オーギュスタン・バーナー


十二、ララの日常


「愛しいララへ フラウより


ララ、僕も天界から、君の仕事する姿を見ているよ!君、案外友達作って、楽しそうにしているじゃないか。僕もほっとしている。それに、ジェハ神から、100年と言う刑期は、本当に恩赦に近い、と知り、少し考えを改めた。だが、僕は、それでも、君を救い出すことは諦めていない。

 ただ、最悪、手立てがなかったら、100年間、君をここで待つことにする。ララ、お願いだから、何も起きないことを願う。

 ララ、君を自殺させ、こんなことにして本当にすまない。重ねてになるが、僕はそのことばかり考えている。日夜、眠れないぐらいだ。

 愛しいララが、毎日、少しでも楽しい日々を送れますように。

 あと、僕のことは、忘れないでほしい。

 できれば、ララからも返事がほしい。

 この不死鳥に、足に手紙をくくりつければ、僕のところへ届くから。

                                      フラウより」


 こんな手紙を受け取ったのは、ララがが仕事をし始めてから、1か月後のことだった。アレクセイと仕事をしているときだった。また、あの不死鳥がやってきたのだ。

「夫さんから??」と、アレクセイ。

「はい・・・手紙の返事、ちょうだい、って」と、ララ。

「次からだね」と、飛び去った不死鳥を見て、アレクセイが太陽の光に目を細める。

 仕事は、雨の日は休みだったが、それ以外は毎日のようにあった。一日、6時間ほど、ララ達ユニコーンは、湖やため池に赴いて、人間の夢を管理する仕事に就いていた。

 経験豊かなユニコ―ンが、神々やエルフを呼ぶ人間のところに現れる仕事も、たまにあった。

 そんなある日。

「クラリス、今度、僕についてくる??」と、アレクセイが言った。

「え??どこにですか?」

「えーとね、リストに載ってたんだけどね。神々から送られて来たリスト。人間のリストなんだけど、なんでも、病気で妹を失い、黒魔術を使って生き返らせて、失敗して悪魔と契約することになったいっぱしの魔法使いが、死にたいと言っている。死んで、悪魔との付き合いを断ちたいと。この魔法使い、そんなに魔術に詳しくないらしくてね、悪魔と契約したまま死んだら、魂が悪魔に食われて、冥界のアンデッドのような使い魔に転生することを知らないらしい。僕たちで教えてあげて、悪魔とのつながりを、僕らで断ってあげる仕事なんだ。ユニコーンにはできる」と、アレクセイ。

「・・むごい話ですね。分かりました、ついていきます」と、アレクセイと今ではすっかりペアを組んでいるララが言った。


「じゃあ、二人には行ってもらうけど、クラリス、君は瞬間移動の方法知らないよね。経験50年未満のユニコ―ンには教えてはいけない決まりなので、アレクセイと手をつないで、アレクセイに連れて行ってもらって!」と、カーディフが言った。

「はい、分かりました」と、ララが言った。

 ララは、アレクセイと手をつなぎ、目をつむり‥・気が付いたら、空気の渦に包まれて、メルバーンのとある町にいた。

「ふう、まあ無事にはついたね。ここら辺のはずなんだ」と、アレクセイ。

「ちょっと住民に聞いてみよう」と、アレクセイが言った。

 二人は、この村に住む魔法使いの中で、最近妹さんを亡くした魔法使いがいないか、聞いて回った。

「それなら知ってるけど・・・あんたら、よそもんだろ??みたところ。どうしてそんなこと知ってるのさ」と、中年のおばさんが二人に言った。

「いえ、それなら、その魔法使いに、この手紙を渡してほしいんです。自分たちは、賢者様の使いの者です。使いの少年です」と、アレクセイが嘘をつく。

「ああ、そうなのかい。偉いねぇ!!じゃあ、渡しといてあげる!」と、そのおばさんが言って、手紙を持って立ち去った。

「よし、手紙は渡せたし、クラリス、僕らも例のポイントに行こうか」と、アレクセイ。

「例のポイントって?」と、クラリスが聞く。

「その魔法使いとの待ち合わせのポイント」と、アレクセイ。

 二人は、夕暮れの町の中、手をつないで、町を歩き、街はずれの古い、今は使われていない墓地へと向かった。

 夕刻を少し過ぎ、19時になった。待ち合わせの時刻だ。

 やがて、墓地の入り口付近に、黒いローブをまとった魔法使いらしき男が現れた。

「やあ、オーギュスタン・バーナーさん。自分は、・・・」と、アレクセイが言いかけて、その男が、

「賢者様の使いの方だって・・・!!本当か?!?それならありがたい!!事情は知ってるのか??少年」と、その魔法使いが血走った目で言う。荒い息だ。

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