第7話 風の神からの歓迎
ジャム王国
風によって成り立つ小さな王国
王国と言っても、城はない。この国は、風の神が統治している為、神をたたえる風車が城代わり
「わぁ、いっぱいのグルグル!」
セラは初めて見る風車に目を輝かせていた。
「あれは風車。あれを風の力で回して電気を生み出しているんだ。」
「焔お姉ちゃん。なんであんなに何いっぱいあるの?」
「あの風車一つ一つが家だからだよ。家じゃない風車もいっぱいあるけどね。」
二人はジャム王国の中で一際大きい風車についた。
「ここは?」
「ジャム王国を収める王様が住んでる風車。セレナから依頼を受けたことを伝えないと。」
その風車は、塔の形をしており中に入ることができる。中はまるで協会のようになっていた。
「こんにちわ。エンスタ王国からの使者です。」
焔は、中に入るとそう一言言った。すると、置くから女性の神官が慌てた様子で走ってきた。
「お、お、お待たせしました!よ、ようこそじゃ、ジャム王国へ。」
緑の髪に眼鏡をかけた女性。年齢は12歳ぐらいの女の子だった。
「私、このジャム風車の神官でフウといいます。」
「私は焔。エンスタ王国セレナ女王から魔獣討伐を依頼されてきた。」
「せ、セレナ女王じ、じきじきの依頼ですか!・・・すごい」
「ここの王様に合わせてもらえる?」
「は、はい!失礼しました。こちらへどうぞってわぁ!」
私の目の前でフウという女性が派手に転んだ。
確かジャム王国の神官はもっと落ち着いた方って聞いてたけど
「大丈夫ですか?」
セラがいち早くフウに駆け寄って手を貸した。
「あなた、大丈夫?落ち着いて」
「すみません。私ドジばっかりで。こちらです。」
フウは立ち上がって、ワタワタしながらも奥に案内してくれた。
案内された場所にあったのは製造を置く用の台座があったが、教会にあるような髪を模したものはなかった。
「フウリン様。エンスタ王国からの使者です。」
フウが台座に呼びかけると強風が吹き荒れた。
私はセラの方に手を回してセラが飛んでいかないようにした。
台座の上に小さな竜巻が形成され始め、だんだん鮮やかな黄緑色になって人の形になっていく。
やがて風はヒト型になっていく。そして美しい女性になった。
「私こそジャム王国を収める王であり神。字(あざな)をフウリン。」
「神様?」
セラがつぶやいた。
フウリンは微笑んで答えた。
「いかにも。この国は神である私が王として納めている。」
焔が一歩前に出る。
「お久しぶりです。改めて、エンスタ王国元蝶の盾・宮本焔。こちらは私の仲間のセラと言います。」
「セラです。よろしくお願いします。」
私は膝をつき、セラは深々とお辞儀した。
「焔殿、よく来たな。セレナ女王から風の知らせをもらっておる。迅速な対応に患者する。以前あった時よりも成長しているようだ。時の流れとはなんとも早い。」
「覚えいてくださっているのですね。ありがとうございます。早速ですが、魔獣について教えてくださいますか?」
「うむ。2週間ほど前から、熊と狼の魔獣がここに攻め込んでくるようになってな。始めはクマやオオカミが人里に降りてきただけかと思ったが、徐々に数は多くなっている。さらに、統率が取れている。」
「魔獣が統率を取る?そんな馬鹿な。魔獣に理性など残っていないはず。」
「始めは我が風の軍隊で対処できていたのだが、だんだん押されてきてな。」
焔たちの会話を聞いていたセラが、フウに尋ねる。
「あの、風の軍隊って何ですか?」
「風の軍隊は、フウリン様が管理をしている軍隊のことです。風のマキアシリーズというフウリン様の力を宿した武器を授かっている戦士の方々が小隊長を務めていているんです。」
フウリンがフウの方を向き、穏やかに声をかける。
「フウも風のマキアシリーズを継承したのだから、胸を張りなさい。」
「は、はい」
フウは焦って下を向き、恐縮してしまった。
「具体的な数は?」
「魔獣が3体。その3体がクマやオオカミの猛獣の統率を取っているようだ。猛獣は30体確認されている。ジャム王国は傍から見れば田舎の農村と変わらんから30体も猛獣がいればすぐに壊滅してしまう。」
「承知しました。」
突如、甲高い鐘の音が鳴り響く。
「魔獣どもが責めてきたようじゃ。焔殿、来てもらって早々すまないが、対処を頼めるか。風の軍隊には話を通してある。」
「お任せください。フウさん、セラをよろしくお願いします。」
焔は荷物を置いて、エンジン剣だけをもって、ものすごいスピードで風車の塔から飛び出した。
「いってらっしゃーい!」
セラはその背中に精一杯の声で声援を送った。
焔は風車を飛び出すと、多くの兵士を引き連れた緑色の鎧を着た騎士が森の入り口で手を振っているのが見えた。
焔は走ってその剣士のもとに合流した。
「あなたが、蝶の盾の宮本焔さんですね。」
「元ね、よろしく。」
「私は風の軍隊・騎士隊長の一人イフウです。話はフウリン様から聞いております。よろしくお願いします。」
「軍隊の動きは?」
「他の分隊が森から王国までのルートを防ぎ。獣たちが下りてくるルートを一つに絞っています。我々は、その一本道からくる獣たちに正面衝突を仕掛ける作戦です。しかし、宮本さんは自由に動いてもらって結構です。」
「私が邪魔になる可能性は?」
「あなたは蝶の盾です。ならば軍の動き方は分かっているでしょう。ご自身の判断で動けるはずです。逆に我々もいつものメンバーでいつも通りの連携ができるので、宮本さんがどのように動かれても邪魔だとは思いません。」
随分はっきりと答えるのね。しかし、見たところ統率力もしっかりしてるし、他の兵士からの信頼も厚いようだ。それに彼はかっぜの力を纏った剣、シリーズ武器を持っている。
それなら信頼もできるだろう。
「分かった。」
「じゃあ、行きますよ。全軍!突撃!」
しばらく森を走り抜けると10体ほどの獣たちが突撃してくるのが見えた。
「私が先行する!」
焔は駆け出し、エンジン剣を抜く。グリップをひねるとエンジン剣から声が響く
「フェーズ1」
刀身からメラメラと炎が出現する。
「炎舞」
焔は口を開いてきた自分より3倍ほどの大きさがある獣に真正面から一太刀加える。
加えた瞬間、エンジン剣を振った力の方向に体をひねり近くにいた2頭にも同じよう一太刀ずつ加える。
斬られた獣は真っ二つに割れ、断面は熱でドロドロになっていた。
「まるで踊っているようだ。」
獣たちは足を止めない。焔のもとにまた数頭の獣が襲い掛かる。
今度は炎が消えたフェーズ0のエンジン剣を横向きにふるう。
「炎粉・振り払い」
エンジン剣の先が獣達の顔を傷つけた。獣たちは傷口のあまりの熱さと焔の勢いに押され、瞬時に後ろに戻り、動きを止めた。
横切りでエンジン剣が通った空間が発火し、一瞬ではあるが火の壁ができた。
火を恐れた獣たちは動きを止めた。しかしこれが間違いだった。
動きを止めたため、すべての獣たちが前線にぎちぎちに集まってしまった。
一瞬できた火の壁から風の軍隊が飛び出してきた。
「つむじ風!」
イフウが風の力を纏った剣で獣を切る。
剣は鋭い風を纏っており、傷口をえぐっていく。
兵士たちも見事な連携で剣を振るい、次々と獣を倒していく。
傷ついたもののまわりには壁となり、前に行ける者は次々と前に行く
戦場となっている道左右からは、他の分隊たちからの援護射撃が飛んできた。
その矢の飛び方を見て焔はあることに気づいた。
(矢が風に乗っている。これは矢を操っているのか。つまり、風のマキアシリーズの弓をもっているものがいるのか)
ものの10分で獣たちは全滅した。しかしそこに魔獣の姿はなかった。
イフウは叫ぶ
「けがをしている者は王国に先に戻れ!魔獣が到着する前にだ!」
焔は尋ねる。
「魔獣はどんな奴らなの?」
「オオカミ1頭とクマと2頭の魔獣だ。オオカミの方はなぜか風の力を纏っている。」
「風の力?」
「しかも連携がすごい。素早さで逃げ道が無くなるまで追い詰められ、力で叩き潰される。明らかに意思疎通をしてる。」
「理性がない魔獣がそんなことするなんて、明らかに・・・」
「イフウ隊長!魔獣の姿を確認しました!」
先ほどのオオカミの5倍ほどに巨大化した魔獣がとんでもない速さでビュンビュンとかけてくるのが見えた。
「あのスピードにぶつかったらたまったもんじゃない!「退避退避!
兵士たちは一斉に後ろに下がろうとする。
「待つんだ。それこそ魔獣の思うつぼだ!盾を展開して衝撃に備えるんだ!」
先ほどまで少し混乱していた兵士たちはパニックが嘘のように迅速に連携を組んで一つの守りの態勢に入った。
しかし、オオカミの魔獣が隊の目の前で止まると、道の左右から隠れていた熊の魔獣が表れて、風の軍隊のほとんどを吹き飛ばした。
一番前で守っており、一番衝撃を受けたはずのイフウが、先ほどの攻撃が嘘かのように立ち上がり、声を張り上げる。
「みんな大丈夫か?!」
その時イフウは見た。焔が風の軍隊を一瞬で吹き飛ばした3頭の魔獣と対峙していた。
焔は木に飛び移り、魔獣の死角にいたことで無傷だった。
すべての攻撃をいなし、はらいのけ、前に出てくるものには牽制を送って一定の距離を保っていた。
(力はそのベクトルの方向にいなせばいい、一番危ないのはオオカミの方。)
イフウはそれを見て驚愕するとともに、焔が時間を稼いでいることに気が付いた。
「皆!退避だ!宮本さんが時間を稼いでいる間に早く!」
兵士たちは急いで退避した。
「宮本さん!全員の退避の準備、完了しました!」
焔はイフウの合図を聞くと攻撃の態勢に入った。
「なら手土産の一つでも持って帰るとしよう。」
焔は熊の魔獣が伸ばした手に一太刀加え、腕を斬り取った。
ぼとりと音を立て落ちた腕を見て、魔獣たちは動揺し、パニックに陥り、森の奥へ逃げて行った。
「あの感じだと、自分たちは負けなしだと思っていたようだな。」
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