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「かに座は最下位なんだ……」

「あ、そう」


 占いとか律儀に見ているのか。

 あれは女性向けの内容ではあるから私達の性別的には合っているけど内容が微妙だ。


「でも、親しい人と一緒に過ごせばいい的なことも書いてあったから千夏さんといるよ」

「いや、あんたはそんなのがなくても一緒にいるじゃない」

「いまそういう正論はいらないよ……」


 あらら、今日は本当にテンションが低いらしい。

 いつもだったら「確かに!」とか言って笑っているところだ。


「千夏ー」

「お、来たわね」


 尚代単体か、結愛がいるときよりもやりやすいから更に助かる。


「ん? 私になにかしてほしいこととかあったの?」

「薫の元気がないからあんたが相手をしてちょうだい」

「任せて」


 緩くお喋りを繰り返して午前中が終わるとなったところで結愛がやって来た。

 私の腕を掴んであの二人から離れようとする彼女、誤解されているようだから付き合っていることを小さな背中にぶつけるとやっと足を止めてくれた。


「千夏さんから教えてもらいたかった」

「ということは薫から聞いたってことよね?」

「うん、だけど私もお友達なんだから教えてもらいたかった」

「それはごめん」


 ただ尚代にだって薫が教えただけだからそもそも私の中に誰かに言うという考え自体がなかったことになる。

 でも、言うだけでこんなに暗い顔をされなくて済むならこれからはちゃんと言おうと決めた。

 なんか心配になるのだ、余計なお世話だとわかっていてもそうなる。


「あと、お昼休みは私が千夏さんを独占する」

「ど、どうしたの?」


 そんな薫ではないのだから。

 しかも尚代大好き人間がこうなるということは上手くいっていないのかもしれない。


「……尚代ちゃんとなんにも進んでいなくて焦っているんだ」

「そうなのね。それは……どうしたらいいのかしらね」


 自惚れでもなんでもなくあの子は私が好きで多分まだ上手く片付けられていないと思う。

 で、その相手にそんなことをぶつけたところでこういう答えしか返ってこないだろう。

 逆にここでペラペラアドバイスをするような人間だったら引く。


「もう千夏は薫の彼女になって可能性はゼロになったから不安にならなくて大丈夫だよ」


 この子もこの子で曖昧な状態のまま簡単に抱きしめたりするから余計に結愛が苦しむことになるのだ。


「ということはこれまで完全に諦めてきれていなかったということだよね?」

「まあ……だって好きな存在が普通に相手をしてくれるし……」

「ごめん、だけどこれからは大丈夫そうだからあんまり不安にならないようにするよ」

「こっちもごめん、もう中途半端にはやらないよ」

「大好き」


 こ、これをこの前の私達は二人きりとはいえやっていたのか。

 もう誰かがいるところでできるだけしっかり仲を深められているのでは? という気持ちになるけどこの距離感だからこその悩みがあるのだろうと片付ける。

 雰囲気が甘々になってきたから挨拶をして離れた、すぐのところで捕まったけど。


「僕も千夏さんが大好き」

「もう元気になった?」

「うん、ちゃんと切り替えられたよ」

「ならよかった、あんたはにこにこ笑っているのがお似合いなんだからね」


 お? なんか気持ちのいい類のものではなくなってしまった。


「好き?」

「まあ……」

「えへへ、やった」


 何故彼女から攻撃をされなければならないのか。

 しかも廊下でこんなことをしていたら本当にバカップルなどと言われてしまう。

 結愛と尚代の件もこれで進むだろうから教室から出ないようにすればなんとかなるだろうか……って、そうしたら教室でも一切関係なく自由にされてクラスメイトからからかわれるなんてことも……。


「ないか」


 もう本当に意識を向けられていないからそれだけはありえないと断言することができる。

 違うクラスにしか友達がいない私を舐めんなと変な強がり方もしてしまうほどだ。

 だからしっかりと意識を切り替えた私は最強だった。


「カップ麺かパンかお弁当か……悩むわね」


 最強の私でもまだまだご飯作りに関してはアレなのと両親が遅いのに頑張るのも違うからスーパーに来ていた。

 値段的にはカップ麺とパンがいい、だけど量を考えればお弁当の方がいい。

 自分のお金だから豪遊しようと言葉で刺されることもないから全部乗せなんかもできてしまう……。


「あれ、千夏さんだ」

「こんなこともあるのね、あんたはお使い?」

「うん、醤油と味醂を買ってこいって言われて出てきたんだ」


 実際のその二つが同タイミングで無くなることなんてあるのだろうか、それとも外に出るならついでに買ってきてぐらいの内容なのだろうか。


「あれ、お弁当を買おうとしているの? それだったら家に来なよ、僕が作ってあげるよ?」

「流石に何回もお世話になるのはちょっと――引っ張らないで」

「これお会計を済ませてくるから終わったらいこう!」


 じゃあこっちもなにかデザートとかそういうのを買って帰ればいいか。

 約束通りではないけどお邪魔させてもらって手料理というやつを食べさせてもらった。

 私よりもそこらへんのことがしっかりしているから安定して美味しかった、ただ気になるからデザートとかそういうのを食べて誤魔化せることがよかった。


「お母さん達の帰りが遅くてよかったよ、そうじゃないと千夏さんは家に来てくれてはいなかっただろうからね」

「別にいたらいたでいつもお世話になっていることを話したかったからよかったんだけどね」

「え、それなら僕が千夏さんのお母さんにお礼を言わなきゃ」

「私達の方にはいらないわよ」


 母のことだからそんなことをされたら何回も「いつも一緒にいてくれてありがとう、千夏は~」と盛り上がりそうだから避けたい。


「それにお世話になっているのは私だから」

「そ、そう?」

「そうよ。だから……まあいつもありがと」

「きゃわいい!」

「はは、はいはい」


 これからもずっとそうやって楽しそうにしていてほしい。

 私にできることならできる範囲でやるから、まあそうすればこの私を好きになってくれているわけだから一日ずつ恋人でいられる時間を増やしていけるのではないだろうか。

 

「いまは二人きりだからさ、アレ、しようよ」

「欲情すんな、それに前みたいにお母さんが帰ってきたらどうするの」

「そうしたら堂々としていようよ、なにも恥ずかしいことじゃないよ」

「嫌、やるにしても絶対に帰ってこない時間で二人きりのときね」

「はは、はーい」


 ほ、なんとか避けられた。

 でも、ずっと避け続けていたら駄目になるからまあたまには頑張ろうと決めて切り替えたのだった。

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184 Nora_ @rianora_

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