第5話 会話
老人の誤解を解くために話しかける。
「あなたの命を私が奪うことはないですよ?」
老人は目を丸くして、少しの沈黙ののちに言葉を発する。
「…喋るのか?おもしろいこともあるものだ。フォッフォッ」
すぐに先程までの愉快な調子を取り戻す。
「おぬしは一体何者なんじゃ?」
俺は老人に先程までのことを全て話した。転生してこちらにきたことや、蜘蛛に襲われかけた話、魔法を打ちたいと言った話。初対面でこんなことを話すのはどうなのかと自分でも感じるが、それでも言葉を止めることができなかった。老人が全てを聞いてくれることに安心し、口から溢れるように次から次へと言葉を紡ぐ。
「ほうほう、人間からゴーストに?前世の記憶がある?長いこと生きてきたが初めて耳にすることばかりじゃのう…」話を聞き終えた老人は、蓄えた髭を手で触りながら何かを考えるようにしている。
「まあ、そうか。なら納得したわい。こんなチグハグな存在初めて見たからな」
「俺がチグハグ…?」なんのことか分からず聞き返す。
「そうじゃそれほどまでに強力な存在感を放っておるのに、辛そうに今までのことを語りよる。お前さんほどの強さなら普通もっと尊大に傲慢に振る舞っていてもおかしくないんじゃよ。自分のことを理解もしていないやつをを死神と感じるなんてわしも耄碌したな。フォッフォッ」
言葉に詰まる。今まで戦ったこともないってのに…俺がつよい…?心当たりがない言葉を受け止めきれない。
「それにしても、そんな力を持った、お前さんが戦わなくても住む世界か。きっと争いのない、いい世界なんじゃろうな…」
どこか遠くを見つめながら聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう呟く。
「ん?何か言いました?」
「フォッフォッ何もいっとらんよ。そういえば、名はなんというんじゃ?」思い出したかのように老人が語りかける。
「すみません。名前...思い出せないんです...」記憶のあったはずの引き出しを開けてみても何も見つからず、気分が沈む。
「なら一旦はゴース、とでも呼ぶか。早いうちに名前を考えておいてくれ、ゴースで定着してしまうまえにな。わしはロスだ。好きによんでくれ。フォッフォッ」
「さて、おぬしはこれからなにかすることは決まっておるんか?」
「なにも決まってないです。」この先のことなど何も決まっていない。明日の予定もままならぬまま。できることならばもう少しここにいさせてほしい。そう願うほどに寂しさを感じていた。
「ならちょうど良い、わしがお前が自分自身の力を自覚できる程度には鍛えてやろう。」
「え。いいんですか!?」思ってもみない申し出に思わず声色が明るくなる。
「わしも一人で過ごすのに飽きておったんじゃよ。こんな場所では人もほとんどこないしのう。フォッフォッ」
ロス師匠との修行の生活が始まった。
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こんばんは(・・)
無事、新しいキャラ登場させられました。意外と思い通りに話を動かせないことがあり難しいですね。頑張っていきたいと思います。
老人視点を投稿したいので、少し早めの本編更新にしました。
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