あなたは、ここに、いますか?

鏡を見て、髪や容姿を確認する。

当たり前のことですが、見えない所が見るから確認しやすい。

そんな鏡の話です。


これは、個人的なルーティンだが、会社に出勤したら、

最初にトイレに向かう。

理由は、髪と服装の乱れがないか、確認するためだ。

接客業なので、対面した人がみっともない恰好だと最初の印象が

悪いからだ。

確認が終わったら、職場の人に挨拶をする。

ただ、この会社のトイレは、手違いで、前と後ろに鏡がある。

後ろの鏡には、布が掛かっているので問題ない。

もしも無かったら、合わせ鏡になって、永遠に続く姿が写る。

それだと目が疲れるし、確認がやりにくい。

早く外すとか改善してくれないかな・・・


そんなある日のことだ。

お客様が、トイレに行きたいと言われたので、案内だけして、

窓口で待ってる時だった。

トイレから戻ったお客様は、先ほどとは、違って、生気を感じない・・・

と言うか、別人と対面してる気分だ。

ただ、話していた内容も覚えてるし、意識もはっきりしてる。

まぁ、問題なく仕事出来るならいいかと思った。


それから数日後、ミスをして、上司から怒れた。

自分のミスだから仕方ない・・・ただ、関係ない内容も言ってくる。

暫く説教ではない話をしていた上司が席を立って、「待ってろ」と言って、

トイレに向かった。

はぁ、早く帰って来ないかな・・・と思っていると上司は、帰ってきた。

すると先日あったお客様みたいになっていた。

そして、「次から気よ付けろ」とだけ言って終わった。

なんだ?まだ言いそう雰囲気だったのに。

まぁ、終わったならいいか。


ミスをした日から数日後の昼休みにトイレに向かって、

手を洗っていると何かを叩く音が聞こえた。

音の方向は、後ろからだ。

でも、後ろには、鏡しかない。

ただの聞き間違いかな?

そう思って、トイレから退出した。

ただ、この日から、何度も叩く音が聞こえるようになった。


数日後の朝にトイレで容姿の確認してるとまた音が聞こえた。

流石に気になって、後ろを凝視するが、何もない。

暫く見てると、何かが、落ちた。

見ると小粒のガラスだった。

上は、布が掛かった鏡しかない。

どこか欠けたかな?と思って、布を少し上げると何かを割る勢いの

音が目の前から聞こえた。

気になって、布を一気に上げると・・・

鏡には、自分の左右に上司とお客様が写っていた!

2人は、鏡を叩いている!

これだけでも変なのに、合わせ鏡に自分しか写ってない。

なんだ・・・これ・・・

思考が停止する・・・

合わせ鏡を見てると手前以外の自分が腕を伸ばして掴んでくる!

そして、ガッチリと掴んで、動けない!

自分以外の自分が、鏡の中に入れようと引っ張る!

逃げようとするが、動けない!

鏡の中に入ると上司が

「お前も叩け!それしかない!」

「そうだ!あんたも叩いて助けを呼べよ!」

とお客様も言う。

言われた通り叩こうとしたら、対面には、生気のない自分がいた。

そして、対面の自分が見たことがない笑顔を見せて、トイレから、

出ていく!

最後は、布が降りて、暗闇が始まった。


これで、話は終わりです。

最後に質問をします。

あなたが、知ってる人物や自分は、そこにいますか?

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単発で書いてます   春桜 @haruzakura0701

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