第16話 討伐報酬
「いらっしゃい。」
ティーダが受付にて微笑む。
「今日は討伐依頼の報告のな来たアル。イクト、出すアルヨ。」
「はい。」
イクトは3体分のゴブリンの討伐部位を取り出した。
「はい。確かに。これで討伐依頼は完了ですね。それでは報酬が……」
ティーダは用意しておいた報酬用の袋を取り出し机の上にドンッと置いた。
「え?」
これはどう見てもおかしい。ゴブリン3体分の報酬である大銅貨5枚の音じゃない。明らかに多い。
「ゴブリン98体にホブゴブリン1体。それと集落討伐の報酬として銀貨25枚になります。」
「ええ!?」
これにはヤオもビックリだ。集落討伐後は証明部位も取らずにすぐに帰路へとついた。
なのにギルドは正確な数を把握している。
「ヤオさん集落の討伐部位を集めてくれてたんですか?」
イクトが問いかけてきた。
が、聞きたいのはこっちアルね。これはきっとファナとかいう女の仕業ネ。そうとしか考えられないアル。
それにティーが合わせろ的な合図を出してきてるネ。
「そうアルヨ。その分は先に渡しておいたアルね。」
「そんな、わざわざすいません。そうだ!ティーさん。これ両替出来ます?」
「え?どうしてですか?」
「僕は渡した3体分の報酬だけ受けとるので、後はヤオさんに。」
「な!何を馬鹿な事言うアルか?これはイクトの正当な報酬ネ。」
「けど僕は結局ヤオさんに助けてもらった訳で。」
「倒したのはイクトヨ。それに教官としての報酬はギルドから出てるネ。だからそれはイクトのお金アル。」
「うー、分かりました。なら今度これでお礼させてもらいますね。」
「そうネ。そうしてくれた方が良いネ。それに防具とか装備を買うのにもお金は必要ネ。それで何か見繕うと良いネ。」
「分かりました。ではありがたく受けとらせてもらいます。」
そう言うとイクトは大事そうにお金を受け取った。
「それじゃ早速今晩どう?もちろんイクト君の奢りで。」
「って何でそこでティーが出てくるネ。」
「いいじゃん、いいじゃん。私もたまには若い子に奢られたいよ。」
そう言ってティーダは頬を膨らませる。
「何を言うアルか。年上としてみっともないネ。」
「いや、いいですよ?ティーさんにもお世話になっていますし。ヤオさんはああ言ってくれましたけどこのお金は僕の力で手に入れた物とは思ってないので。なのでこれはお世話になった人に使うのが良いかなって。」
「イクト……。」
何て良い子アルか。何かこうイクトといると胸がポカポカするネ。
「ですので改めてヤオさん、ティーさん。今晩空いてます?」
「「もちろん!」ネ」
咄嗟に答えた2人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇ユイナside◇◇◇
「……憂鬱ね。」
王女としての公務をこなしながらユイナは呟いた。
イクトとヤオが2人でギルドへ向かったのを見送ったユイナはイクトが自分の元を去るように感じやるせない気分となったのだ。
「ユイナ様。イクト様はそんな人ではありません。」
そんな心情など一言も言っていないのにそれを察したファナがフォローを入れる。
「そうね。それは分かっているのだけど……。」
書類を前に手の止まるユイナを見てファナは
「こんな公務などさっさと終わらせましょう。そしてイクト様の元へと行くのです。」
そうすればユイナ様の心配は晴れるに違いない。
「!そうね。そうよね。ファナの言う通りだわ。このまま書類とにらめっこしていては不安が募るばかりだわ。」
「そうです。それが良いでしょう。ですので頑張りましょう!」
ユイナ様のヤル気のスイッチが入ったようで何よりです。凄い勢いで書類の山が消化されていきます。
「そう言えばファナ。」
「はい?何でしょう?」
「今回はありがとうね。イクトの安全を確保してから討伐証明部位を取りに戻ったのでしょう?」
「え?あ、はい。」
ファナはユイナへの報告は簡潔にゴブリンの集落でイクトが戦いほぼ殲滅したが、力を使いきり倒れた。なので討伐証明部位は私が回収してギルドに届けたとしか報告していない。
「何故お分かりに?」
「少し考えれば分かるわ。あなたの事どから倒れたイクトを危険に晒したままにする筈がないもの。となれば後で戻ったとしか考えられないわ。」
流石はユイナ様。
「あなたも疲れたでしょう?この書類にはまだ時間がかかる。少し休みなさい。」
「いや、しかしそんな訳には。」
「この王宮の中で何がある訳でも無い。それに書類仕事だけだもの。私だけで十分片付けられるわ。」
確かにユイナ様であれば私の手伝いなど些細なものでしかない。せっかくの主の気づかい無下にするものではないか、
「分かりました。それでは隣の部屋で休ませてもらいます。お出かけの際にはお声がけをお願いしますね?」
「分かってるわ。だから安心してゆっくり休んで頂戴。」
そう言い残してファナは隣の部屋へと向かった。
「さて、それじゃ気合いを入れて片付けましょうか。」
部屋に残されたユイナは不適な笑みを浮かべるのであった。
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