもええからなんとかして抑え込め

 

747:名無しの悪党@荒らし活動中

引きニキはかなりノリで生きとる

ノリ過ぎてヤバいことするけど

 

748:名無しの悪党@荒らし活動中

とりまカルトニキの説得は折衷案として王国以外の国外布教で頼む

それも広めすぎると支障出そうやから程々で

 

749:名無しの悪党@荒らし活動中

>>744

カルトニキがウキウキ…?

 

750:名無しの悪党@荒らし活動中

>>747

転移前とか魔法無かったのに魔王みたいなことしとったって聞く

 

751:名無しの悪党@荒らし活動中

>>747

あの人インテリ気取っとるけど結構バカよな

常時深夜テンションみたいな感じで

 

752:名無しの悪党@荒らし活動中

師範ニキがwktkしとるのはそう

 

753:名無しの悪党@荒らし活動中

>>750

パンデミック起こしたんやっけ?

ハカ◯ジュウとかグリー◯ワールズみたいな

 

754:名無しの悪党@荒らし活動中

>>748

注文がむず過ぎるってばよ(´Д` )

でもまあなんとかするわワイも困るし

 

755:名無しの悪党@荒らし活動中

ネキは知らんやけど他二人も聞く限り似たようなことしとるっぽいんよな方向性は違うが

 

756:名無しの悪党@荒らし活動中

まあワイら程度の悪党じゃ限界があるしナチュラルボーンなヴィランおるのは助かるよな

これも邪神様の采配かね

 

757:名無しの悪党@荒らし活動中

>>753

いつ聴いてもエグすぎる

せめてバイオレベルにして欲しい

 

758:名無しの悪党@荒らし活動中

そして誰もいなくなった……

 

759:名無しの悪党@荒らし活動中

>>755

どいつもコイツも経歴がラスボスすぎる

 

760:名無しの悪党@荒らし活動中

幹部って“ホンモノ”やんな

 

761:名無しの悪党@荒らし活動中

これもうわかんねえな

 

762:名無しの悪党@荒らし活動中

>>758

草も生えんて(焼け野原)

 

763:名無しの悪党@荒らし活動中

>>759

もうお前らがラスボスで良いよ

 



























 王国の民は、何よりも強かであった。

 少女は、それを痛いほどによく知っていた。


 父が亡くなった折、王国の誉れたる英雄が世を去ったその時でさえ——民は嘆きに沈みながらも、なお自らの足で立ち続けていた。


 繋ぐ手は切れず。

 踏み出す足は乱れず。

 志し一つに。


 それは、あたかも「この国は終わらぬ」と、その背中で示さんとするかのような在り様であった。


 ただの宿屋の女将であっても、小さな工房を開いた老職人であっても。

 一人ひとりが、大地に太く根を張る老樹のごとく、確かにこの国を支えていたのだ。



「———つまり俺が言いたいのはさ、友達って、一緒にタンスの角に小指をぶつけた痛みを、笑いながら分かち合えるような仲であるべきだと思うんだ。そうじゃないと、さ…ほら、色々と、上手くいかないんだよね」



 先ほど、街の近くで小規模な騒乱があったにもかかわらず、なお道を行く人影は絶えない。

 その様子を目にしながら、少女は改めて、民の逞しさを胸に刻む。


 とはいえ———。


 遠くの空に、僅かながらも聞こえる爆音。足元に響く、余震のようなかすかな揺れ。

 どちらか一つでもあれば、それだけで常とは違う事態が起こっていると察するには十分であった。


 その異変の一端が、自らの行動によってもたらされたものであることを思えば、少女は胸の内に深い反省を抱かずにはいられなかった。



「へえ……お兄さんも大変なんだね」



 王都の正門をくぐり、しばしの間、丁寧に敷き詰められた石畳の道を歩く。少女たちの一行はやがて、次第に人通りの多くなる街道へと足を踏み入れていた。


 空は未だ明るく、その蒼さを保っているが、あと幾刻かもすれば、遠くの山際は茜に染まりはじめるだろう。


 そうして暫く通りの端を歩いている時だった。



「———うわ!」



 突如、路地から飛び出した小さな影がアリアに突進した。

 相当な速度で接近したその存在に対し、すかさずジークは間合いを詰め、軌道を逸らす様に受け流す。



「ふぎゅ———!」



 驚きに二、三歩ほど軽くよろついたアリアに対し、小さな何かは弾かれる様にして地面を転がる。



「大変申し訳ございません、アリア様。何処かお怪我はされておりませんか」


「ううん平気だよ。それよりも……」



 ジークは静かに膝をつき、アリアの乱れた衣の裾を整えながら、低く言葉を発した。

 だが、アリアの視線はその手元ではなく、さらにその先へと向けられていた。


 舗道の片隅に、毛玉のようにうずくまる小さな影がひとつ。

 その傍らにしゃがみこみ、じっと覗き込むアインスの姿がある。


 ちょうどその時、ふさふさとした塊の中で、閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がった。

 小さな瞳が、ぱちりと音を立てるように開かれる。



「ひ、ひでぇ目に遭ったぜぇ……」


「大丈夫そ?」



 地に伏していた小さな影が、転んだ子どもがそうするように、のそりとゆっくり身を起こす。

 その瞬間、頭頂からぴんと伸びた二本の耳が空気を裂くように立ち上がった。

 体躯に対してあまりにも長く、白い輝きを帯びたそれは、風にわずかに揺れ、無言の存在感を放っている。


 肌は雪のように白く、髪もまた同じ色をしていた。

 艶やかで柔らかそうな長い髪はひとつに編み込まれ、背中を伝うように揺れている。


 瞳は紅玉を思わせる澄んだ赤。

 何かを強く訴えるような色でありながら、その表情はどこか茫洋として、緩やかな空気をまとっていた。


 ひと目でそれと分かるほど小柄な体。

 身に纏っているのは、墨色の袴に素足のままの下駄、丈の短い白のタンクトップのような上衣。そして、着崩した青の羽織が肩から流れ、白いマフラーが喉元でふわりと揺れている。

 首もとには、夜の空を象ったような三日月の飾りが、きらりと冷たい光を湛えていた。


 その容貌には、年齢や性別の輪郭がまだ定まりきっていない。無垢で中性的な印象が強く、まるで森に棲む幻の小動物を思わせる。


 動作のひとつひとつがどこか間延びしていて、それでいて不思議と目が離せない独特の緩やかさがあった。



「ああ、オレぁ大丈夫だが……いやぁー悪ぃな嬢ちゃん、ちぃと急いでたもんでぇ———って」



 ———獣人、あるいは獣人ズーマ

 中でも兎人とじん兎人ラビスと呼ばれる種族に、それは最も近しい特徴を持っていた。


 その小さな存在は、すぐ傍らに転がっていた槍を拾い上げた。

 布が巻かれた刃先がわずかに揺れ、陽の光を曇らせる。

 槍を片手に携えたまま、兎人はあどけなさの残る声で、やや抑揚に乏しく、そして僅かに訛りを帯びた調子でアリアの方へと視線を向けた。


 どうやら直前、自分が誰かと衝突しかけたことには気づいていたらしい。


 そしてその目が、アリアの姿をしっかりと捉えた、まさにその直後。


 少年とも、少女とも判別しがたい中性的な容貌をしたその存在は一瞬眉を顰めると、無遠慮とも無垢とも取れるまなざしをもって、アリアの全身をゆっくりと見定めはじめた。

 頭のてっぺんから、足元の影に至るまで、目で撫でるようにじっくりと。


 不意を突かれたアリアが僅かに身じろぎし、隣のジークも警戒心を滲ませる。

 だが、当の兎人は飄々とした様子のまま、しばし見つめ続けたのち——


 まるで何かを確かめるように、あるいは言葉を探して迷うかのように、ほんの少し口ごもりながら、問いかけた。




「あ、あのよぉ、嬢ちゃん…もしかしてぇオメェさん…き、貴族ってぇ奴かぁ……?」


「え? う、うん。そう、だよ?」



 その瞬間、ただでさえ白い肌からサァー…と血の気が引いていき、見る間に青白く染まってゆく。

 まるで冷たい風が内側を吹き抜けたかのように、驚きと動揺が一気にその顔を覆った。



「あ、ぉあ…ぁぁ……」



 ガクガクと震え出す兎人。

 その光景はまるで自分が虐めているかのようで、何もしていないのに妙な罪悪感が湧いてしまう。


 そうして何処か具合でも悪いのかと、見るに堪えなくなったアリアが問いかけようとした刹那、兎人は盛大に飛び上がり———



「———この通ぉりっ!!どぉか!!どぉか首だけは勘弁してくれぇっ!!」



 ———突如、土下座をしだしたのだった。



「え、え? ええ!? 何!? どうしたの!?」



 うわんうわんと号泣する兎人を前に狼狽するアリア。


 ジークに目配せをするも、さしもの彼とてこの状況には困惑気味な様子であった。

 アインスに至っては顎に手をやりながら珍生物でも見るように干渉している始末である。



「ち、違ぇんだぁ! さっきのは、さっきのにはぁ訳があってよぉ〜!」


「お、落ち着いて! 別に気にしてなんかないよ! ボクも気づいてなかったし、ね!?」


「アリア様もこう言っておられます。とりあえずはお立ちになってください」



 慌てた様子でお互い様だと諌めるアリア。

 ジークはそれに続くようにして、そっと手を差し出し、立ち上がるよう促しながら清らかな布を一枚、差し出した。

 アインスはといえば、どこか無駄に神妙な表情を浮かべたまま、やや離れた位置から事の成り行きを見守っている。


 そうした二人の手助けを経て、やがて小さな体を落ち着かせた兎人が、軽く身じろぎをしてから三人の方へと向き直る。

 白い長耳がふわりと揺れ、その目元にはようやく静けさが戻っていた。



「改めて悪かったなぁ貴族の嬢ちゃん。ちぃとチンピラ撒いてたもんでよぉ」


「何かあったの?」


「なぁんてこたぁねぇよ。割の良い仕事だと思ったらよぉ、チンピラに汚ったねぇ商売の片棒担がされそぉになっただけだぜぇ」


「……大丈夫なの、それ?」


「おうよぉ、もぉ完全に振り切ってんでぇ気にすんなよぉ。あとは憲兵? とかいう奴らの仕事だろぉよぉ」



 そういう問題ではない、とは思うも、そう言うのであれば横槍を入れるのも余計かと割り切る。



「それにしても随分な怯えようだったね。この子にそんな怖いところなんてないと思うんだけど」


「…だってよぉ、アレだろぉ? 貴族って奴ぁみぃんな朝一番に気にくわねぇ奴の首を刎ねさせんだろぉ? そんでそん時の絶叫で目ぇ覚めるんだろぉ? 里のみんなは言ってるぜぇ、貴族はみぃんな人喰いだってよぉ」


「違うよ!?」


「ホッホッホッ、なんともまあ……」


「凄いね、偏見が。めちゃくちゃ目覚め悪そうだし、色んな意味で」



 とんでもない偏見に少なくないショックを受けるアリア。これにはジークも絶句してしまう。


 しかし、これは納得するところでもある。

 獣人は人類史においては苛烈な差別の対象となった過去があり、関係性が解消され始めたのもつい最近のことである。


 森人などの旧人類とは違い、比較的近しい人種でありながら大きな線引きがなされていたことは、未だに深い溝となっている地域もある。


 幸い王国においてはそう言った差別的な思想は駆逐されつつあるものの、王朝の目が届きづらい田舎にもなれば風潮として色濃く根付いていることもあるのだ。


 それを鑑みれば、この兎人の反応も無理はないと言えるだろう。

 決して大袈裟とも取れない様子であったことに、アリアの内には影が差していた。



「しぃっかし、いやぁ良い貴族も居るもんだなぁ! 里の奴らにも言って聞かせとくぜぇ!」


「ありがとう、お願いするよ。流石に会う度に怖がられるのは、ね……」


「悪かったよぉ……あ、そぉだ!」



 シナシナと萎れる耳が再びピンと立ち、何かを思い起こした様子でアリアに顔を合わせる。



「此処で会ったのも何かの縁だぁ! なぁ? そぉは思わなねぇか、貴族の嬢ちゃん?」


「ん? うん、そうだね」


「そぉだろそぉだろぉ? だからよぉ———」



 そう言いながらピコピコと耳を跳ねさせ、下からアリアを覗き込んでいた兎人は、三人の前に膝を突き———



「———ちょっとだけ金、貸してください」



 ———本日、二度目の土下座をしたのだった。


——————

————

——













「———いやぁ恩人! アンタらぁ命の恩人だぜ嬢ちゃんよぉ!」



 同じような流れを経て近くの料理店に入った一行の向かいで、兎人———ハヅキというらしい———はバクバクと串を齧っていた。


 曰く———



「オレぁ傭兵やってんだけどよぉ……一年前に一回やったっきりなんだよなぁ。なぁんもしてなくたって奴さんから呼び出しがある訳でもねぇしなぁ。後は……まあ、日銭稼いでんな。一応蓄えはあるしよぉ」



 ———そして今、その蓄えさえも底を尽こうとしている、らしい。


 一通りの話を聞いたアリアは端的に尋ねる。



「もっと依頼受ければ良いんじゃないかな? その槍だって凄く良いものに見えるけど」


「勿論、わぁかってるともよぉ。こりゃあ《逆廻梟さかみくしさし》っつってよぉ、家宝ってぇヤツだしなぁ。そりゃあ受けりゃあ金は入ってくんだろぉが……」



 言葉尻が弱くなり、目を逸らす。

 不思議に思ったアリアは首傾げながら続きを促した。



「?」


「いやぁ、なんつーかよぉ……起きねぇんだよなぁ」



 側の大きな槍を撫でながら、ハヅキはポツリと呟く。


 その言葉を受けて、アリアはわずかに視線を槍へと向けた。

 紛れもなく、“起きない”という言葉に引っ掛かりを覚えたためだった。


 その外見には特段目を引くような装飾は見当たらない。

 けれどアリアはそんな表現が適した、異質な存在を知っている。


 ———意思を持つ宝具。


 それは、ただの武具ではあり得ない。

 世界にいくつと存在しない、極めて稀少で、極めて異様な存在。

 作られた経緯も、宿る意志の正体も一定ではなく、魔術的な干渉によって意図的に生まれるものもあれば、死者の怨嗟や信仰、あるいは奇跡と呼ぶほかない偶然が生んだものもあるという。


 アリアは、自身が持つ《栄光の剣グラントリア》を思い浮かべていた。

 それもまた、担い手を選ぶ———ある種、意思を持っているとしか言いようのないものである。

 それゆえにこそ、その剣はこの世界でも一握りの頂として知られている。


 目の前の槍に、それと同じ気配があるのだろうか。


 アリアの興味が、ゆっくりと、しかし確かに槍へと惹き寄せられていった。

 その無口な一振りが、ただの鉄ではない可能性を、その沈黙の中に宿していることを。



「えっと、それって———」


「———やる気がよぉ」


「ただの穀潰しだね。その辺に捨てようか」



 だが帰ってきたのは期待外れも甚だしい、怠け者の決まり文句のような言葉であった。


 珍しく、アインスが驚くほど白けた目を向けている。



「だからよぉ、大人しく親の脛齧ってたんだがよぉ」


「黙ってニンジン齧ってろよ」


「でよぉ、そぉんなもんだからとぉとぉ母ちゃんに追い出されちまってよぉ……はあ、薄情だとぁ思わねぇか、オイ?」



 ハヅキはチラッとアリアを見る。


 その目には抗いがたい悲壮感が詰まっている。しかし、その奥には微かに、ほんの微かに、しかし見え透いた打算的な思惑が潜んでいた。


 この兎、どうやら可愛らしい見た目とは裏腹に随分と意地汚い部分があるらしく、彼女の優しさに味を占めているようだ。


 アリアはそんな嫌らしい視線を受けながら悩みつつ、困ったように苦笑いする。



「うーん………妥当かも」


「っ!? そんなぁっ、こんな優しそぉな嬢ちゃんまで……! オレの周りにぁあ敵しかいねぇのか……!?」


「どちらかといえば、ハヅキ様こそが社会の敵と呼ばれる類の方なのかもしれませんな」



 その言葉が最後の一撃となったのだろう。

 ゴッ、と鈍い音と共にウサギ頭が机に沈んだ。


 バッサリと斬り捨てられた赤い瞳から情けない涙が流れ落ちる姿は見るに堪えない。

 灰汁の抜けた純粋な悲壮感が滲む子供を前に、アリアも思わずフォローを入れる。



「で、でも帝国に行けば傭兵の依頼は一杯あるし! 中には、凄い沢山の報酬が出るような依頼だってあるよ! 最近は特に大変だって聞くし!」


「……ホぉントかよそりゃあよぉ。貴族は口ばぁっか達者だって聞くぜぇ?」


「さっきの事もう忘れたのかな、このウサギ頭」



 口を尖らせて疑るハヅキ。

 横からアインスの乾いた風のような呆れが混じる声が飛んでくる。



「そぉは言うがよぉ、若ぇの。オレみたいなオッサンになるとよぉ、そのよぉ…分かんだろぉ…?」


「いや分かんないけど。…っていうかさっきから思ってたけどさ、キミ幾つなの? というか男だったの?」



 アインスの問いに、アリアも釣られてハヅキの方を見遣る。

 ハヅキは“何言ってんだコイツ”などと言ったセリフでも飛んできそうな表情を彼へと向ける。



「どっからどぉ見ても男だろぉがよぉ。つーかなんだぁオメェさん、ナンパかぁ? コレがナンパってぇヤツなのかぁ? 趣味悪りぃぞオメェさん。オレぁもう四十のオッサンだぜぇ?」


「え、その見た目で…? いや、てかその年で親の脛齧ってたの…?」


「えぇ…初めて見たけど、獣人ってメアリスさん達みたいな感じなのかな」



 隣で半ば睨むように視線を向けるアインスとは対照的に、アリアは困惑を隠しきれぬ面持ちでハヅキへと視線を送っていた。


 その正体が男であると知れただけでも驚きはしたが、それ以上に衝撃だったのは——見た目こそ少年にしか見えぬその姿で、実際には自身の倍以上の時を生きてきたという事実である。

 そして何より、これほどの長命を経てなお、なおも親の庇護のもとで“食う・寝る”を悠然と繰り返してきたという怠惰の極みのような生活に、アリアは内心で戦慄すら覚えていた。


 見目だけを取り上げれば、華やかな貴族たちが目を輝かせて札束を積み上げかねないほどの美貌を持つ。

 まるで芸術の彫像のように整った顔立ち、どこか陰のある細身の輪郭、気だるげに揺れる長耳の曲線。

 だが、その実態は———世を斜めに見ながら寝転ぶ、どうしようもなく物臭な中年そのものだった。


 見かけと中身があまりにもかけ離れている。

 その落差が滑稽にすら思えるほどで、アリアはただまじまじと見つめるほかなかった。


 森人といい、この兎人といい。

 世界はまだまだ、自分の知らぬ不条理と不可思議に満ちている。


 ———そう思い知らされる、そんな瞬間だった。



「うっせぇなオメェさん。今はもぉ齧ってねぇよぉ。立派……にゃあ働いてぇねぇが」


「うん、まず働こうね。でも凄いよね、ウチの知り合いにも似たような感じの居るけどさ。マジで理解できない」


「オメェさん、それぁ褒めてんのかぁ?」


「褒めてる褒めてる。はいご褒美にニンジンあげる」


「おぉ、オメェさん良いやつだなぁ! あーむっ!」



 眉間に皺を寄せるハヅキに添え物のニンジンをフォークで差し出せば、途端に顔を晴らせて齧り付く。

 まるで愛玩動物に餌を与えている一部始終にも思える一幕は、見てくれだけならば微笑ましいものだ。


 アリアは気を取り直して再度尋ねる。



「傭兵はさっき言ってた一回以外やってないの? まだ駆け出しみたいな感じってこと?」


「どぉだろぉなぁ、依頼は後にも先にもその一回だけでぇ……まあ、どっちかっつーと駆け出しだなぁ」


「駆け出しド真ん中だよね。何ちょっと意地張ろうとしてんのこのド素人」


「なんだぁオイ、兄ちゃん。男ならよぉ、見栄張りたい時もあんだろぉ、オイ? こぉんな別嬪さんの前だぜぇ?」


「もうバリバリに剥がれてるよその見栄。跡形もないよオッサン」


「なにおぅ」



 真のマイペース此処に極まれり。


 彼の周りだけ時間がゆっくりと流れているかの様にさえ感じる中、同じく自由奔放なアインスと隣で待機するジークが言葉を挟みつつ、いくつかの会話を繰り返した。


 本来ならば簡単な情報の一つや二つないかと詮索するところだが、そんな簡単な情報さえ出てこなさそうだということは、何となく察せられる。


 そうして一行から粗方の話を聞いた後、ハヅキは頬杖を突きながら悩ましげに溢す。



「しっかし…ぅんなら行こうかねぇ、帝国」


「それがよろしいのではないでしょうか。帝国であれば傭兵の需要は我が国以上でございますし、簡単な依頼でも報酬はそれなりにございましょう」


「そりゃあ……良いかもなぁ」


「もし必要なら送るよ? ボクらも帝国行くし」


「…………………うんにゃあ、そこまで面倒かけるわけにもよぉ、いかねぇよ」


「だいぶ迷ったね」


「しょーがねぇだろぉよぉ…」



 わずかな間を置いて、アリアは低く「よしっ」とひと言だけ呟くと、すぐ傍らに立てかけてあった槍へと手を伸ばした。

 細くしなやかな指が柄を確かに捉え、軽やかに引き寄せる。


 続けて、身を翻すようにしてぴょんと跳ね上がるように席を立つ。

 動きは無駄がなく、軽快で、肩にかかった羽織がふわりと浮いた。


 着地と同時に、足元の下駄が石床を打ち、小気味よい音を響かせる。

 その音が、周囲の空気に小さな輪を描いて消えていった。



「もう行くの?」


「おうよぉ、でなけりゃ金がねぇもんでよぉ。世話んなったなぁ、飯ぃ美味かったぜぇ」


「どういたしまして」


「まあよぉ、こぉんなんでもよぉ、そこそこ腕に自信はあんだ。必要になったら呼べよなぁ。飛ぉんで駆けつけるぜぇ」


「どうせまたご飯たかるつもりでしょ」


「まあ、そうかもなぁ。そんときゃよろしく頼むぜぇ。ほんじゃ、またなぁ」



 彼は去り際、口元を調子よく吊り上げると、どこか景気づけのような明るい声を場に残して歩み去っていった。

 その声が消えるのと入れ替わるように、場には妙な静けさが落ちる。


 一人減っただけにしては、静寂がやけに深い。

 そう感じるのはおそらく気のせいではないのだろう。


 一呼吸おいて、アリアは立ち上がる。



「それじゃあ、ボク達も出よっか」


「そうだね。というか、びっくりするぐらい堂々と奢られて帰ったね」


「ま、まあ良いんじゃないかな。元気出たみたいだし」



 そんな会話を挟みつつ、支度を整えた三人が連れ立って店の扉をくぐる。

 扉がゆっくりと押し開かれ、外の光が細く差し込んだ。

 木枠の下で小さく鈴が鳴り、足音と共に三つの影が石畳へと伸びてゆく。


 通りには微かな風が吹いていた。暖かく、乾いた空気が衣擦れの音をかすかに運ぶ。

 陽はまだ高く、街路を照らす光が屋根瓦の縁を白く染めている。


 そうして三人はゆるやかに歩き出す。

 ささやかな新たな出会いを経て、彼らは元の目的へと再び向かい始めるのだった。

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