蛹化後の蝉

べてぃ

第1話

 死への羽ばたき、という言葉がある。説明すら憚られる、悲劇的な飛翔だ。「可哀想だ」……ずっと、そう思ってきた。けれど、今にして思うと、自らの姿態を知らぬまま、羽化してすぐに死んだことは、まだ救いがあったと見るべきかもしれない。そしてそれは、恐らくはたった一人もしくは少数の個体しか周りにおらず、ミラーリングができなかったからこそ、成しえたものだろう。


 二百二十一年ぷりにセミが大量発生しニュースを賑わせていたその夏の終わり、私はそんなことを思っていた。

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