エピローグ

 Side 北川 舞


 あの戦いから少しの時間が経過した。

 セイクロスト帝国と日本、世界との交流は続いている。


 世界は少しだけ優しくなった気がした。


 セイクロスト帝国と日本が新内閣を制定後、ある条文が緊急で制定された。


 長ったらしく遠回しな言い方だがつまり、魔法の積極的導入は控えると言う内容だ。

 その条文は俗に日本橋条約と呼ばれるようになる。

 大阪日本橋の一連の事件で、核兵器よりも凄まじいコントロール不可能でとんでもない奇跡を目の当たりにしたせいだろう。

 少なくとも日本の政治、官僚達はそれを正しく扱える自信などなかった。だから制定した。

 

 次にEー00ファイルについてだが、前以てどう言うファイルか知らされてはいたが、やはり多大な混乱を避けられず、次の政権はこのEー00ファイルとどう向き合うかが焦点になりそうだ。


 ブラッドスペクターの纏め役であり、Eー00ファイルや異世界の力で国家転覆を謀ったベルゼは他のブラッドスペクターの面々、もちろん闇乃 影司のクローンと共に国連の身柄預かりとなった。


ベルゼ、クローン影司ともに日本橋で起きた奇跡に一定の理解を示しつつも「人が人である限り、また自分達の様な存在に憧れ、求められる」と言い、「敗者は敗者として大人しくする」とも言い残ししていた。

  

 ブラッドスペクターと共謀し、Eー00ファイルを利用し、暗躍した堺知事、黒ヶ崎社長は逮捕された。

 配下や汚職に手を染めていたヒーローもほぼほぼ逮捕された。

 ベルゼの敗北を知り、Eー00ファイルも通用しなくなり、今迄しでかして来た事を考えると刑務所に居た方が安全だろう。


 堺知事と黒ヶ崎社長の下で暗躍した明智 誠二は逮捕された。

 相棒の刑事殺し、その他諸々の容疑でだ。

 

 青峰 せいなも自首と言う形でお縄につく事が決定した。

 事件解決、全容解明に積極的であり、刑事態は軽くなる見込みだがそれですっかり改心した本人が納得するかは疑問だ。


 赤城 レツヤは大人しい。

 何もかも全てを喋っている。 

 正義感とか改心したとかではない。複雑な気持ちなのだろう。

 素直になれないとも言える。 


 そして赤城 レツヤが変身したレッドセイバー、ナンバーワンヒーローの地位は良くも悪くもネット界隈で末永く語られることになる。

 国民の愚かさ、無責任さが招いた存在として。

 あの大阪日本橋の奇跡の影響か、やはり人々は少し優しくなっている。


 レイガンスリンガー、辻沢 風花は事件後に自身の無実、ロボルガーXの無実が晴れて早々に荻田 誠史と一緒に故郷へと凱旋した。

 やはりと言うか事件の中枢に深く関わっていたせいか人気は急上昇。

 とうの本人は「私の手柄じゃない」、「実力で勝ち取った物じゃない」と不満そうだった。


 大阪日本橋の面々は相変わらず。

 藤崎 シノブと谷村 亮太郎は探偵業。

 闇乃 影司は何でも屋。

 羽崎 トウマも日本橋に顔を出す。

 この4名は事件の中枢奥深くに関わった人間として知名度が急上昇し、その対応で暫くは身動きが出来なかった。

 落ち着いた現在も、写真撮影やサインを強請られる程だ。


 建造物も棚ぼたで修繕されたりもラッキーな事もあったが、ベルゼの襲撃で犠牲となったヒーローはどうにもならず、葬式は慎んで行われた。

 

 その後は世界中から人々が。

 日本国内からも日本橋へと足を運んできている。

 いわゆる日本橋ブーム。

 世界全体ではヒーローブームが捲き起きていた。

 グッズの買占め、転売などの弊害が起きているが、まあ何時もの世の中と言う奴なのだろう。



 Side 辻沢 風花 


 事件解決後、関東に戻った辻沢 風花はとりあえず火弾 竜吾に対して恩着せがましい言葉責めをしておいた。

 だが火弾 竜吾は軽薄な態度で「へーそれは凄い」みたいな態度をとるもんだから流石に頭にきて怒鳴り散らして立ち去る風花。

 失礼な気もするが、何時も通りの火弾 竜吾だったのでオールOKとした。 

 

 知り合いの変身ヒロインからは「心配した」、「どうして頼ってくれなかったの?」とメール爆撃を受けたが、強気なヒロインとして対応してお茶会開いて事件の事を語る事にした。


 また、事件解決に導き、事件の中枢部にまで辿り着いていたヒロインとして注目されるのは正直悪い気はしなかったが、自分の実力や手柄ではなかったので居心地悪い気分だった。


 だが人の噂も何とやら。

 時間経過と共に落ち着いていき、ケロッと忘れる。

 それもまた人々が持つ力なのだろうと風花は思う。

 

 =昼・都内の繁華街=


「で? どうしてアナタがここにいるんですか!?」


 藤崎 シノブを叱り飛ばす辻沢 風花。

 他にも谷村 亮太郎の姿もあった。

 ヴィラン出現の報告があって鎮圧に乗り出した辻沢 風花だが、現場に駆け付けるとそこにいたんは藤崎 シノブと谷村 亮太郎だった。


「いやまあ、日帰りするつもりだし?」


「関東から関西まで日帰りって――」


 などと風花は呆れる。

 風花は知る由もないがこの二人、以前の事件――ライブラの大規模ドローンテロを止めるために、大阪日本橋から秋葉原の事務所間を転移移動したことがある。

 その時の移動経路を使用して二人は来訪したのだ。

 そんな裏側を知る由もない風花はハァとため息をつく。


「ああ、そうそう。近々皆も関東に遠征に来るつもりなんでそのつもりで。ロクにパーティーも出来なかったからどうとかで」


「また律儀ですね」


 本音を言うと嬉しかった。

 ロクに別れを告げず、クールなヒーロームーブを決めてちょっぴり寂しかったのもある。

 

「まあ、折角ですし参加する事にしましょう――と、またヴィランの出現警報ですね。折角ですからお供しなさい」


「はーい」


「学生のクラブ気分ですね」


 などと苦笑する。

 何だかこの腐れ縁、まだまだ続きそうだなと風花は思うのであった。

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