P.22
*
二日間の自宅謹慎と反省文の提出。それがアネゴに下された処分だった。
想定外に軽い処分は、示しがつかないから形式的に下された、という印象を拭えなかった。
卒業した後で知ることになるのだが、翌年度、桜木先生は転勤になる。転勤先は、過疎の町にある廃校寸前の高校だ。
オトナの事情など知る由もないが、先生は身を挺してアネゴを
当日、一限目をサボった二年生がいた。お気に入りの、校舎の陰。ヤマボウシの木々に遮られて、どこからも死角になる場所。そこで彼は早弁を楽しんだ。ただし、その場所の近くには校長室の窓があった。
二年生は、室内から漏れ聞こえるやり取りに、ご飯粒を噴き出しそうになった。
卒業後、ボクが伝え聞いた話では、あの日、校長室でこんな寸劇が展開していた──
校長「金子 流美の退学はもう決まったことだ。今さら変更はないよ」
桜木「生徒の未来を
校長「高認(高等学校卒業程度認定試験)があるだろう。あの子の学力ならだいじょうぶ。何も変わらんじゃないか」
桜木「変わりますよ。母校に見捨てられたという心の傷が残ります。それに、子供たちはオトナのすることを見ています」
校長「誰に向かってモノを言っている」
桜木「四年前、グラウンド拡張工事に関わる会計について、不明朗であるとの指摘がなされました。うやむやで収まりましたが、ワタシは内部調査委員の一人でした。当時の校長はアナタの伯父さま。関係業者は奥さまのご実家」
校長「何が言いたい?」
桜木「表に出なかった資料を持っています」
校長「……脅迫か。まるでヤクザだな」
桜木「ヤクザにも悪魔にもなります、子供たちを
校長「──なるほどな。キミが出世しないわけだ」
桜木「お褒めの言葉と受け取ります」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます