ユニコーンの魔法

                 *


「ララが泣いてる!!」と、それを天界のジェハ神の屋敷から見ていたフラウが呟いた。

 大きな鏡で見ていたのが・・・

 鏡に映し出された、頭上から見るようなララの泣き姿に、フラウは胸を締め付けられる思いになった。

「もっと近く見せて!!」と、フラウがジェハ神に言う。

「それは、奥様が望まないんじゃないかなあ???」と、ジェハ神。

「ララが泣いてるよ・・・僕、行かなきゃ」と、フラウが言う。鏡に手を合わせ、なんとかしようとするが、鏡に水の波紋のようなものが広がるだけで、中へは入れない。

「あの二人が何か言ったわけでもないのは君も分かってるだろうが、どうもクラリスさん、君との思い出で泣いているようだよ」と、ジェハ神が小さな黒板に現れた魔法陣から意図を読み取り、言った。

「なんだって!!?!」と、気が狂いそうになりながら、フラウが叫んだ。

「ジェハ神!!」と、フラウが、黒板に見入ってるジェハ神の胸倉をつかんでいった。

「いいから、僕をララのもとへ連れて行ってください!!今すぐに!!!さあ!!!早く!!」

「ちょ、ちょっと、フラウ君、落ち着いて!!」と、ジェハ神が慌てて言う。

「げほっ、げほっ・・・あのね、君を下界に送ることは、もう少し待ってほしい!!僕だって、送ってやりたいが、ばれたら大変なことになる!!その代り、手紙なら、送ることは許されている。一部の人のみ。例えば、賢者とか。君は賢者でもないし、どうやら下界の帝国にいた時は、占星術師だったらしいが、僕が特別に、手紙をララちゃんのもとに届けてあげる!!」

「あなたはクラリスと呼んで」と、フラウが言った。

「クラリスのことをララと呼んでいい人は、僕だけなんだ」

「うん、分かった」

「ありがとうございます、ジェハ神。なら、僕、手紙を書きます」

「あっ・・・それより、フラウ君、3人に変化が起きてるよ!!君も見た方がいい」と、ジェハ神。


               *


「よかったら、僕らにあなたの過去について、話してくれませんか?」というシャトルの言葉に、クラリスは頷き、前世について話していたところだった。

 話し終え、3人はシーンとなった。

「そうか、旦那さんがいたんだな」と、ケヴィン。

「戦争でお亡くなりに・・・そういえば、その戦争、まだ続いているそうですよ。嫌な話だ」と、シャトル。

「こっちのリラまでは、来てないがな」と、ケヴィン。

「あのね、クラリスさん・・・いや、クラリス」と、シャトルが優しく言った。

「僕ら森のユニコーンの仕事はね。簡単に言うと、人間の夢を管理し、その人間を正しい道に導くことなんです。なぜかっていえば、僕らユニコーンは、“魂の導き手”だから。人間を守る存在なんです。あなたは、海のユニコーンにも、炎のユニコーンにも、空のユニコーンにも選ばれなかった、縁あって、僕らと同じ、森のユニコーンに選ばれた。あなたは、呪文なしにユニコーンに変身できる。これから100年、仕事をしますが、かといって、そこまでつらい仕事というわけでもない。このコロニーの近くには、ため池のような小さな湖が点在しているのに気が付きました?それが仕事場です。その湖の水面に映る人間一人一人の人生、夢に干渉し、その人が夜見る夢をコントロールして、いい方向へ導くのが僕らの仕事です。実は、人間が見る夢・・・悪夢、いい夢・・・いろいろありますが・・・それらは、すべて俺ら、ユニコーンの手によるものなんです」と、シャトルが説明する。

「知らなかった」と、クラリス。

「ええ、あなたは知らないでしょう」と、シャトル。

「でも、これが世界アラシュアの真実なんです。人間一人一人の魂の行く末を見守る・・・それが俺らの仕事」

「最初は俺がやって見せます」と、ケヴィン。

「ほら、水面にうつる俺は、人間の姿じゃなく、ユニコーンの姿でしょう?ユニコ―ンは、鏡や水面にうつる姿まではごまかせないんですよ」と、ケヴィンが言った。

「本当だわ」と、クラリス。自身で水面をよーく覗いてみたところ、クラリスの顔ではなく、真っ白いユニコ―ンの姿がうつっていた。

「仕事は一週間後から。それまで、時間はあります。ユニコーンの魔法を使うんです」と、シャトルが言った。

「ユニコーンにも魔法が使えるの??」

「ええ、ユニコーンにはユニコーンの魔法があります」と、シャトル。

「でも、それはまだ覚えなくていいんです。これからで」と、シャトルが言って、石ころを水面になげた。

「・・・それより、その夫さんから、手紙、来なかったんですね。それがつらかったって、おっしゃってましたけど」と、シャトル。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る