第3話
SE///雨の降る音
「しかし雨はずっと止みませんね」
ドーナツを食べ終えてしばらくコンビニでお喋りに興じていると彼女は、ふと空を見上げて呟きます。そのどこか憂いのある声に貴方の心はドキリとさせられます。
「まぁ、天気予報通りなんですけどねぇ、こんな朝から降りますよとお膳立てされて手ぶらなわたしは何なんでしょうね。アハハ」
だが、すぐにノホホンとした声に戻る。
「さ、ワルの買い食いタイムも終わりましたし、そろそろ行きましょうか」
彼女がパチンと柏を叩く。SE///手を叩く音
貴方はそうだねと言って傘をさします。SE///傘をさす音
先に前に出てから彼女の方へと傘を差し出します。
「ありがとうございます。ではでは、帰りましょう」
彼女が前に出ると
「何だか、雨は不思議」
しばらく歩くと彼女がそっと独り言のように呟く。
「降られると憂鬱な事が多いのに、たまに嬉しい事も起こしてくれる」
貴方が「嬉しい事とは?」と聞くと彼女は驚きに顔をあげます。
「こ、心の声は聴くものじゃないんですけどっ」
いや、声に出てたよと言うと照れと慌てが混ぜくりあったような呻きを漏らし、大きな声をあげる。
「嬉しい事とは、お花やお野菜に恵みを与えてくれる事ですよねっ。ほら、ありがとうございますて、雨にお礼をいいましょう、はい、ありがとうございますっ」
何を慌てているのかは分かりませんが、勢いよく雨に向かって頭を下げる彼女が濡れないように傘の位置を調整しながら貴方もありがとうと雨に伝えます。貴方にとっては別の意味合いも込めたありがとうです。
「あの、雨に濡れちゃいそうなので、もうちょっとそっちに寄ってもいいですかね?」
彼女が頭をあげると、少し遠慮がちな声で伝えてきます。貴方が「いいよ」と言うと彼女は「わ、それでは失礼して」とそっと寄ってきます。
「意外とドキドキとしているんでしょうか?」
肌と肌が重なる距離感で囁くようにこぼす彼女の言葉にどんな意味があるのかと考える間もなく、貴方の心臓は静かに跳ね上がります。
「わたしは、実はドキドキしていますよ。男子と相合傘で帰るてそれだけでドキドキなんですけどねぇ、特にそれが貴方なら数倍にドキドキなんですよ」
彼女の「ドキドキ」の意味を知りたくて貴方はそっと盗み見るように彼女を横目で見ると彼女の顔は貴方を見つめており、辺りを見回し誰もいないのを確認とすると、静かに深呼吸をして、貴方にそっと囁きます。
「あの、傘を忘れたって言うのが嘘だって言ったら、君は怒りますか?」
SE///雨の降る音
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